瞬く間に住む魔

秋赤音

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合いし愛して

3.5-1 離別

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「フィー。この採取をしたら、食事にしよう」

「しょくじ…したら、採取して…っ」

採取をするということは、子作りをすること。フィーは目的を正しくわかり、僕を求める。
発情期だからか、一度ずつ確実に採取するのが良いのか。なんであれ経過は良い。
フィーの伴侶のために用意した獣と違い、信用されて拒絶されないのも当然だが嬉しい。
このまま、フィーはただ僕が与える快楽を従順に受け入れていればいい。このまま枯れるまで僕といてくれるといいのに。

フィーと過ごして2週間が過ぎた。
発情状態に慣れてきたフィーと日常を共にするのが楽しい。外出用のドレスに作選んだのは、人間社会では夜会ドレスになっている形。フィーの砂時計型の造形に映えて、フィーの美しさを引き立てる。庭で光合成のための散歩をした後の食事もとても美味しい。今日も頃合いになってきたから準備をしよう。外に出ると水と土の香りが混ざったそよぐ風が心地よい。近くに池を用意した外部の視線を遮る屋根つきの休み所で、二人だけのお茶会をするのが当たり前になりつつある。マナーは気にしないことを決まり事にした。

「フィー。約束の4週週間が過ぎてもここで僕と一緒にいよう?」

「フラン…ごめんなさい」

フィーは蕩けた表情が凍り、別人のようになる。お嬢様らしい美しい微笑みで、明らかに僕を拒んでいる。必要な栄養だけが満たされているフィーは、屋敷に来たときよりも元気に見える。半獣に合わせた食事では、フィーに合わない食材もあっただろうから当然だ。適量の肉質は必要だが、摂り方を違えたり量が過ぎれば疲れ枯れやすくなるだけだ。僕は獣と違って噛まない。痛みは与えない。与えるのは安らぎと快楽だけ。なのに、どうして。初めの約束が4週間だから?どうすれば僕といてくれる?フィーを組み敷き、布越しで体に触れる。すると応じるように体から力が抜けて、足がわずかに開く。ドレスの隙間から触手を肌へ、陰部の内側へ這わせると、すでに受粉の用意が整っている。フィーはただ雄を求める雌となっている。

「フィー…でも、僕を、求めている」

「フラン、ここは外で…ひぅっ、あっ…あっ、はっ、ぁあんっ…っ」

「僕たちは植物の遺伝子をもつ。本来は日の当たる場所で、外で暮らしていた遺伝子だ。
ここが第二の家と言ってもいい。
そうだ。ここでは初めてだけど、遺伝子の故郷で新たな遺伝子を残すのも良いよね」

「んっ、んぁっ…なに、を…地面から生えて…ぅ、ごけなぁあっ」

「問題ない。実験して安全か確認している。
ここで僕の触手を地面で育てているだけだから。フィーのナカに入れるのは僕だけだから、安心して」

「ぁ…っ、んんっ、フラン…っ、フランっ」

「僕だけを感じて。
フィー、ここにいれば心地よいだけ…望むことだけ、体に優しい暮らしができる。もう、わかっているよね」

地面から生やした触手にフィーの体をまかせて、自分で生やした触手を陰部から他へ這わせる。
ドレスの裾をまくりあげ、望み通りにオスを注ごうと生殖臓器を繋げる。フィーは悦んで絶頂し、精子を搾り取ろうとナカが吸い付いてくる。
これでいい。ここには美味しい食事と身の安全な環境があるだろう。フィー。発情期が終わったら、枯れるまで、枯れても大切にするから。
フィーが無意識に触手を生やし、地面へ伸びて根付こうとしている。生きるための衝動を手伝うため、自分もした通りに大地へ導いた。見事に根付いて育ち、母体へ伸びて支える様に感動する。フィーを長く生かせる方法の一つに進化できればいいと思う。

