輪廻の終わりで

秋赤音

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死地へ至るまで

愛の行く先

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冬の街は、眩しいほどに煌めく。
人工的な大小の明かりと、人々の声。節目の手前らしい忙しさの中に埋もれる感情も、慰労会が思い出させてくれる。あるいは、温かな家の中で癒やしていく。

「ただいま」
「おかえり」

ただの挨拶でさえ、声と表情とで感情を、想いを伝える。

「あ、襟に口紅」
「人助けをして…部下が転けそうになって」
「そうですか。イイ事しましたね」
「はい。自分で落とします」
「道具は持ってきます。リビングにいてね」

喧嘩して、仲直りして。
最後は微笑み合う。

「これ以上落ちないけど、許してほしいな。愛してる」

愛は、言葉にして語ることができる。

「しかたないので、新調してね。愛してる。
今日も残業、お疲れ様でした」

愛ゆえに、と行動することができる。
だが、心から愛していると証明したことにはならない。
抱きしめる腕の温度と、心は別の生き物だ。
隠されている携帯端末に別の誰かへの『愛してる』があったとしても、気づかなければいい。
あるいは、一人一人を愛していれば、それも心からの愛だ。
携帯端末は、無機質に愛の記録を残すだけ。
『嬉しい。今度いつにする?』
『しばらくは無理。慰謝料、払えないデショ。生活の相性だけはイイからさ』
いつも何かを求めて、誰かへ愛を囁く。

「ありがとう。大変だけど、頑張るよ。家の方はお任せします」
「はい。家のお世話、頑張ります」

笑顔に隠した嘘。
互いの行動に良しとして、目的が達成されるならと無意識で、有意識で理由をつける。
社会の都合と動物本能を綺麗に包んで見せる。

「仕事で手が回らないから、助かるよ。君がいてくれてよかった」
「よかった。契約切れて困ってるの助けてもらってるし、これくらいはね」

事情の成れの果てにある「支え合い」は、無償の愛なのか。
あるいは、利害の一致も愛の一つになるのか。
愛は、さらなる愛を生み、様々な愛が繋がって、広がる。

「お互い様。約束通り、期限までは愛し合う夫だよ」
「そうね。約束通り、期限までは愛し合う妻よ」

どうすれば、愛していることになるのか。
どうすれば、心からの愛だと言っていいのか。
どうしようもないなら、心からの愛でなくてもいいのか。

「お勤め、しますか」
「しますか」

ベッドに沈み、唇を重ねる。
偽りの愛を抱いて、互いに体の渇きを埋めるだけ。

誰か、答えてほしい。
本当の「愛している」を教えてほしい。
少しでも分かれば、きっと、虚無な時間が彩り、煌めくはずだから。

だから、願いを託す。
偶然に隣り合わせただけの、偶然の出会いだったから。
必ず叶わなくてもよかった。
でも、知りたかった。
知って、安堵できる理由がほしかった。
いつか、できれば、君と見たかった。
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