瞬く間に住む魔

秋赤音

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花は愛を乞う

4.愛している

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たまに、本当にたまに、違和感を覚えるが、スノウは微笑んで優しく抱きしめてくれる。
「アルトは不安なのね。私は、ずっと傍にいるからね」とほしい言葉をくれる。

ある日、スノウと街で買い物をしていると偶然にウォル・ガディ様と出会った。
女性を連れているが、揃いの色を身につけているので妻だろう。
初めて見る人、のはずなのに。
一瞬見ただけで、ざわめく心臓と走る鼓動。
怖くなって、すぐに目を背けた。

その夜から、たまに名前は知らない女性の夢を見る。
顔は分からない。
だが知らない女性。
なのに、まるで自分と恋人のような甘い時間を過ごす。
婚前なのか、子を成す性行為はしない。
でも、温かい感情に満たされる触れ合い。
結婚したら、と同じ我慢を共有しながら高め合う熱も心地よい。
他愛ない言葉までが大切で。
相手を呼んでいるはずなのに、音は文字になっていない。
呼ばれる自分の名前は易しく甘い響きだった。
でも、なぜか辛くなる。
目が覚めると、様々な感情が溢れてしまい泣きたくなる。
優しく抱きしめてくれるスノウに欲望をぶつけ、初めての衝動をやりすごす。
この辛さが長くは続かないと願って。

一か月後。
初めて、久しぶりに、一人で街に出た。
スノウはいつも決まった時間に出かけるから、その間に女性へ任せるのが気恥ずかしい買い物を済ませる。
人ごみの中、帰ろうとするとウォル・ガディ様の妻と会った。
目が合った瞬間、自分の中の何かが弾けた。
ドクンと心臓が大きく速く脈を打つ。

「ルシア?」

知らないはずなのに、息をするように発音できた。
すると、目の前で静かに涙を流し始めたウォル・ガディ様の妻。
大衆の前で泣かせているように見えるだろう。
肯定するように、人の目が自分を不審に見てくる。
違う。
こんな顔をさせたかったのではない。
自分は、ルシアを笑顔に、幸せに。一緒に、幸せに、幸せになるのはスノウ。
いや、ルシアのはず。
こみあげる感情と自覚している思いが混ざって、めまいがする。

「アルト」

女性の声で呼ばれると、心臓の音が聞こえなくなった。
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