瞬く間に住む魔

秋赤音

文字の大きさ
79 / 86
合いし愛して

3.5-2 抱揺

しおりを挟む
「フラン…ごめんなさい」

蕩けた思考に残る理性の欠片が警告する。
フィーではなく、フィーナに戻って考える。
攻撃する気を消すように美しい微笑みを意識して、でも言いたいことは伝える。
だが、フィラン様は凍った表情で私をみる。
危ないと思った瞬間に組み敷かれ、ドレス越しに体へ触れる。体は慣れ親しんだように応じるように力が抜けて、足がわずかに開く。
足を閉じようとするが、ドレスの隙間から触手が肌をなぞるたびに力がなくなる。
瞬きをする間に陰部の内側まで浸食されて、雄を受け入れる用意が整っている場所を犯される。
心地よい。
すでに新しい雄が与えるのが何かを知っている体は、警戒することなく求めている。

「フィー…でも、僕を、求めている」

「フラン、ここは外で…ひぅっ、あっ…あっ、はっ、ぁあんっ…っ」

「僕たちは植物の遺伝子をもつ。本来は日の当たる場所で、外で暮らしていた遺伝子だ。
ここが第二の家と言ってもいい。
そうだ。ここでは初めてだけど、遺伝子の故郷で新たな遺伝子を残すのも良いよね」

地面から生えてきた触手が体を拘束する。フィラン様が生やした触手が陰部から他の全てを撫でる。
ドレスの裾をまくりあげられ、体が望む通りにフィラン様の精を注がれようとしている。
生殖臓器が繋がると、待っていたように絶頂し、精子を搾り取ろうとナカが蠢く。
これでいい。
目的を達成するために正しいことをしている。
ここには美味しい食事と身の安全な環境があるから、安心して励むことができる。
ここならば、たとえ枯れても、また生まれることすらできる気がする。
疲れたら、休めばいい。
少しだけ懐かしい大地へ、水辺へ帰ろう。
優しい誘導のおかげもあり、安らぐ場所へ降り立った。
ゆっくりと力も戻ってくる。
でも、いつまでも休むわけにはいかないから。
でも、動けない
どうして動けない?
生殖行為は続いていて、遠慮なく雌の本能を刺激される。

「んっ、んぁっ…なに、を…地面から生えて…ぅ、ごけなぁあっ」

揺らぐ視界で目に映ったのは、私の触手が地面に降りて、地面から生えてきていたこと。
私の触手だったものが、私の体を拘束していること。
何が起こったのか。
考える前に、まずは動かなければ。

「問題ない。実験して安全か確認している。
ここで僕の触手を地面で育てているだけだから。フィーのナカに入れるのは僕だけだから、安心して」

そうか。今はフィー。今の私はフィー。
だから、抗ってはいけない。
受け入れて、応じなければいけない。
フィーナは考えることをやめる。
考えても、抗っても無駄だと、諦めてしまった。

「ぁ…っ、んんっ、フラン…っ、フランっ」

「僕だけを感じて。
フィー、ここにいれば心地よいだけ…望むことだけ、体に優しい暮らしができる。もう、わかっているよね」

だが、少しだけ。納得できなくなった。
フィーナは植物の遺伝子をもつが、あくまで人間だ。
いくら大地の気配が心地よくても、私は人間だから。
せめて、人間らしく交尾がしたい。

「フラン…っ、ベッド…ぃきたいっ」

「フィー、今日はここで採取しよう。食事も用意できるし、道具は持っているから」

「ぃやぁあっ、壊れる…っ、…私は、フィーナっ、フィーナなのっ」

抗う。
抗わなければ、と強く思う。
だが、与えられる快楽が理性を壊していく。

「フィー。フィーナのフィーも、僕といるフィーも大切にするからね」

「ぁっ、あっ、イかないでっ、ぃっ、きたくなぁああ…っ、もうイきたくなぃいっ」

懇願した。
絶頂しながら、拒絶して懇願する。
だが、雄の精が注がれた。
よく知った、覚えてしまった感覚が怖い。
与えられた雄の精を吸い尽くすと、触手が暴走した。
地面へ新たな触手を伸ばした。繋がりを断つが、大地に根付いた触手が急激に育ち、美しい花を咲かせて実を結ぶ。
なにが起こった?

「ぁ…あ…私、私…なに、を…っ」

「素晴らしい。僕だけではここまでできなかった。
フィーに似た美しい花だったね。
もう一度、見せて?望み通り、ここで射精はしない。今度は実を結ぶ前に鉢へ植え替えるから」

採取されながら、私が行ったなにかを眺めていた。眺めるしかできなくて。
涙が出るたび、栄養豊かな土壌に実が落ちて、新たな芽が生まれている。
私が、私たちは子を成したのだろうか。
きっと素晴らしいことだろう。
だが、どうして相手が。
リンとなら、素直に嬉しく受け入れられたのだろうか。
いいえ。きっと無理だった。
生まれたのは植物だから、触手が受粉して新たな命を生んだのなら。
私は、なんだ。
私は人間。触手を使えるだけの、人間。だと、思いたい。

「ぃ、いやぁあああああっ…あっ、い、やぁっ」

花が咲くほど、理性が消える。
まるで花になったように、雄の精が注がれるよう蜜を零して誘う。
だが、射精はされない。場所が池に移され、月光が差すまで行為は続いた。
花は水面の一部にも生まれ、池の周囲まで咲き乱れる。
綺麗だった。
咲いた理由を知らなければ、綺麗だと思えるものだった。
触手の暴走が咲かせた花の一部が、フィラン様の触手と交配している。
私の体はいつものようにフィラン様の触手で手入れをされながら、咲き続ける花を眺める。

「あ…あ、ぁ、あ…っ」

望みが絶える。

「フィー…綺麗だ。世界一美しい」

個性ある人間でありたいと願うのに。

「ぁ…私、は…フィーナっ、フィーナなのぉっ」

フィーナが薄れていく。
異端な存在になりつつある私を肯定されて、悦ぶ私がいる。

「フィー。フィーナ。採取しようか?」

「さいしゅ…採取、するっ。たくさん、するぅっ」

採取。遺伝子を残すための生殖行為。フィラン様といる目的だ。
道具を使いきれば、早く解放されるかもしれない。

「フィーは。フィーナは今、誰と、何のために、採取しているのかな?」

「フランと、フィラン様と、採取…ぅっ、しているの。遺伝子を残すためにっ」

でも、少し疲れてしまった。
体が生殖行為に応じるよう、わずかに戻った理性を捨てた。
次に目覚めるときは、フィラン様の香りが離れてからがいい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

処理中です...