瞬く間に住む魔

秋赤音

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同じ傘の下で

8.果てなき欲望と、

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背もたれに上半身を預けるようにベッドへ寝かされた。
離れらと思ったら、水をもってきたようだ。
支えられながら水を飲むと、体内に染みわたる感覚に安堵する。
同時に、失われた水分が想定より多いことを自覚した。
シア様が触れていたところから熱が広がって、甘い疼きで支配されつつある体を限界まで抑える。
しかし、油が注がれた火が燃え盛るような感覚はとまることなく悪化する。
善意に甘え過ぎると自分が自分でなくなる気がして、怖い。
怖いけれど、意地を保つには難しい体が憎い。
万が一にも情欲を煽られてしまうと、断ることはきっとできない。
起こらない方がいい出来事を期待して疼きが増しているから、できれば休息をとらせていただくだけにしたい。

「ゆっくりで大丈夫です。
ここは僕が使っている私用の宿です。
下僕は雇っていないので、僕だけで生活しています。
先に聞きますが、明日以降のご予定はありますか?」

空になった器を傍にある机に置くシア様。
当たり前だが別れた時よりも変わったお姿を眺めながら予定を思い出す。
次の見回りは二十日後だった。
新しく契約も見つけなければいけないが、この体ではすぐに動けない。
痺れ薬も混ざっていたようで、体の自由がなくなってきた。
これでさらに耐性はつくだろうが、まずは回復しなければ話にならない。

「十日ほどは空いています」

「そうですか。よかったです。
調子が戻るまで、ここを使ってください。
このあたりで困りごとがあれば、遠慮なく僕を、頼ってくださいね」

返事をする前に離れたシア様。
いくつかの解毒薬の香りと新しい水をもち戻ってきた。
痺れに効くものだけではないから、おそらく私のためにも用意があるのだろう。
先にのんで、少しでも早く体が楽になってほしい。

「リディ。僕が先にのみます」

「はい」

安心して、ぼんやりとシア様を眺めている。
薬を飲んで動く喉元を見届けると、なぜかシア様が近づいてきた。

「シアさ…っ!」

塞がれた唇。
流れてくる水と薬。
おかげで痺れ感覚は治まりそうだが、弄ばれる舌が薬とは別の快楽を誘う。
催淫薬が回る体は簡単に堕落へと傾き、だらしなく自ら舌を絡ませる。
良くないと分かっていても止められなくなっていた。

「ん…っ、んっ、…んぅっ!」

服越しに胸をなぞられ、絶頂寸前を焦れる感触から続きを求める。
ふいに先端を潰されるように押され、急な強い刺激で軽い絶頂を迎えた。
ようやく離れたシア様の唇が首筋に触れると、電流が走った。
同時に体の奥から熱がどろりと溢れてくる。

「ぁああっ!イ、く…っ!」

「よかったです。
僕、今は加減ができません。
リディ。一緒に、気持ちよくなってください」

互いに服を脱ぎ、噛みつくように呼吸ごと奪い合った。
過去よりも熱く、今が永遠であればと感じるくらい温かい。
互いに一方的な行為で体で満たし合うだけだったかもしれない。
過去以上に私の体を気遣うのは催淫剤の影響で過敏になっているからだろう。
でも、私にとっては一緒に高め合っていく感覚が嬉しくて、怖くなった。
どんな理由でも優しくされすぎると、別れた後が辛い。
でも、シア様が傍にいて、私を見て私を求めていると感じるだけで体の底から欲望が溢れている。
本能だけで交わすような遠慮のない、痛みすら快楽に変わって、涙にとけた。

休息や食事をしながら、気づけば体を重ねていた。
夕刻に清めたばかりの体にまとう布を外すことを繰り返し、四回ほど同じ窓から月を見た。
五度目の朝日を共に眺め、劣情が冷め始めた体を惜しむように寄せ合った。
見上げるシア様に言葉はなく、重なった唇と体を包む指先は温かかった。
先に身を清め、お礼を言えば切ない笑みでお礼の言葉が返ってきた。
シア様が浴室の扉を閉めた音を聞きながら身支度を整え、宿泊の恩返しに軽食を作り置き家を出た。

街を歩いていると、仕事で使う名を呼ばれた。
依頼内容は、また警護とは名ばかりの看護と看取りだった。

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