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他様生
7.言い訳
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どれだけ頑張っても、結果が出なければ意味がない。
母親の願いを叶えられない。
社会に必要とされない。
安全な家から逃げ出して。
やはり、誰の願いも叶えられない。
もういいと、思った。
頑張りたくない。
母親は、自分の過去を詳しく言わない。けど、私が『自分のようにならないように』と言って頑張っていた。だからか、クラス環境も、勉強も、恵まれていた。だから、それでもできないのは私の頑張りが足りないだけ。
卒業式が終わり、中学生ではなくなった。まだ高校生ではないが、これも大人への一歩になる。
『話がある』と元クラスメイトと約束した廃校舎へ行った。すると、男女数名が、机に座って待っていた。
「話って、なに」
「まあ、良いから座りなよ」
示されたのは机の上。でも、椅子に座った。
「真面目ね。まあ、いいけど。でさ、良いこと教えてあげようと思ってね」
「お前、レイプされてデキたらしいよ」
「私達もでさ。だから、仲間にしてあげる」
逃げようとするけど、数の力は圧倒だった。どこから知ったのか、貞操帯の壊し方も手慣れていた。未成年用にだけある数秒のエラー音は、虚しく響いた。
噂だと、性行為は気持ち良いものらしい。女同士もまた一興、と。だが、実際は特に何も感じなかった。男子の手に余る胸の谷間に埋もれている肉棒は、欲に素直でドロドロと体液を出していた。
終わるまで思い出していたのは、前日の母親。家に来ていた、母親と仲の良いらしい友人の男性。私が自室へ戻ると、母親を襲っていた。これで何度目だろう。扉に鍵はしたが、音だけは聞こえてしまう。怖くて身動きがとれなかった。
まさか自分も、とは思っていなかった。事が終わって来た警察は、ため息をついて元クラスメートを連れて行った。
私は、病院へ連れられ処置をされた。おかげか、幸いにも妊娠は避けられた。
誘われても行かなければいい、と思った。
群れるのは学校の中だけと決めた高校生活。
初めて、『産むだけでお金がもらえる仕組みと孤児院』の存在を知った。産んだ子を育てると、十分な支援金がもらえるから暮らしには困らない。
私は、きっと、母親が無責任に産んだだけのお金と支援金で生きている。今の私にできることは、おそらくない。
高校生活は、無事に終わった。
何度目の出産が近い母親も満足そうに、穏やかに笑っていた。
進路は決まっている。母親は言った。『大学へも行きなさい。少しでもいいから、教養はあなたの生きる武器になるから』と。
でも、失敗した。
選んだサークルが、良くなかった。一年を終えて、節目の懇親会。嫌な重さと寒さで目が覚めると、そこは乱交パーティだった。眠っている女性を相手に、事を始めている見知った人達。私も脱がされかけていた。抵抗しようにも、体が痺れて動かしにくい。
「あれ、もしかして効きにくい子?辛いだろうから、特別に別室でシてあげる」
「結構です。帰ります」
「まあまあ。痛いのは初めだけだから」
無力に抱え上げられて、冷たい床へ降ろされる。服は、部屋の遠くへ投げられた。学校がから支給されていた貞操帯は、簡単に壊された。
むき出しの皮膚に甘い香りの薬をかけられ、トロミのある冷たさが不快でしかなかった。男の腕一本で簡単に封じられる両腕。舐められて、触られて。無意味にでも抗う程にヒリヒリと熱くなって、痺れ感が男へ向けている胸先やお腹にたまって、ジクジク疼く。足元には恥ずかしい水たまりができている。
「ぅうっ…あぁああっ…それ、いやぁあっ」
「イイ感じ。ね、言った通りになった。そろそろ指だと物足りないよね。腰使いも上手になってる。最後まで、嘘はつかないからね」
