輪廻の終わりで

秋赤音

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守られる街

華散る音

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初めてお見合いをして身籠ったのは、十五歳。相手の顔は覚えていない。覚えているのは、抱かれる前日に春が謝っていたことだけ。
服を脱ぐように指示され従った。何も守るものがない不安を抑えてベッドに乗ると、手足を鎖で拘束された。貫かれた痛みで悲鳴をあげれば、頬を叩かれた。

「丁寧に慣らしてくれると思わないように。悲鳴で萎える男もいるから、相手を選びなさい。嘘でもいいから、色っぽく喘いでいればいいんです。ナカを締めて、そうです」
「ぁっ、は…っ、はいっ…んっ、んんっ…ぁっ…ああ、んぁっ…かたいのが、うごいて……っ」
「わかり、ますか。それが今、あなたの中にあって、子種を注ごうとしています。感じなさい」
「あっ、あぁっ、ぁひっ、ひゃああんっ」

痛かった。痛くて、熱くて、体の中を殴られているような。嫌だと言えない苦しさ。繰り返される痛みに慣れ、乾いた場所が刺激で濡れる。拒絶感で男から逃れようとするも、奥を突かれる瞬間に途切れる意識。男が部屋を出て、注がれた子種が確認される。溢れていく体液を眺めながら、母体としての役割を実感した。
孕む兆しがあるまで、三ヶ月間の毎夜が拷問だった。下半身で男を楽しませる術を教え込まれ、快楽人形として磨かれていった。産んだ命は、顔を見ることなく引き離された。私は本当に産むだけが仕事だと知る。

二人目の相手は、優しかった。体を繋げる前に愛撫をする人もいると知った。痛みではない、初めて知る感覚に戸惑った。
「『アキ』が重宝されるうちは、相手を選びなさい」と教えてくれた。
自分で体の準備をする方法から、私の体の使い方を教えてくれた。
ベッドに座る彼は、裸の私の胸へ潤滑油を塗るよう指示をした。そして、男の証を谷間で挟み擦るよう指示をした。胸で子種を受け止めると、労るように頭を撫でられた。

「上手にできました。子種は一度注がれればいいのだから、二度目より先は胸や手で出させてもいい。疲れるけれど、その場だけでも特別扱いをして気を満たせば穏やかなに済むこともある」

まだ硬く男の証は、胸へ子種を溢している。

「はい。ありがとうございます。お礼に、もう一度、させてください」
「ありがとう。復習は大事ですからね…そう、ですっ……そのまま…っ」

子種が溢れていく。大きな胸が武器になることを知った。出産するまでの間も、手や胸を使った愛撫を習った。
耳元で、秘密の話もした。「妻が『季』持ちで、今は他の男に奪われないようにするには孕ませ続けるしかない」と苦しそうな声だった。
妻に教えたと言う護身術まで、優しく、丁寧に教えてくれた。
望むなら、相手を変えなくても良い日がいつか来ればいいと思った。
妻が妊娠中は私のお見合い候補になり、何度か彼の子を産んだ。春や歌鈴にも優しく接してくれる彼と繋いだ命なら、優しい存在になると信じた。

相手を変えながら、仕事として流産や死産も経験しながら命を産み落としてきた。中には、遊びが目的の相手もいたから猶予期間だけの交流になることも多かった。
ある日、春が改革の意志を秘めながら役割を続けると告げた。私もできることで協力することに決めた。わざわざ入籍している『季』の既婚者は、できれば妻との時間だけを望んでいるのを知っている。

愛人の子として育った人形のような春は、十五歳の時から他の『季』と同じように決められた役割を勤め続ける。決められた相手に子種を注ぎ、街を守るよう『ハル』を自発的に選ぶよう強いられている。本邸に来るときは、仕事のときだけ。別邸には世話人を入れず、私達も出入りを遠慮していた。
秋様は知らないが、春は街で一人歩く『季』の役割から外れている秋様の姿に心動かされたようだ。結果として、春が秋様の知らないところで監視役になってしまったけれど。
春が初めて恋の相談をしてきた日は今でも覚えている。ついには「別邸に迎え入れるための部屋を作りたい」と言ったから、手伝ったのは良い思い出。
歌鈴は男の子同士だからか行ったことがあると知って、私も家族なのにと羨ましかったのも過去の事。秋様は私達を優しく繋げてくれた恩人だけれど、本人は知らない。
歌鈴も十五歳になって、役割を勤めるようになって。遺伝子の繋がりは遠いおかげかお見合い候補ではあったけれど。まさか、自分の婚約者になるなんて思ってもいなかった。
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