「フラン…っ、ベッド…ぃきたいっ」

「フィー、今日はここで採取しよう。食事も用意できるし、道具は持っているから」

「ぃやぁあっ、壊れる…っ、…私は、フィーナっ、フィーナなのっ」

「フィー。フィーナのフィーも、僕といるフィーも大切にするからね」

「ぁっ、あっ、イかないでっ、ぃっ、きたくなぁああ…っ、もうイきたくなぃいっ」

フィーが泣いている。絶頂しながら、言葉は拒んでいる。どうして。わからない。
フィーの本能は大地へ生んだ触手までも僕を求めているのに。
雄を注げば、フィーが悲鳴をあげながら強く雄を吸い尽くす。
同時に、地面へ新たな触手を生やした。そして、急激に育ち、美しい花を咲かせて実を結ぶ。

「ぁ…あ…私、私…なに、を…っ」

採取されながら、フィーは自分が行った無意識を眺めていた。
フィーは泣いている。栄養豊かな土壌に実が落ちて、新たな芽が生まれている。
フィーは感動しながら絶望している。僕だけではできなかった成果に驚く。やはり、揃わないと実を結ばないようだ。

「素晴らしい。僕だけではここまでできなかった。
フィーに似た美しい花だったね。
もう一度、見せて?望み通り、ここで射精はしない。今度は実を結ぶ前に鉢へ植え替えるから」

「ぃ、いやぁあああああっ…あっ、い、やぁっ」

花が咲くほど、フィーは淫らに僕を求める。射精を促すよう蜜を零して誘い甘く香る。
だが、射精はしない。場所を養分が豊富な池に移り、月光が差すまで行為は続いた。
花は水面の一部にも生まれ、池の周囲まで咲き乱れ、濡れたドレスをまとうフィーを飾る美しい光景になっている。僕の触手でフィーの陰部の洗浄とマッサージを行いながら、咲き続ける花を眺める。

「あ…あ、ぁ、あ…っ」

「フィー…綺麗だ。世界一美しい」

「ぁ…私、は…フィーナっ、フィーナなのぉっ」

フィーは、泣いている。どうしてだろう。そうか、採取がしたいのか。今日はまだ朝しかしていないから。

「フィー。フィーナ。採取しようか?」

「さいしゅ…採取、するっ。たくさん、するぅっ」

「フィーは。フィーナは今、誰と、何のために、採取しているのかな?」

「フランと、フィラン様と、採取…ぅっ、しているの。遺伝子を残すためにっ」

フィーは触手を強く締めつける。ついにナカで切れてしまう。
問題はないが、万が一にも苗床にされては困る。
想定より液を大量に出し始め、急ぎ回収するが、フィーは惜しむように腰を揺らす。

「あっ、ああんっ、なにっ、ぃやあっ…ぁ、あっ…しゃせい…しないのぉっ」

フィーは射精の準備だと思っているようだ。念のため僕の触手を消そうとするが、フィーの触手が繋がったので遠くに追いやった。
フィーを抱えて部屋に戻り、己の身だけで望み通りに生殖採取行為を始める。お詫びも兼ねて、フィーが満足するまで続けた。

後日。
フィーと育てた花を調べると、香りに誘淫効果があることがわかった。試しに従業員で効果を確認し、健康被害も問題なかった。
種の遺伝子を汎用型にすれば、店で使えるようになる。
僕たちの遺伝子が皆の役に立っているとフィーに使えると、フィーは静かに泣いていた。
成果を聞いたおかげか、残りの時間はフィーも積極さを増した。
当面は問題ないくらいには遺伝子を保存して、ついに別れの時が来る。フィーと僕の花が咲き誇る庭を過ぎ、来たときに通った門を閉ざした。
街へ戻る馬車の中で、発情が終わっていないフィーを触手で慰める。興奮するばかりのフィーを街へ置いて行かなければ行けない苦しさが胸を締めた。
もし、半獣がフィーを選ばなければ。
そのときは。もう、いいだろう。願うだけの実績なら、共に作ったのだから。
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