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-0.0 繰り返される過ち
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中央地帯。4国が集う社交の場に選ばれた広い応接用の中央部屋。これから、主賓の男女4人と貴族たちで軽食を食べながら交流会がはじまる予定…だった。
東国・西国からは白亜族の子孫が来ている。癒しの能力をもち、暮らしに困らない豊かな国土はあるが外交に積極的ではない国民。過去に他国が関わって番を無理に離されてから友好関係が悪化し、ついに国交は最小限度になっている。
しかし、この集まりだけは欠席が難しい。4つ隣国で協力し合うことを確認するための集まりになった今回は特に難しい状況だった。
彼らは到着し、会場の壁へと移動した。床に靴底をのせているだけの花と化し、動かない通ったばかりの入り口を見据えて帰りたいと無言の笑みに書いてある整った顔が2つ。ため息をつく女性が男性の耳元へ口を寄せ、上品に結われた白銀の髪が揺れて交わる。
「アズマ。」
空を閉じ込めたような薄い青に見つめられた薄紅の瞳。機嫌の悪さを隠すことなく女性の肩を抱き寄せて耳元へ口を寄せる。
「オトハ…わかっている。」
それを遠くから見つめる貴婦人たちは、うっとりと光景を目に焼き付ける。
「愛想が無くても絵になるわ。」
「わかります。」
東国は薄青、西国は薄紅の眼と曇りない滑らかで薄黄色の澄んだ陶器肌と潤い艶やかな唇。癒しの異能を持つことから天使と呼ばれていることもあり、我が物にしたい欲望を隠さない視線を集めている。
「天使サマは番を守る方が大切、か。」
男は遠くから白亜たちを見ながら退屈そうに自分の指先に漆黒の髪を絡めながら笑う。
南国には白亜族を愛する黒天族が住んでいる。自慢の艶のある黒髪。滅びの力を宿す深青の眼と滑らかな褐色肌。死神と呼ばれているが、当人たちは気にしていない。
「まあ、いつかは我が花になる。だろう、紅き天使よ?」
深青を細め、近づいてくる朱色の長い髪を結い上げた女性をみてニヤリと笑った。漆黒と朱色が交わりそうで一歩分合わない隣に立つ女性は、深紅の目を細める。白亜に似た滑らかな白い肌を魅せるのは、体の柔く引き締まる凹凸に沿った赤いドレス。豊かな胸元は近くを通る男性の視線を集めるが、目が合うと優美に微笑みを返すだけ。
「同じ過ちを繰り返すのね。」
囁く声は死神と同じ色をしていた。
北国に住むのは、白亜族を愛する紅天族。朱色の髪、深紅の眼、曇りない陶器肌は白亜と同じく人気だが、当人たちは白亜の造形を理想としていた。造る力を持つことから創造主、あるいは白亜族に似た容姿から紅天使と呼ばれている。
「紅天使サマ、そろそろご挨拶の時間では?」
紅き天使は唇に三日月を描く。
「ええ。挨拶は、大切よね。」
壇上が整い、挨拶が始まる。初めを任された紅き天使は手本のような笑みを浮かべて、唇を開いた。
「本日の祝宴より、国のさらなる発展が訪れるよう、皆様よろしくお願いします。」
美しい礼と歩みで壇上を降りた女性は、順を待つ漆黒とすれ違う。東西南北それぞれの国から選ばれた代表が、2人の立会人の傍で挨拶を交わし後に親睦を深める予定だ。
死神が壇上に立つと空気の流れが変わった。 男性が会場を見渡すと、貴婦人たちが帰り始める。残ったのは白亜と紅の天使と、立会人の2人だけ。
「挨拶は、必要か?」
「「「いいえ。」」」
紅天使は狂気の笑みを浮かべた。
白亜の天使は感情が無い表情を変えないまま自己の守りに入る。体術を使いながら本来は癒すはずの能力を反転させて対抗するが、長くは続かない。死神の腕に囚われた女性。救おうとした男性も拘束される。動かない立会人は、再び始まる悲劇を眺めていた。
東国・西国からは白亜族の子孫が来ている。癒しの能力をもち、暮らしに困らない豊かな国土はあるが外交に積極的ではない国民。過去に他国が関わって番を無理に離されてから友好関係が悪化し、ついに国交は最小限度になっている。
しかし、この集まりだけは欠席が難しい。4つ隣国で協力し合うことを確認するための集まりになった今回は特に難しい状況だった。
彼らは到着し、会場の壁へと移動した。床に靴底をのせているだけの花と化し、動かない通ったばかりの入り口を見据えて帰りたいと無言の笑みに書いてある整った顔が2つ。ため息をつく女性が男性の耳元へ口を寄せ、上品に結われた白銀の髪が揺れて交わる。
「アズマ。」
空を閉じ込めたような薄い青に見つめられた薄紅の瞳。機嫌の悪さを隠すことなく女性の肩を抱き寄せて耳元へ口を寄せる。
「オトハ…わかっている。」
それを遠くから見つめる貴婦人たちは、うっとりと光景を目に焼き付ける。
「愛想が無くても絵になるわ。」
「わかります。」
東国は薄青、西国は薄紅の眼と曇りない滑らかで薄黄色の澄んだ陶器肌と潤い艶やかな唇。癒しの異能を持つことから天使と呼ばれていることもあり、我が物にしたい欲望を隠さない視線を集めている。
「天使サマは番を守る方が大切、か。」
男は遠くから白亜たちを見ながら退屈そうに自分の指先に漆黒の髪を絡めながら笑う。
南国には白亜族を愛する黒天族が住んでいる。自慢の艶のある黒髪。滅びの力を宿す深青の眼と滑らかな褐色肌。死神と呼ばれているが、当人たちは気にしていない。
「まあ、いつかは我が花になる。だろう、紅き天使よ?」
深青を細め、近づいてくる朱色の長い髪を結い上げた女性をみてニヤリと笑った。漆黒と朱色が交わりそうで一歩分合わない隣に立つ女性は、深紅の目を細める。白亜に似た滑らかな白い肌を魅せるのは、体の柔く引き締まる凹凸に沿った赤いドレス。豊かな胸元は近くを通る男性の視線を集めるが、目が合うと優美に微笑みを返すだけ。
「同じ過ちを繰り返すのね。」
囁く声は死神と同じ色をしていた。
北国に住むのは、白亜族を愛する紅天族。朱色の髪、深紅の眼、曇りない陶器肌は白亜と同じく人気だが、当人たちは白亜の造形を理想としていた。造る力を持つことから創造主、あるいは白亜族に似た容姿から紅天使と呼ばれている。
「紅天使サマ、そろそろご挨拶の時間では?」
紅き天使は唇に三日月を描く。
「ええ。挨拶は、大切よね。」
壇上が整い、挨拶が始まる。初めを任された紅き天使は手本のような笑みを浮かべて、唇を開いた。
「本日の祝宴より、国のさらなる発展が訪れるよう、皆様よろしくお願いします。」
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「挨拶は、必要か?」
「「「いいえ。」」」
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