瞬く間に住む魔

秋赤音

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花は愛を乞う

10.幸せでいてほしい

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舞踏会の後日。
実験体に選ばれたことで再会したジル様。
案内されたのは、見覚えのある応接椅子。
いつもなら、すでに座って季節の話から始める会話をしていたけれど。
今は、挨拶する気力も無い。
本当なら、アルトと一緒にくるはずだった。
でも、叶わない。
ふと、机に置いてある薬が視界にはいる。
記憶操作、しても無駄だった。
強い悲しさが残る場面の再現で、恋人のことを思い出したアルト。
でも、傍にいてくれるなら、もう忘れさせようとしない。
残された側の気持ちを知っているアルトは、どんな気持ちだっただろう。
拒否権が無い、と。
断った際の万が一も保障できません、と言った意味をきっと知っているから。
私は、アルトに守られた。
きっと、私の手は冷たい。
いつもなら、アルトが手を包んでくれるのに。
もう、会えない。
アルトを守るためにも、守られるためにも、会ってはいけない。
頭がふらふらした。
足元が揺れて、体から力が無くなっていく。
床に当たると思ったが、何かが支えてくれた。

「スノウ様」

不安そうな声。
ジル様も不安になることがあるのか。
頭の良い学者が抱く不安が私には分からないが。
今まで散々恥ずかしいところを見せてきたのだから、今さら隠すことは無い。
だから、意味の無い自己満足も、与えられることに慣れた快楽も、八つ当たりも押しつけてしまおう。
どうでもいい。
アルトは、二度と私の夫になることは無いのだから。

「夫が他の女性の、番でした。
これは、夫ではない者に体を許した罪への罰でしょう。
でも、罪を償っても夫は戻らない。
だから、抱いてください。
避妊はしても欲の捌け口くらいには、なるでしょう」

「スノウ様…望むなら、その罪と罰を分け合い抱えます。
人の妻と知りながら契約した己にも非はありますから」

「同意した私の責任です。
一人で、抱えますから、あなた様の思いは結構です。
それより、独り身になれたのですから、少しくらい遊んでもいいでしょう?」

「遊び方しだい、ですがね」

ジル様は私の背中を長椅子に押しつけた。
快楽を求め、目の前にいる男のことを考えようとするが、浮かぶのはアルトだけ。
混ざり合う熱と、与えられる刺激に反応する体に抗うことは無い。
息を吐き、夫様の名前を呼び、最後は果てて眠気に身を預けた。


舞踏会が終わって三か月が過ぎた。
一か月前、ついにスノウ・クラフは新しい夫を迎えた。
新しい実験体に選ばれた私は、健康観察係のジル様と縁談が決まるのに時間はかからなかった。
思い出せない誰かがいないだけなのに呆然と過ごす私は、見守ってくれるジル様のおかげで生きている。
研究室の近くに家があると言っていたが、必ず私の家から仕事に向かう。
一人住まいと仕事場と家との移動距離が良い運動だと言った。

今日も、朝日と共に仕事に向かう夫を玄関の内側で見送る。
まだ開かない扉と夫の背中を眺めていると、くるりと振り返ったジル様。
ふわりと唇に触れた感触。

「スノウ。愛しています」

耳元で囁かれた言葉は、甘い毒のように染みていく。

「ジル様?」

名を呼べば、再び塞がれた唇。
深く深く味わわれ、呼吸が苦しくなると、ようやく離れた。
そして、熱くなり始めたお腹の奥を撫でるように指が秘部の入り口に寄せられた。
撫でるだけで水音が聞こえて、恥ずかしいのに、感じてしまう。
ジル様に触られて気持ち良くなると、ご褒美がもらえるからかもしれない。
いずれ始まる実験のためにも、感じやすい体が必要らしい。

「ああ…素晴らしいですね。
続きは、帰ってから…それまでは玩具で我慢してください」

「ぁ…あっ、ぃやっ、それ、いゃあぁああっ!あっ、んんっ震えるの、だめ…っ!」

秘部のナカで暴れる玩具に抗うことはできなかった。
力が入らない体はジル様に抱えられ、ベッドにおろされる。
そして、足首につけられた拘束具と長い鎖。

「できるだけ早く帰ります。スノウ、いつも見ていますからね」

「あっ、ジルさまぁ…っ、帰ったらぁっ…ご褒美、くださぁあんっ!」

「少し動かしただけでイけるなら、たくさんご褒美を用意しなければいけませんね」

ぐずぐずに水音をさせながら玩具が出ては入り、合わせて腰を振ると胸の先にも玩具がつけられた。
ジル様は私の足を開くと、秘部の近くにある突起に吸いついた。
ご褒美、だ。
意識が飛んで、戻った頃にはジル様はもういなくて。
玩具の震えは増しながら不規則な動きで私を惑わせる。

「ぁあああっ、早く、ほしぃいぃいいっ!!」

私は知っている。
ジル様が帰ってくれば、熱い肉棒で深くまで貫かれ、犯され、ご褒美がもらえることを。
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