瞬く間に住む魔

秋赤音

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花は愛を乞う

愛を咲かせる

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スノウ・クラフ様が夫様と出会って一年六か月が過ぎた。
培養器から生まれた命は、無事に生まれている。
さらに、成長を促すための薬を与え、成人の十五歳まで体を育て、知識を与える。
短命になる欠点があると分かったが、培養器で数を量産すればしばらくは問題ない。
不足を補いため、今は少しでも多くの良質な個体を造らなければいけない。
雌は新たな母体に、雄は子種にして、研究は進む。

培養増殖実験は、別の道も開こうとしていた。
子種の生成から生むまでを従来通りに行うことが、内々に伝えられた。
第二研究と名づけられたものの発足記念と、実験体を選ぶための舞踏会が開かれる。
表向きは実験に貢献した遺伝子の表彰と、新たな婚姻仲介のためと聞く。
スノウ・クラフ様夫妻は表彰者として呼ばれたため、楽しそうに準備をしていると言っていた。

舞踏会の後日。
楽しかった、と感想を聞くために待っていた。
しかし、訪れたスノウ・クラフ様の顔色は青白かった。
涙を流しながら、会話よりも快楽を求め、啼き喘ぎ夫様の名前を叫びながら果てて気を失うように眠った。

舞踏会が終わって三か月が過ぎた。
一か月前、ついにスノウ・クラフ様の夫となった。
傷心の妻を支えながら研究をする暮らしにも慣れた。

当時、楽しい祝賀会で終わると思っていたが違った。
スノウ・クラフ様は夫様と離別を強いられた。
夫様が新たな研究の三人目の実験対象になった研究員レナの番で、連れて行かれた。
ウォル・ガディ夫妻から作られた子供が目の前に現れた、と言う。
おそらく、成長薬を使われている個体だろう。
幸い、心の相性も良いらしい。
出会ったその日に体を交え、十体分の培養器に遺伝子を加えた後で無事に懐妊したと聞く。
傷心しながら妻を大切にする夫と、夫を癒し支える良き妻として有名だ。
だから、だろう。
妻は、スノウ・クラフ様は自ら記憶操作の薬を飲んだ。
元夫のことだけ記憶から薄めた妻は、空白の時間に疑問を抱きながら今の夫と時間を過ごす。
ようやく、望みが叶った。
隣を歩くスノウ・クラフ様は、穏やかな笑みでこちらを見る。
それだけで、幸せだ。

「ジル様?」

「スノウ。愛しています」



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