「ゃ、やめてください…ぁ、いや、嫌です。これ以上はいらなぃいいいっ…ぬいて、ぬぃてぇっ」
「大丈夫。産休でもリモートで授業は受けられるから。出産は忌引扱いになるし。だから、安心して」
お酒も回ってフワフラと、ビリビリ、ジクジク体が上手く動かない。不快な圧迫感も、グジャグジャと聞こえる水音も嫌で、嫌で、どうしようもなくて。
普通の運動部だと思っていたのに。いつからか、数ヶ月が過ぎたときには確実に周囲の空気が変わっていた。同じ頃に入った子の一部は、活動中に何処かへ行って戻らないのが当たり前になった。今思えば、不穏な空気がある時点で離れればよかったのに。
「考え事はしない、で。奥までたっぷり注いであげるからね」
もう、今はできることがない。考えることをやめた。
「ぁあああっ…んぅっ…ぃやあぁあっ…ひゃああんっ」
「あと三回は付き合ってね」
見たくない。感じたくない。だから、意識を閉ざした。
結局、卒業するまで関係は続いた。幸いにも妊娠は避けら続けて、遅れなく卒業式を終わらせた。ただの脅し文句であればいいと『断わったら、バラす』を一度だけ無視したら、友人に知られていた。母親にまで知られるかもしれないのが、怖かった。
晴れて社会人、のはずが。謎の体調不良が続き、休職した後に退社。
大学まで行ったのに、社会で勉強したことが活かしきれないまま数年が過ぎた。改善しようとなんでもしたが、体調は悪化するばかりで体を使うのが難しい。社会人の普通と言われる目標が遠い。母親は毎日疲れて機嫌が悪いのも当たり前。私が立派に生きていれば、こんな苦労をかけていないかもしれなかった。
わかっている。わかっている。
もう、成人しているから、自分のことは自分でなんとかしなければ。
だから、消えることにした。
それだけが解決できる方法だと、思った。
最低限度の荷物で勢いで出たはいいが、これからどこへ行こうか。
貴重な充電で住み込みの仕事を探したが、怪しい案件が多い。保護施設の案内はすぐに見つけたが遠く、手持ちの現金は惜しい。
歩いて、無料で公共の場所を使いながら、歩いて。
気づいたら、知らない場所にいた。久しぶりにベッドで寝ている。視界にあるのは天井と、女性の顔。
「あ、気づいた。倒れていたから驚いて」
中低音の落ち着いた声だった。
「ありがとう、ございます」
「ああ、そのまま寝ていてね。消化に良いものを作っているから」
「すみません。迷惑を」
「気にしないで。お礼は…そうね。まず、元気になって考えよう」
「はい」
ここにいて、いい、らしい。女性が行く先を目で追う。背が高く、メリハリのある体にロングスカートが様になっている後ろ姿は、香りがする方へ消えた。緊張がきれて、意識が落ちた。
親切な女性のおかげで、動ける程度に回復した。食事は用意されていたし、お風呂はさらに気を遣われた『洗われるのは気を使うだろうし、仕事行ってる間にゆっくりしてね』と、楽に過ごせていたと思う。
しだいに優しい気遣いと距離感に寂しさを覚えるようになり、近づきたいと思うことが増えて。
ある晩。なんとなく、お互いが酔った勢いと雰囲気で触れるだけのキスに心が高揚した。止まらなくなって、淫らにも濡れたことがバレてしまうけど。嬉しそうに、見たいと言われた。貞操帯を外せば、その手で慰め方を教えてくれた。初めて、淫行が気持ち良いを知った。驚いた彼女は、性の悦びを伝えたいと言ってくれた。『シたいときは手伝うから、待っていてね』と、待ちたくなるような快楽くれた。
カレンダーをみると、家を出て三週間が過ぎている。彼女に保護される前は、たまに飲んでも無料の水だけでまともな食事をとっていないことを思い出した。
仕事から帰ってきた女性は、玄関で出迎えた私を見て微笑んだ。
「そろそろ動けそう?」
「はい。おかげさまです。ありがとうございます」
「だったら。お礼、してもらおうかな」
「はい。なにか希望はありますか?」
