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0.ハジメまして
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「自分の幸せを他の誰かに委ねる行いは、とても迷惑だ。」と誰からが嘆いた。
「幸せは、社会の模範に落ち着く範囲で決まってしまう。」と諦めた声が言った。
「しかたない。暮らしを保つためには避けられない。」と、堂々とした声は言った。
そして、諦めた者たちに指導者は笑む。自信に満ちた表情で、口を動かした。同じ時、違う場所で。
「舞踏会に行きなさい。」
漆黒と朱は嬉しそうに笑う。
選ばれた白銀はため息をつく。だが、大人は重ねて告げる。
「舞踏会に参加しなさい。」
そして、結果的に運命の出会いを果たした男女は結ばれ続けた。きっかけとなることが多い白い硝子の靴は、高価だが縁を得る開運の飾りとして人気になったという。
時は巡り、同じ場所で再び彼らは出会った。
中央地帯。4国が集う社交の場に選ばれた広い応接用の中央部屋。
挨拶を終えた主賓の男女4人は、軽食を食べながら交流会がはじまる予定だったが早々に会場から姿を消していた。
彼らは偶然、同じ時に庭にいた。 薄紅の瞳をもつ同じ顔をした白銀の髪の男女は、蔦に囲まれたテーブルセットに身を隠す。薄青色の目をした白銀の髪の青年は、白い外壁に同化して退屈そうに空の茜色を見上げている
「「「自分の幸せは自分で決めたい。」」」
夕暮れの広場で、偶然にも重なる嘆き。声の主を辿り合い、花の蕾が咲く囲いの内側で3人は出会った。
「オトハ…?」
呆然と立つ男性に呼ばれた女性は薄紅の瞳に男性の薄青をうつすが、首をかしげる。
「人違いでは?私はシラハ。ただのシラハです。家名は先代で消えたので。」
女性の隣で男性が困ったように微笑む。
「ハクトです。シラハ、覚えがないだけで泣かせることをしたかもしれないよ。」
「えー…あの、お兄さんの名前は?なんで泣いてるの?」
「あ…シノ、です。家名はないです。」
泣いていることに気づいた青年は服の袖で乱雑に涙をぬぐった。
「大人っぽくない、ですよね…少しくらいとは思うんですが。といっても成人は5年先で実感ないですが。」
「偶然ですね。私も…なのに…もう結婚相手を決めるだなんて。」
「わかります…結婚しても、どうなるかわからないのに」
青年の言葉にうなずく男性はため息をつく。
「生涯契約をする相手を選ぶには、まだ不安で…。」
3人は目を合わせて笑い、近くにあるテーブルに座って会話は続いた。そして、叶わないと思いながらまた会う約束をする。
これは、始まり。
悲劇が喜劇へ変わり、終点へ向かうための始まりだと知るのはまだ先のことだった。
「幸せは、社会の模範に落ち着く範囲で決まってしまう。」と諦めた声が言った。
「しかたない。暮らしを保つためには避けられない。」と、堂々とした声は言った。
そして、諦めた者たちに指導者は笑む。自信に満ちた表情で、口を動かした。同じ時、違う場所で。
「舞踏会に行きなさい。」
漆黒と朱は嬉しそうに笑う。
選ばれた白銀はため息をつく。だが、大人は重ねて告げる。
「舞踏会に参加しなさい。」
そして、結果的に運命の出会いを果たした男女は結ばれ続けた。きっかけとなることが多い白い硝子の靴は、高価だが縁を得る開運の飾りとして人気になったという。
時は巡り、同じ場所で再び彼らは出会った。
中央地帯。4国が集う社交の場に選ばれた広い応接用の中央部屋。
挨拶を終えた主賓の男女4人は、軽食を食べながら交流会がはじまる予定だったが早々に会場から姿を消していた。
彼らは偶然、同じ時に庭にいた。 薄紅の瞳をもつ同じ顔をした白銀の髪の男女は、蔦に囲まれたテーブルセットに身を隠す。薄青色の目をした白銀の髪の青年は、白い外壁に同化して退屈そうに空の茜色を見上げている
「「「自分の幸せは自分で決めたい。」」」
夕暮れの広場で、偶然にも重なる嘆き。声の主を辿り合い、花の蕾が咲く囲いの内側で3人は出会った。
「オトハ…?」
呆然と立つ男性に呼ばれた女性は薄紅の瞳に男性の薄青をうつすが、首をかしげる。
「人違いでは?私はシラハ。ただのシラハです。家名は先代で消えたので。」
女性の隣で男性が困ったように微笑む。
「ハクトです。シラハ、覚えがないだけで泣かせることをしたかもしれないよ。」
「えー…あの、お兄さんの名前は?なんで泣いてるの?」
「あ…シノ、です。家名はないです。」
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「わかります…結婚しても、どうなるかわからないのに」
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