代償 ー願いの対価ー

秋赤音

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2.望み

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舞踏会の当日。
中央地帯にある宮殿は華やかに賑わう。
3つの種族が集まる貴重な交流行事は、様々な思惑が交差する。
息子を連れた紳士は、会場の一角で休む娘2人と子を慈しむ紅淑女に深青の目を止めた。

「レイヤ。壁の花に美しい紅天使がいる。残念ながら止まり木があるようだが」

「シンヤお父様。愛人はもういりません」

「麗しの淑女は何人いてもいいだろう。あれは満たされていない目をしている。
癒したいと願って何が悪い」

「はいはい。見るだけにしてください」

同じ色を持つ息子は、紅聖母の傍にいる淑女を眺めていた。
淑女が見つめる先にいる白亜の天使を見つけ、笑みを浮かべる。

「なんだ、お前も見つけたか。…白亜のお姫様、お前がもらえばいい。
王子様は紅天使が狙っているようだから、母親の身ごと保護するから問題ない」

「がんばり…ます」

親子は無邪気に微笑み、淑女の休息を見守っていた。)




紅聖母は、同じ顔をした麗しい娘たちの耳元へ口を寄せる。

「ブランカ、エリス。ハクト様を、どちらかが射止めればいいのです。
狙うは白亜の天使です。分かっていますね」

「「はい。カレンお母様」」

娘たちは、白亜の天使に自身を売り込むが惨敗。
諦めない姉と、去る妹。同じ顔でも対応に差がある当たり前を、周囲は面白く見物していた。
ただ1人を除いて。
母親の傍から離れた壁の花になり、姉を眺める幼い淑女の足元に影ができる。
幼い紳士は微笑んでいた。

「どちら様ですか?」

「レイヤと申します。失礼ながら、見ていました」

「そう、ですか」

幼い淑女はうつむいた。幼い紳士は、幼い淑女の耳元に口を寄せる。

「彼の気をひきたいですか?」

幼い淑女は、泣きそうな顔で笑みを作った。

「はい。でも…私はブランカと違って…無理、です」

それは儚く今にも消えそうな声だった。

「相手に愛想笑いすらしない天使は大変でしょう。
少しでも叶えたいと願うなら、手伝います。
男の思想を知れば、少しアプローチ方法も広がると思いませんか」

囁く声に幼い淑女は迷い、深紅の瞳を揺らしながら唇をひらいた。

「でも、いいのですか?友人でもない私のために…」

「はい。あなただからこそ、申し出ます。場を読み動けるあなただから」

「エリス、です。レイヤ様。私を導いてください」

幼い淑女は一歩ひいて、手をさしだす。

「エリス様。よろしくお願いします」

その手をとった幼い紳士は、導くようにダンスへ誘う。

「私、ダンスは「アプローチしてきた淑女が別の異性と、親しそうに踊っている。気になる人なら、効きます」

「ぁ…では、お願いします」

幼い男女は身を寄せてぎこちなく踊る。
初々しい恋人のような様は、周囲の大人を和ませた。
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