「そうね…セックス。初めて見たときから、ずっとシたかった。いいよね?」
「はい。私でよければ」
「ありがとう。嬉しい。あ、でも。先にご飯食べようか。お腹すいたよね。先に食べて。風呂に入ってくる」
「はい」
駆け足で風呂場へ行った女性は、出てくると今までで一番の笑顔で食事を終わらせた。
服の中は裸体になりベッドで待つよう言われ、緊張していると後ろから抱きしめられた。
「おまたせ。時間が惜しいから…目を閉じて。良いっていうまで、開けないでね」
「はい」
唇同士が合わさって、ゆっくり優しく舌をなぞり吸われる。深いのに繊細なキスは初めてで、気持ちいい。もっと、と強請れば惜しみなく与えてくれる。
「足を広げて、今日はまだ…こんな風にもっと。そう…閉じないようにね」
「はい…ぁ、うぅっ…恥ずかしぃ、です…っ…指、ナカいれたらぁっ…んんっ」
ビシャビシャと音がする。唇は離れないまま指先が肩を、胸を、足を撫でている。次はどこを?いつから服が脱げていたのだろう。お腹の奥から熱が溢れている。
「…んっ。感じてくれているのね。嬉しい。でも…順番にね。ゆっくり頂きます」
両手に胸を包まれた。思っていたよりも大きい。温かい。優しく、激しく、焦らされて。
「痛い?」
耳のふちを舐められながら、甘く低くなった声が脳を揺さぶる。
「ひゃんっ…ぁあんっ…きもち、ぃい…っ」
「これは?ね、柔らかくて美味しそう」
「んぁああっ、おぃしくなぁあんっ…揺らさなぁあっ…つよぃの、くっ、イくっうぅうっ」
「ああ、素敵。イくの、気持ちいいよね。また、イかせてあげるね」
「はあんっ…あぁっ、きもちぃいのっ、イきたいっ、イきたいぃいっ」
するすると手が濡れているであろう陰部に近づく。期待で溢れた水が流れ出る。
「準備ができて偉いご褒美、あげないとね」
「ぁっ、あっ、胸と、きもちいぃっ」
陰核も潰されるように摘まれ、意識が遠のく。
だが、穴の中に入ってきた覚えのある圧迫感に意識が冴える。でも、今までと違う。熱いのに、嫌ではなく。満たされた安心感が温かい。
「な、なぁあっ…あんっ…ふぁっ…ど、してっ…きもち、ぃいの…っ」
「気持ち良いよね。ずっと、ここにいたいよね」
ずるりと抜かれそうになり、追いかける。抜かれる方がいいのに。体が先に追いかけた。
「あっ、だめぇっ…ゃ、ぁあああっ…はぅあああっ」
すると、待っていたように隙間が埋められる。体は求めるように沈んでいく。
「私は、ここにいてもいい?一緒にいてくれるよね?」
奥へ奥へと埋められて、苦しいのに、嬉しくて。
「いいっ、いるっ、いるからぁっ……ぁ、ぅくぁああっ」
「ぁあっ……は、ぁっ…まだ、また、一緒に、イこう、ね?ここは、私たちの場所だからね?」
どうして、私は、普通に生きられないのか。
でも、この人なら。命を救って、優しくしてくれたから。お礼をしないと。
「はぃっ…イきますっ…ここに、いたいです…っ」
毎日、毎晩。当たり前のように交わって、妊娠した。言われたとおりに、中絶を繰り返した。子供に居場所を渡せば、約束が守れない。
でも、何回目だろうか。ふと、産みたくなってしまった。育てられないのに。求められていないのに。
今日も、抱かれる。
感じ慣れた何度目かの妊娠の兆候は、わからないことにした。
目が覚めると、爽やかな空気が流れてきた。ベッドをでようとすれば、引き止めるように繋がれる。ナカで全てが合わさって、一つに戻る。
「ぁあんっ、はぁんっ…ぃつもより、つよぃいいっ」
「今日は、離さない。壊れても、離さないからね」
後日。体に違和感があり病院へ行った。中絶ではなく、初めての流産処置だった。安堵している彼と、少し残念な気分になった私。期待に応えることも願いを叶えることも難しい私。
一緒にはいられないと思った。
やはり、どこへ行っても私に価値なんか無い。
決心がつくまで、時間はかかった。
