輪廻の終わりで

秋赤音

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守られる街

歌う音

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翌日。夕方になっても、部屋から出てこない兄さんたち。
盗聴と、世話人から秋様の様子も聞いた上で放置する。目的である勉強の邪魔をしてはいけないし、身の安全のために一番の方法だと判断した。


昼食後。テーブルに新しい山が二つ。お見合い写真が追加されている。姉さんとため息をついて、整理をしている。

「華蓮、姉さん」
「なあに?歌鈴」

姉さんは、無邪気に笑う。取り繕った笑顔ではなく、よく知る笑顔。守りたい。生まれ持ったらしい危機管理能力の半分は、家族を守るためにあると思っている。

「出産。体調を考慮して、休憩しても良いって知ってるよね?前回は、命が危うかった」
「そうね。大変だけど。慣れたら、覚悟も何もないわ。命を産むのだから、当然、命がけよ」

淡々と分けられる写真の大山は、二つの小山になっていく。生存本能と肉欲のために、姉さんを使おうとしている、マシな誰か。素行が良くても、理性が無くなった時は人柄が変わるのを知っている。
今どき、血統を重視した混血交配なんて。血統を選んで身内の中で養子縁組の補い合うなんれ、と思うことはある。家風と世間が大きく違う事は、イマサラ。姉さんと僕の親は、親同士が遠い親族なだけ。兄は、育ての親が愛人に産ませたから半分だけ親族の血を持っているだけ。
互いのお見合いの候補に、互いの名が残されている事を知っている。
また酷く抱かれるかもしれないなら、いっそのこと?
豊かに育った体で、『ナツ』らしく性欲も昂りやすい『アキ』の女は、男の理性を簡単に壊すらしい。僕なら、望まれても、そんなことしない。

「姉さん。まだ、その中に僕はいる?」
「そうね。元素の春でも、さすがに外すのは難しいみたい。よほど圧がかかっているのね」

困った顔で笑う姉さん。僕が望めば、望んでくれるだろうか?
良い子が生まれれば、相手を変えることもないかもしれない。出産の時期も、体調を見ながら計画だってできるようになる。少しでも、生きる確率が上がるなら。

「姉さん。僕に、してみない?」
「え?歌鈴?」

驚いた姉さんは、目を丸くして僕を見る。初めて見るかもしれない。泣いているよりは良い。
予定の時間が迫っていることに気づき、椅子から立つ。上の意向で選ばれている五つの写真を鞄へ収める。

「仕事してくる。ゆっくり、考えてほしい。明日には帰る。いってきます」
「あ…いってらっしゃい」

監視代理の世話役が姉さんの近くに待機するのを背後の音で確認し、ドアを閉める。


車で移動した先は、指定された宿。見慣れた『本日、貸し切り』の表示。離れでは、すでに五人が待っている。世話人が僕を見て微笑む。

「お待ちしておりました。ようこそ、冬夏歌鈴様。こちらです」

離れに来ると、世話人は去った。気が乗らないせいか、片手でも開く木製のドアがいつも重い。
開ければ、予想通りに五人がテーブルに座り、待っていた。

「歌鈴様ぁっ。お待ちしておりましたぁ。『ハル』の春山家の三女、桃香ですぅ」

黄と薄黄の元素に近い女は、振り袖姿で媚びるように細く柔らかそうな体を見せつけながら笑む。産んだ後は女の艶が増すらしい。自尊心と幼顔と熟れた女が共存している肉体美。引く手は多く、色恋の相手に困ったことはなさそうだ。

「問題を回避するため、順番は決めさせてもらいました。『ナツ』の夏林家の四女、颯樹と申します。よろしくお願いします」

今日は元素に近い女が多いと聞いていたが、よく集めたと思う。薄緑と濃緑の目は笑わず、口元で愛想を出しているだけ。筋肉と脂肪がほどよく組み合わさる体の線を強調するワンピースのおかげか、育ちだけは見た目で十分に雄の本能を引き出す威力がある。どこか心ここにあらずな様子が、追いたくなる感情を呼び起こすようだ。

