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他様生
5.愛されるために
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今日も仮面を被って、鍛えて作った凹凸のある体を活かした装いで、誰かを一時の夢へ誘う。両親、恩人が教えてくれた生きる術だった。
薄暗い路地は、石ころや刈られず濡れた草で足元が悪い。すでに呑んでいるらしい男は、正面から歩いてくる女を見た。揺れる胸を、くびれた腹を、むっちりとした尻から伸びるスラリとした足を、見た。女は見られていることに気づかないで、足元の石に爪先がかかり体が前へ揺らぐ。慌てて女を支えた男は、腕に当たる柔らかな肉の感触に息を飲んだ。が、女がそっと離れたことでできた距離に残念と安堵でため息が出る。
「ぁ…ありがとうございます。お礼に、お兄さんがよければ。一杯だけ、付き合ってほしいのだけれど?」
「いえ。怪我がなくてよかったです。では、一杯だけ」
「ありがとうございます」
女はするりと近づき、そっと手を握って、ゆっくりと体を寄せる。もう少しで触れそうで触れない距離で、中身が想像できるのに見えない胸元で男の視界を奪って。耳元で囁く。
「嬉しいです。一人では寂しくて」
男は身動ぐと、喉で嗤う。
「いいよ。どこへ行く?」
「ありがとうございます。あなたの行きたいところがあれば」
女が目覚めたのは、安いホテル。隣には、無防備に眠る男。互いに裸体を晒し、身を寄せ合うように眠っていたようだ。
見慣れた、けれど懐かしい光景に目を閉じる。
起きたらしい男は、女が眠っていると確認すると女の足を開かせた。一方的に挿入し、昨夜の余韻に浸りながら夢中で腰を振る。思いきりナカで射精をして抜いた直後、目を開けた女と挨拶を交わす。そして、女の腰を撫でながら下る手は陰部の蜜壺へと指先をねじこむ。
「ぁああ…っ、これ以上されると…私、またイくぅ…ぁ…っ」
「また?昨夜のことかな?体は、満更でもないようだけど」
女が自ら絶頂へと向かうように腰を振るから、規則的な水音が聞こえる。
「ゆめ、みて…きもちよく、なって…っ」
「相手は?」
「あなた…っ…ぁっ、んんぅっ…うれしぃ…また、愛してくれるのっ」
「今日限りの、愛だけど」
「ぁあああっ…それでも、嬉しい」
女は、微笑む。
男は、嗤う。
身を清めた後に男と別れた女は、公園のベンチに座る。十時の間食は、甘い酒。
近くの草陰では、男女が愛を確かめ合っていた。
「あれでいくらだろう」
細い声は冷たい空気に消えた。
親の言うことは守らなければいけない。
殴られても、怒られても、無視されても。
十八歳の誕生日を迎えた翌日。卒業したばかりの制服を来て部屋にいるよう言われた。そして、部屋に来た両親。お客様らしい男性を私に紹介すると、部屋を出た。
「初めまして。ご両親から、君を抱くよう言われているんだ。お金も用意してある」
男は、私を抱きしめて耳元へ口を寄せた。始めるのかと思い、力を抜くよう息を吐く。
「でも、無理はしたくない。ドアの向こうにご両親がいるかもしれないから。最後まではしないけど、ね」
「わかりました。脱ぎますね」
男は、ベッドの上に寝る私へ甘く優しい愛撫をくれた。奉仕行為が下手でも罵らないで、丁寧に手順や希望を教えてくれた。痛いと言っても怒らないし、むしろ手加減を聞いてくれた。
初めての経験で驚いた。
男の性器を肉眼で見るのは、初めてだった。私が気持ちよくなるたびに、大きく硬くなるのが嬉しかった。
だから、貞操帯は自分から外した。貫かれた痛みごと、思い出になった。
初めてもらった、七万円。
二度目は、五万円。
同じ人と同じ事をしたから、私の処女は二万円になる。買われた相手に寄って値段が変わるらしいけど、私に人を選ぶ時間はなかった。
初めての人は、私を気に入ってくれたらしい。色々とお金をもらいながら教えてもらった。命の恩人は、たった一人だけ一緒にいてくれた人だった。子供が出来たら産ませてくれた。途中で育てられなくなっても、許してくれた。私へ生きる術を教え飽きるまで、優しくしてくれた。
草陰から男女が出て、昼食の相談をしながら公園を去った。
どこか、昔の自分と似ていた。
懐かしい、もう会えない恩人を思い出す。人肌が恋しくなった。
誰か、一緒にご飯を食べてくれる人を探そう。
ふと、足元が暗くなる。
「お姉さん、一人?」
男がいた。少しだけ、恩人に似ている。
明らかに体目的のようで、あっという間に隣へ座られ腰を寄せられる。気づけば誰もいなくなった公園。私の体は淫らな期待で染まる。
「ぁの…離して、ください」
「照れてる?一緒にご飯しよう。ご飯だけ、いいよね?」