明日に中絶を待つお腹を庇いながら、仕事へ行く後ろ姿を遠く見えなくなるまで見送った。
ありがとう。
さよなら。
母親の願いを叶えられない。
社会に必要とされない。
安全な家から逃げ出して。
やはり、誰の願いも叶えられない。
もういいと、思った。
頑張りたくない。
母親は、自分の過去を詳しく言わない。けど、私が『自分のようにならないように』と言って頑張っていた。だからか、クラス環境も、勉強も、恵まれていた。だから、それでもできないのは私の頑張りが足りないだけ。
卒業式が終わり、中学生ではなくなった。まだ高校生ではないが、これも大人への一歩になる。
『話がある』と元クラスメイトと約束した廃校舎へ行った。すると、男女数名が、机に座って待っていた。
「話って、なに」
「まあ、良いから座りなよ」
示されたのは机の上。でも、椅子に座った。
「真面目ね。まあ、いいけど。でさ、良いこと教えてあげようと思ってね」
「お前、レイプされてデキたらしいよ」
「私達もでさ。だから、仲間にしてあげる」
逃げようとするけど、数の力は圧倒だった。どこから知ったのか、貞操帯の壊し方も手慣れていた。未成年用にだけある数秒のエラー音は、虚しく響いた。
噂だと、性行為は気持ち良いものらしい。女同士もまた一興、と。だが、実際は特に何も感じなかった。男子の手に余る胸の谷間に埋もれている肉棒は、欲に素直でドロドロと体液を出していた。
終わるまで思い出していたのは、前日の母親。家に来ていた、母親と仲の良いらしい友人の男性。私が自室へ戻ると、母親を襲っていた。これで何度目だろう。扉に鍵はしたが、音だけは聞こえてしまう。怖くて身動きがとれなかった。
まさか自分も、とは思っていなかった。事が終わって来た警察は、ため息をついて元クラスメートを連れて行った。
私は、病院へ連れられ処置をされた。おかげか、幸いにも妊娠は避けられた。
誘われても行かなければいい、と思った。
群れるのは学校の中だけと決めた高校生活。
初めて、『産むだけでお金がもらえる仕組みと孤児院』の存在を知った。産んだ子を育てると、十分な支援金がもらえるから暮らしには困らない。
私は、きっと、母親が無責任に産んだだけのお金と支援金で生きている。今の私にできることは、おそらくない。
高校生活は、無事に終わった。
何度目の出産が近い母親も満足そうに、穏やかに笑っていた。
進路は決まっている。母親は言った。『大学へも行きなさい。少しでもいいから、教養はあなたの生きる武器になるから』と。
でも、失敗した。
選んだサークルが、良くなかった。一年を終えて、節目の懇親会。嫌な重さと寒さで目が覚めると、そこは乱交パーティだった。眠っている女性を相手に、事を始めている見知った人達。私も脱がされかけていた。抵抗しようにも、体が痺れて動かしにくい。
「あれ、もしかして効きにくい子?辛いだろうから、特別に別室でシてあげる」
「結構です。帰ります」
「まあまあ。痛いのは初めだけだから」
無力に抱え上げられて、冷たい床へ降ろされる。服は、部屋の遠くへ投げられた。学校がから支給されていた貞操帯は、簡単に壊された。
むき出しの皮膚に甘い香りの薬をかけられ、トロミのある冷たさが不快でしかなかった。男の腕一本で簡単に封じられる両腕。舐められて、触られて。無意味にでも抗う程にヒリヒリと熱くなって、痺れ感が男へ向けている胸先やお腹にたまって、ジクジク疼く。足元には恥ずかしい水たまりができている。
「ぅうっ…あぁああっ…それ、いやぁあっ」
「イイ感じ。ね、言った通りになった。そろそろ指だと物足りないよね。腰使いも上手になってる。最後まで、嘘はつかないからね」
「ゃ、やめてください…ぁ、いや、嫌です。これ以上はいらなぃいいいっ…ぬいて、ぬぃてぇっ」
「大丈夫。産休でもリモートで授業は受けられるから。出産は忌引扱いになるし。だから、安心して」