「『ハル』から順にどうぞ。一晩で五人は大変ですが、頑張ってくださいね。『アキ』の秋花家の五女、『フユ』持ちの雷夜です」

薄赤と深い青。ドレス姿の体は実りが良く、凹凸の主張も、整えられている柔さと引き締め感も絶妙。一人だけ護衛という監視が後ろに立っている。無難な掛け合わせの成果だ。役割を勤めたかも、報告されるのだろう。

「あ…『二季』の春夏家の三女、『ハルとフユ』の夜桜と、申します。よろしく、お願いします」

黃と薄青は、親族だからか少しだけ顔つきが秋様と似ていた。着物で隠されている体は細いが、おそらく豊かな胸から流れる凹凸のある曲線がある。孤児院から戻された理由は、役割のためだけに。過度な緊張と怯えた様子から圧をかけられている予想は容易く、少し同情する。

「『フユ』の雪海家の六女、氷花。早く、終わらせてください」

薄青と青の女は、冷たく笑っている。『フユ』は平坦そうな体つきだが、鍛えたれた体幹と蓄えられた豊かさを服の下へ秘めていることが多い。

「『二季』の冬夏家、『ハルとナツ』持ちの次男。歌鈴です。呼び名はトウカで、お願いします。各自、指定された部屋で待っていてください」

女たちは、『ハル』を残して各部屋へ向かった。

「トウカ様、私達もいきましょう?」

手を差し出せば、慣れたように応じる女。部屋に入ると、ベッドへ座らせる。僕も準備はできた。僕のモノを見て目を輝かせる女の顔は見えないよう、うつ伏せにした。困らない程度に振り袖の裾を乱す。

「足を広げて、腰をあげてください…そうです。濡れてる…慣らさなくて良さそうですね」
「あんっ、意外と乱暴ですぅ。でもぉ、ぁ、ぅんっ…優しくしてくださいねぇ?」

煽るように、濡れ待つ雌穴から水が滴る。どうでもいい。早く終わらせよう。幸いにも、勃っている。

「善処します」
「ぁあああっ…荒いぃいいっ、でもぉ…いいっ、きもち、いいっ」

腰を振って一人でも楽しみ始めた様子に、安心した。遠慮なく、終わらせよう。

「あっ、あんっ、激しぃっ、も、イクっ、イクぅううっ」

事を終え、惜しむように見てくる女に拒絶を含んだ笑顔を向ける。女は疲れたらしく、そのまま眠った。そのうち世話人が来るだろう。

別室にあるシャワーだけ浴びて、身支度を終える。
『ナツ』の部屋に入ると、女は浴衣に着替えて待っていた。

「お待ちしておりました」
「申し訳ない。お待たせしました」
「いえ。早く終わらせたい、ですよね。でも、他の女の香りは残さずなところ、意外です」

相変わらず愛想は口元だけ。ベッドへ押し倒せば、乱れた袂と裾から素肌が見える。何もつけていないようだ。すでに濡れている。

「少し、慣らしておきました。どうぞ、入れてください」
「協力、感謝します」

どんな顔で自分を慰めたんだろう。わからないが、淡々としている女が意外にも自慰をしたらしいだけで感じるものがある。

「いえ。互いの、ためっ…にぃ……んぁっ、すごぃ…想像、以上で…く、ぁっ…ぅうっ」
「大丈夫ですか?」
「問題、ぁりませんっ…絞り尽くして、しまいたぃっ…のに、イきたいっ、我慢、できないっ」

自ら絶頂へ向かうように激しく腰をふる女。間を合わせていれば、早く終わるだろう。

「どうぞ、我慢は体に悪いですよ」
「んっ、んんっ…イくっ、イくっ…一緒に、イッてくださいっ…あっ、んぁあっ、はぁああんっ」

女から離れ、身支度を始める。女はぼんやりと天井を眺めていたが、世話人が音が近づいてくると切り替わる表情は安堵していた。

シャワーだけ浴びて、身支度を終える。別室にあるおかげで、気持ちを整えやすいのがありがたい。
『アキ』の部屋に入ると、女は椅子に座ってお茶を飲んでいた。監視の男が傍に立っていたが、僕に気づくと音もなく出入り口の壁に移動した。

