瞬く間に住む魔

秋赤音

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同じ傘の下で

4.消えない影

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この世界の母性というのは暴走すると子種ほしさに異性を襲う、らしい。
美しい夕暮れ。
帰路に向かう活気にあふれた街。
今日も平和だな、なんて思いながらリディへの土産を手に歩いていた。
ふと、花屋の看板が見えた。
入り口に立つ女性たちが愛想のいい笑顔で小さな花束を売っていた。

「お兄さん。奥様の手土産にいかがですか」

近くにいた男性が花を買っていた。
そのまま道に戻ると思ったが、花を手渡した女性とどこかに向かっていた。
男性と腕を組み豊かな胸を押し当てる女性。
とろりと虚ろな目で女性を下心だけで見つめる男性の様子に違和感があった。
毒の類が使われている可能性もある。
警備に報告しようと考えながら通り過ぎると、立ち眩みがした。
出回っている毒の、ある程度の耐性をつけた体が揺らいだ。
柔らかな何かに背中が当たり、固定される。
香りで正体が分かったところで、痺れているのだから解くこともできない。

「一緒に帰りましょうね」

囁かれた声に抗うが、口元にあてられた催眠薬が意識を奪った。
入手経路を見つけなければリディが危ない。


「逢瀬を邪魔して申し訳ありません。失礼します」

会いたい声がして目を開けると、リディの背中が見えた。
見渡すと、花屋の女性が地面で寝ながら喘ぐ男性に跨っている。
冷たい空気が夜を知らせている。
湿り気のある香りと人の気配の無さと、水音の響き方で裏路地らしい場所にいることが分かった。
靴越しに感じる地面と背中が当たっている壁が冷たい。
だから、なおのこと、体が熱くなっているのがよくわかる
特に下半身の、生殖が仕事の。
おそらく、時間経過で香りが変わる香水のような何かに混ざっていた毒のせいだろう。

「ぁんっ…もぅ、旦那様のお迎え、早すぎませんんっ…ねぇ?
まだ、いただいてなぁっん…い、のに…束縛するとぉ…嫌われ、ますよ。
ぁっ…んぁっ…あなた、生理現象を処理するのが女の臓器ならぁ…っ、浮気だと思っています…っ?」

知らない女性の声がする。
違和感なく人の意識を誘う技は感心するが、今は無事に帰るのが優先だ。
意地で動かした足を奮い立たせて、リディの手をとった。

「帰ります。失礼しました」

歩き始めたと同時に、寝ていただけの男性が動く音がした。

「ぃやぁああっ…いかないで、立派に勃たせた私にっ…それを、注いで…っ!」

「あぁ…っ、たっぷりと注ぐ、からね…っ、そろそろ、動き疲れた、だろ?
ようやく、少し、動けるようになったから…っ。
誘いに応えられるよう、頑張るよ」

「ぁああああっ!深いぃいいいっ! 子種、子種がぁ…いっぱい、ぁひぃっ、壊れ、っぅうぁああ!!」

現場から離れた路地の入口まで響く嬌音に誘われ、大胆な装いの男女が一人、また一人と路地に向かって行く。
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