お酒も回ってフワフラと、ビリビリ、ジクジク体が上手く動かない。不快な圧迫感も、グジャグジャと聞こえる水音も嫌で、嫌で、どうしようもなくて。
普通の運動部だと思っていたのに。いつからか、数ヶ月が過ぎたときには確実に周囲の空気が変わっていた。同じ頃に入った子の一部は、活動中に何処かへ行って戻らないのが当たり前になった。今思えば、不穏な空気がある時点で離れればよかったのに。
「考え事はしない、で。奥までたっぷり注いであげるからね」
もう、今はできることがない。考えることをやめた。
「ぁあああっ…んぅっ…ぃやあぁあっ…ひゃああんっ」
「あと三回は付き合ってね」
見たくない。感じたくない。だから、意識を閉ざした。
結局、卒業するまで関係は続いた。幸いにも妊娠は避けら続けて、遅れなく卒業式を終わらせた。ただの脅し文句であればいいと『断わったら、バラす』を一度だけ無視したら、友人に知られていた。母親にまで知られるかもしれないのが、怖かった。
晴れて社会人、のはずが。謎の体調不良が続き、休職した後に退社。
大学まで行ったのに、社会で勉強したことが活かしきれないまま数年が過ぎた。改善しようとなんでもしたが、体調は悪化するばかりで体を使うのが難しい。社会人の普通と言われる目標が遠い。母親は毎日疲れて機嫌が悪いのも当たり前。私が立派に生きていれば、こんな苦労をかけていないかもしれなかった。
わかっている。わかっている。
もう、成人しているから、自分のことは自分でなんとかしなければ。
だから、消えることにした。
それだけが解決できる方法だと、思った。
最低限度の荷物で勢いで出たはいいが、これからどこへ行こうか。
貴重な充電で住み込みの仕事を探したが、怪しい案件が多い。保護施設の案内はすぐに見つけたが遠く、手持ちの現金は惜しい。
歩いて、無料で公共の場所を使いながら、歩いて。
気づいたら、知らない場所にいた。久しぶりにベッドで寝ている。視界にあるのは天井と、女性の顔。
「あ、気づいた。倒れていたから驚いて」
中低音の落ち着いた声だった。
「ありがとう、ございます」
「ああ、そのまま寝ていてね。消化に良いものを作っているから」
「すみません。迷惑を」
「気にしないで。お礼は…そうね。まず、元気になって考えよう」
「はい」
ここにいて、いい、らしい。女性が行く先を目で追う。背が高く、メリハリのある体にロングスカートが様になっている後ろ姿は、香りがする方へ消えた。緊張がきれて、意識が落ちた。
親切な女性のおかげで、動ける程度に回復した。食事は用意されていたし、お風呂はさらに気を遣われた『洗われるのは気を使うだろうし、仕事行ってる間にゆっくりしてね』と、楽に過ごせていたと思う。
しだいに優しい気遣いと距離感に寂しさを覚えるようになり、近づきたいと思うことが増えて。
ある晩。なんとなく、お互いが酔った勢いと雰囲気で触れるだけのキスに心が高揚した。止まらなくなって、淫らにも濡れたことがバレてしまうけど。嬉しそうに、見たいと言われた。貞操帯を外せば、その手で慰め方を教えてくれた。初めて、淫行が気持ち良いを知った。驚いた彼女は、性の悦びを伝えたいと言ってくれた。『シたいときは手伝うから、待っていてね』と、待ちたくなるような快楽くれた。
カレンダーをみると、家を出て三週間が過ぎている。彼女に保護される前は、たまに飲んでも無料の水だけでまともな食事をとっていないことを思い出した。
仕事から帰ってきた女性は、玄関で出迎えた私を見て微笑んだ。
「そろそろ動けそう?」
「はい。おかげさまです。ありがとうございます」
「だったら。お礼、してもらおうかな」
「はい。なにか希望はありますか?」
「そうね…セックス。初めて見たときから、ずっとシたかった。いいよね?」
「はい。私でよければ」
「ありがとう。嬉しい。あ、でも。先にご飯食べようか。お腹すいたよね。先に食べて。風呂に入ってくる」
「はい」