「おまたせしました」
「いえ。少し、休まれますか?」
「ありがとうございます。問題ありません」
「そう…でしたら、脱ぐのを手伝ってくださる?」

部屋に立つ監視は、動かない。だが、握る拳が震えている。恋仲か?報われない片思いか?だとしても関係ない。女は、ベッドの前に立つ。

「はい。手伝います」

脱がせながら愛撫をすれば、素肌になる頃には男を受け入れる用意も終えていた。

「おかけになって?いれさせて、ください。私が上に乗りますから」
「わかりました」

言われたとおりに座る。女は僕の肩へ手を添えて、ゆっくりのみこんだ。好奇心で動けば、女は簡単に絶頂する。しかし、泥濘んだナカを締めながら腰を振り始める。目の前で形の良い胸が揺れている。

「私…限界、です…っ、子種を、くださいっ」
「はい。動きます、ね?」
「ぁあんっ、そこ、いいっ…イクッ…イクの、とまらなく、て…こわれ、るっ…ぁああ…っ」

気絶した女を持ち上げて、ベッドへ寝かせる。僕が離れて間もなく監視役がきて、世話を始める。子種が注がれたかも確認していた。部屋を出る直前、目が覚めたらしい女は男と見つめ合う。男に抱きしめられた女は、声を殺して泣いていた。隠さなければいけないなら詰めが甘いと思うが、見なかったことにした。知らないほうが幸せなこともある。


身支度を終え、部屋を出て別室へ移動する。シャワーだけ浴び、身支度を終える。
『フユ』の部屋に入ると、女は浴衣に着替えて窓辺にいた。月明かりで透けた肌が美しく艶めかしい。今なら、雪女の末裔と言われても信じるかもしれない。僕に気づくと、慌ててベッドの上に座る。

「お疲れ様です」

肩から包むように抱きしめれば、全身が冷たくなっている素肌の温度が分かる。

「いつから窓辺にいましたか?」
「心配ですか?大丈夫です。早く、終わらせてください」
「そうですね」

女は自ら脱いで、ベッドへ四つん這いになった。冷たい肌も劣情で熱くなっていく様に苦しむ姿は、儚く艷やかで壊したくなるのだろう。服に隠れている部位に残る無数の赤い線は、とても健全に見えない。濡れていなければ、特に痛いのは女の方だ。今までもこのように振る舞って来て、誰も何も言わなかったのだろうか。
早く終わらせようと、男を受け入れられる準備をする。平凡な愛撫をしているだけなのに、なぜか驚かれる。荒くされないと分かったようで、それでも何かにじっと耐えている。
触れていると、繋げればなおさら分かるが、自らは絶頂の兆しも声にしない。女は最後まで甘く啼くことなく、時々辛そうに息を吐き、呻くだけ。それが男の加虐心を煽ると自覚してやっているとすれば、これも生きるために得た技の一つだ。

「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」

座って身を整えていると、背後から腕が伸びてくる。ベッドの重心が変わり、音を立てる。大きく柔い胸が背に押し付けられている。

「足りませんでしたか?」
「いえ。少し、寒いだけです」
「甘え上手ですね」
「いえ…初めて、です。申し訳ありません」

するりと離れていった女の腕。気づけば浴衣を羽織り目の前に立っている女は、ほんのり頬を染めている。羽織っているだけの浴衣の隙間から、呼吸をすると上下する胸が見える。煽っている自覚があるなら質が悪い。

「優しくしていただき、ありがとうございます」
「よくある、平凡な行いです。特別優しくはしていません」
「はい。ですが、私にはとても優しいことでした。ありがとうございます」

引き留める気は無いようで、身支度を終えた僕の前から見送るような位置へ移動する。

「ゆっくり休んでください」
「ありがとうございます」

部屋を出ると、最後に見た、初めて見る女の微笑みを思い出す。避けられない役割でも、やはり、せめて、痛みが和らぐように行う努力は必要だ。

シャワーだけ浴びて、身支度を終える。同室にある浴室でもいいが、他の女の気配を持ち越さないためにも別室は必要だと改めて思った。
これで最後だと、気を締め直す。

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