瞬く間に住む魔

秋赤音

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同じ傘の下で

5.水面の波紋

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15時の甘味は極上だった。
3日ほどベッドから動けないくらい抱き潰されたリディ。
抱き上げて浴室まで連れて行き、身を清めると服を着せ、居間に連れて椅子に座らせる。

「シアさん。私も「リディは待っていてください」

目の前にリディがいる。
リディは目を伏せた後、立ち上がろうとして痛むであろう腰に苛立つ目を向けている。
鍛え方が足りない、と言葉ではなく鋭い目と下がる口角で語っている。
己が身を嫌悪しているような目。
従僕ならば責められていたかもしれない。
だが、今のリディは夫に寄り添う妻であり子を成す母体が主な役割。
だから、もう、いいんだ。
僕を守ろうとしないでいいから。
危ないところに来ないように躾けなければいけない。
リディから主従の意識が消えないなら、利用するだけ。
やはり小さなことから少しずつ、役割を体に教えるしかない。
リディの中にある僕へ語られていない理想ごと砕いてしまおう。
待ってはみたが頑なに閉ざされているから、リディの弱さを強引にでも晒してもらおう。
僕はリディを守るために、少しくらい強くなった。
リディにはまだ届かないかもしれないけれど。
それでリディが壊れたとしても、僕だけは愛しているから、大丈夫。

「シアさん「シア」

抱き寄せて、耳を甘噛みするとリディの肩が跳ねた。

「え、えと。シアさま?」

「シアと、呼んでください。リディ」

呼び方など、些細なことだけれど。
一度でいいから、呼ばれてみたかった。
叶わないと閉ざしていた小さくも大きな憧れから解放しよう。
病めるときも健やかなときも共にする契りを守ろう。
主従のまま共に壊れ、新たな主従を造り、添い遂げよう。
同じ温度で愛さなくていいから、傍にいてくれるだけでいい。
従僕と契約の延長でいいから、命が尽きる瞬間まで。
最後は一緒に、リディの亡骸を抱いて、灰すら残らないような焔に焼かれよう。
誰にも渡さない。
初めから存在しなかったと錯覚されてもいい。
リディと、リディが守る僕だけは、誰にも渡さない。

「シア」

「リディ」

首筋を甘噛みすると、色香をまとわせ息をはいたから、当然のように吐息を奪う。
縋るように腕を伸ばされて、快楽に堕ちたただの女の目に変わったリディから離れる。

「ぁ…っ」

「リディ。ほしいものがあれば、言いなさい。
昔から、そう教えていたはずです。
もう誰も、主従を縛る圧がないのだから、遠慮しないで。
願いを、言ってください」

「シアさま…っ、私、私は…っ」

「リディ。僕は、リディの全てを愛しています。
従僕のリディも、友人のリディも、妻になったリディも、全てを愛しています」

「ぁ…っ、あ、…っ、シア…シアっ」

艶やかな声と誘う雌の甘香。
伸ばされた指先が僕の頬に触れて、懇願するように自ら頬を寄せてくる。
自ら股を開いて、昂る雄が来るのを蕩け待っている。
これでいい。
理性が壊れないと教えてくれないなら、壊せばいい。
肌を重ねるたびに感じる、わずかな情欲が勘違いでないことを願う。

「リディ」

初めて、だった。
そっと重なり、すぐに離れたリディの唇は熱かった。
おちた涙を舌ですくい、離れる。

「一緒に作りますか?
手の込んだ料理も、分担すれば、美味しく早く食べられます」

「はい。今できることをします」

熱のこもった瞳と、震える指先が求め繋いできた温かな手が、わずかな変化を知らせる。
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