駆け足で風呂場へ行った女性は、出てくると今までで一番の笑顔で食事を終わらせた。
服の中は裸体になりベッドで待つよう言われ、緊張していると後ろから抱きしめられた。
「おまたせ。時間が惜しいから…目を閉じて。良いっていうまで、開けないでね」
「はい」
唇同士が合わさって、ゆっくり優しく舌をなぞり吸われる。深いのに繊細なキスは初めてで、気持ちいい。もっと、と強請れば惜しみなく与えてくれる。
「足を広げて、今日はまだ…こんな風にもっと。そう…閉じないようにね」
「はい…ぁ、うぅっ…恥ずかしぃ、です…っ…指、ナカいれたらぁっ…んんっ」
ビシャビシャと音がする。唇は離れないまま指先が肩を、胸を、足を撫でている。次はどこを?いつから服が脱げていたのだろう。お腹の奥から熱が溢れている。
「…んっ。感じてくれているのね。嬉しい。でも…順番にね。ゆっくり頂きます」
両手に胸を包まれた。思っていたよりも大きい。温かい。優しく、激しく、焦らされて。
「痛い?」
耳のふちを舐められながら、甘く低くなった声が脳を揺さぶる。
「ひゃんっ…ぁあんっ…きもち、ぃい…っ」
「これは?ね、柔らかくて美味しそう」
「んぁああっ、おぃしくなぁあんっ…揺らさなぁあっ…つよぃの、くっ、イくっうぅうっ」
「ああ、素敵。イくの、気持ちいいよね。また、イかせてあげるね」
「はあんっ…あぁっ、きもちぃいのっ、イきたいっ、イきたいぃいっ」
するすると手が濡れているであろう陰部に近づく。期待で溢れた水が流れ出る。
「準備ができて偉いご褒美、あげないとね」
「ぁっ、あっ、胸と、きもちいぃっ」
陰核も潰されるように摘まれ、意識が遠のく。
だが、穴の中に入ってきた覚えのある圧迫感に意識が冴える。でも、今までと違う。熱いのに、嫌ではなく。満たされた安心感が温かい。
「な、なぁあっ…あんっ…ふぁっ…ど、してっ…きもち、ぃいの…っ」
「気持ち良いよね。ずっと、ここにいたいよね」
ずるりと抜かれそうになり、追いかける。抜かれる方がいいのに。体が先に追いかけた。
「あっ、だめぇっ…ゃ、ぁあああっ…はぅあああっ」
すると、待っていたように隙間が埋められる。体は求めるように沈んでいく。
「私は、ここにいてもいい?一緒にいてくれるよね?」
奥へ奥へと埋められて、苦しいのに、嬉しくて。
「いいっ、いるっ、いるからぁっ……ぁ、ぅくぁああっ」
「ぁあっ……は、ぁっ…まだ、また、一緒に、イこう、ね?ここは、私たちの場所だからね?」
どうして、私は、普通に生きられないのか。
でも、この人なら。命を救って、優しくしてくれたから。お礼をしないと。
「はぃっ…イきますっ…ここに、いたいです…っ」
毎日、毎晩。当たり前のように交わって、妊娠した。言われたとおりに、中絶を繰り返した。子供に居場所を渡せば、約束が守れない。
でも、何回目だろうか。ふと、産みたくなってしまった。育てられないのに。求められていないのに。
今日も、抱かれる。
感じ慣れた何度目かの妊娠の兆候は、わからないことにした。
目が覚めると、爽やかな空気が流れてきた。ベッドをでようとすれば、引き止めるように繋がれる。ナカで全てが合わさって、一つに戻る。
「ぁあんっ、はぁんっ…ぃつもより、つよぃいいっ」
「今日は、離さない。壊れても、離さないからね」
後日。体に違和感があり病院へ行った。中絶ではなく、初めての流産処置だった。安堵している彼と、少し残念な気分になった私。期待に応えることも願いを叶えることも難しい私。
一緒にはいられないと思った。
やはり、どこへ行っても私に価値なんか無い。
決心がつくまで、時間はかかった。
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ありがとう。
さよなら。
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