足を撫でられ、求められる嬉しさに力が緩む。男の胸に身を傾ければ、顎を掴まれキスされた。完全に発情した体で、男を求めるように体を寄せる。
「ご飯、だけなら…っ」
「よかった。行こうか。オススメの場所を案内するよ」
薄暗い路地は、石ころや刈られず濡れた草で足元が悪い。すでに呑んでいるらしい男は、正面から歩いてくる女を見た。揺れる胸を、くびれた腹を、むっちりとした尻から伸びるスラリとした足を、見た。女は見られていることに気づかないで、足元の石に爪先がかかり体が前へ揺らぐ。慌てて女を支えた男は、腕に当たる柔らかな肉の感触に息を飲んだ。が、女がそっと離れたことでできた距離に残念と安堵でため息が出る。
「ぁ…ありがとうございます。お礼に、お兄さんがよければ。一杯だけ、付き合ってほしいのだけれど?」
「いえ。怪我がなくてよかったです。では、一杯だけ」
「ありがとうございます」
女はするりと近づき、そっと手を握って、ゆっくりと体を寄せる。もう少しで触れそうで触れない距離で、中身が想像できるのに見えない胸元で男の視界を奪って。耳元で囁く。
「嬉しいです。一人では寂しくて」
男は身動ぐと、喉で嗤う。
「いいよ。どこへ行く?」
「ありがとうございます。あなたの行きたいところがあれば」
女が目覚めたのは、安いホテル。隣には、無防備に眠る男。互いに裸体を晒し、身を寄せ合うように眠っていたようだ。
見慣れた、けれど懐かしい光景に目を閉じる。
起きたらしい男は、女が眠っていると確認すると女の足を開かせた。一方的に挿入し、昨夜の余韻に浸りながら夢中で腰を振る。思いきりナカで射精をして抜いた直後、目を開けた女と挨拶を交わす。そして、女の腰を撫でながら下る手は陰部の蜜壺へと指先をねじこむ。
「ぁああ…っ、これ以上されると…私、またイくぅ…ぁ…っ」
「また?昨夜のことかな?体は、満更でもないようだけど」
女が自ら絶頂へと向かうように腰を振るから、規則的な水音が聞こえる。
「ゆめ、みて…きもちよく、なって…っ」
「相手は?」
「あなた…っ…ぁっ、んんぅっ…うれしぃ…また、愛してくれるのっ」
「今日限りの、愛だけど」
「ぁあああっ…それでも、嬉しい」
女は、微笑む。
男は、嗤う。
身を清めた後に男と別れた女は、公園のベンチに座る。十時の間食は、甘い酒。
近くの草陰では、男女が愛を確かめ合っていた。
「あれでいくらだろう」
細い声は冷たい空気に消えた。
親の言うことは守らなければいけない。
殴られても、怒られても、無視されても。
十八歳の誕生日を迎えた翌日。卒業したばかりの制服を来て部屋にいるよう言われた。そして、部屋に来た両親。お客様らしい男性を私に紹介すると、部屋を出た。
「初めまして。ご両親から、君を抱くよう言われているんだ。お金も用意してある」
男は、私を抱きしめて耳元へ口を寄せた。始めるのかと思い、力を抜くよう息を吐く。
「でも、無理はしたくない。ドアの向こうにご両親がいるかもしれないから。最後まではしないけど、ね」
「わかりました。脱ぎますね」
男は、ベッドの上に寝る私へ甘く優しい愛撫をくれた。奉仕行為が下手でも罵らないで、丁寧に手順や希望を教えてくれた。痛いと言っても怒らないし、むしろ手加減を聞いてくれた。
初めての経験で驚いた。
男の性器を肉眼で見るのは、初めてだった。私が気持ちよくなるたびに、大きく硬くなるのが嬉しかった。
だから、貞操帯は自分から外した。貫かれた痛みごと、思い出になった。
初めてもらった、七万円。
二度目は、五万円。
同じ人と同じ事をしたから、私の処女は二万円になる。買われた相手に寄って値段が変わるらしいけど、私に人を選ぶ時間はなかった。
初めての人は、私を気に入ってくれたらしい。色々とお金をもらいながら教えてもらった。命の恩人は、たった一人だけ一緒にいてくれた人だった。子供が出来たら産ませてくれた。途中で育てられなくなっても、許してくれた。私へ生きる術を教え飽きるまで、優しくしてくれた。
草陰から男女が出て、昼食の相談をしながら公園を去った。
どこか、昔の自分と似ていた。
懐かしい、もう会えない恩人を思い出す。人肌が恋しくなった。
誰か、一緒にご飯を食べてくれる人を探そう。
ふと、足元が暗くなる。
「お姉さん、一人?」
男がいた。少しだけ、恩人に似ている。
明らかに体目的のようで、あっという間に隣へ座られ腰を寄せられる。気づけば誰もいなくなった公園。私の体は淫らな期待で染まる。
「ぁの…離して、ください」
「照れてる?一緒にご飯しよう。ご飯だけ、いいよね?」
足を撫でられ、求められる嬉しさに力が緩む。男の胸に身を傾ければ、顎を掴まれキスされた。完全に発情した体で、男を求めるように体を寄せる。
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