瞬く間に住む魔

秋赤音

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合いし愛して

3.逢引

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デートとは。
リンは、番になったフィーナが提案してきた事柄を真剣に考える。
新婚の蜜月を婚姻の目的に正しく使い、日常生活を除けば多くの時間で生殖行為を行っていた。
共に暮らしていくうちに愛着し始め、契約ではない恋人らしい感情も芽生えている自覚はある。だが、目的を重要視する彼女に伝えても負担になる気がして言えない。だから、あくまで自己満足の内に留めて精一杯で愛そうと決めた。
デートの提案は完全に想定外だが、嬉しい。
だが、もしかしてと彼女の感情に期待しそうな自分の意識を気を引き締める。

一度目のデートで、彼女と手を繋いだ。見慣れた街を歩くだけなのに、新鮮な気分だった。
相変わらず小さな手だが、行為中に包み込むのとは違う感触。
だが、とても柔らかく温かいのは同じ。ずっと繋いでいたかった。我慢しきれず、あの日の生殖行為は手を繋いで行った。
彼女も感度が上がっていたのか、いつもより絶頂回数が多かった。事を終えた蕩け顔も綺麗だった。
誰にも奪われないように、と衝動的に噛み痕を残す。採取をしているせいで、牽制するための雄の香りを常に纏わせるのは難しい。
だが、彼女は俺の伴侶だ。心で決めた番だ。俺が彼女を守る。

二度目のデートで、彼女を抱きしめた。街で一番景色の良い場所で、偶然にも人の目がない時だった。
夕日に照らされる微笑んだ彼女の姿も綺麗だった。これからも俺が守りたいと強く願った。
同じ帰り道を歩いている幸せを噛みしめた。翌朝も心地よく目覚める。
調理中に背中から抱きしめると、危ないと叱られた。怒った顔も素敵だった。
我慢ができず、細い首筋を甘噛む。彼女が色っぽいため息を吐きながら身を震わせる。

「…っ、リン。あとで…料理、できない」

「はい」

赤い頬で睨まれて、欲ばかりがふくらむ。が、今は我慢。今は。
料理を手伝い、共に美味しく頂き、片付けも一緒に。
楽しい。
楽しい、が。
我慢も限界がある。諦め半分で提案したが、一緒に身を清める同意を得た。
入浴へ向かう彼女を抱き上げ、待ちきれず浴室の中に連れた。
互いに服を脱ぐと、すでに蕩けて溢れる蜜が浴室の床を濡らす。

「ぁ…っ、でも…リンが悪いのよ。リンのせいで、我慢、できなくなってる…っ。まだ、採取の時間でないのに…っ」

「我慢しなくていいので、俺はいつでもしたいです」

どこに、何をすればいいか。正面から抱きついてくる彼女が座るよう示す。

「ぃやぁ…でも、でもっ。気持ちぃいの…我慢、しても…しなくても、んぅう…っ」

体の奥まで繋がった瞬間、いつも彼女は絶頂する。
だが今は生殖のためではない。採取に関係なく行為に応じてくれるのは、なぜだろう。
道具は用意しようとしたが、珍しく彼女が断った。
彼女の背を支えようとする腕の片方が、彼女から手を繋がれた。
手を握り返すと、彼女は微笑む。

「生殖に…いらない、こと…も、したくなって…私、壊れてる…だから、命の使い方…決めた、のっ」

「フィーナは、壊れていない。けれど…したいこと、一緒にしたいです」

彼女と初めて獣らしい行為をした。触手は使わないまま、噛み痕をつけ合って、生殖行動に至る。
事を終えても繋がったままで。
自分の腕に残る控えめな痕に、思わず笑みがこぼれる。

「私の意見ばかり、押しつけていたから…これで合っているの?」

「はい。無理に合わせなくてもいいですが、嬉しいです」

「そう…これからはリンもしたいこと、言って」

家柄の違いを、上下関係を意識していないことはなかった。契約でも伴侶だから甘えてはいるが、完全に言葉で伝えるのは難しい。
だが、彼女の配慮を無視することは現状が許されず、個人としても望まない。

「はい。ありがとうございます」

彼女は満足したのか、繋がりを解いて触手による洗浄を始めた。自慰のように見える行為を見ないように背を向けた。
浴室を本来の役割で使いながら、彼女の処置が終わるのを待つ。

「終わった…けれど、身を清めるまで傍にいて。リンがベッドまで連れて行って」

「はい。フィーナの望み通りにします」

ベッドで、採取を目的とした生殖行為を行った。忘れないように、一回に一度の採取をした。
行為の後の行為のおかげか、いつもより早く終わる。
満たされたような彼女は、服を着るとすぐに眠る。
彼女にどんな変化があっても、命がある限り傍にいる。
瞼を閉じるのは惜しいが、彼女の存在を感じながら眠る。


七日に一度はデートをする約束を続けて四度目。
外出すれば誰もの視線を奪う彼女だが、俺が睨めば散っていく。
今日も同じ家から一緒に出て、同じ家に帰る幸せを楽しんだ。
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