瞬く間に住む魔

秋赤音

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合いし愛して

5-1 両想い

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フィーナと再会して6か月リンと再会して6か月が過ぎた。
穏やかな日々が続くと、虚しく奇跡を願ってしまった。
わかっていた。
でも、フィーナと過ごす時間に終わりの気配がすると辛くなる。リンと生きられる時間は思っていたよりも少ないのが悲しい。
ついに宣告された期日余命を大切に、できる限りを共に過ごす。
しかし、求めるものは当たり前の日常だけ。
知らないことを分かち合い、同じ景色を見て互いの感性で語り合う。
穏やかで、温かく、痛みまで分け合って、心通う時間を、少しでも長く。
俺たち私たちはこれでいい。
愛している。
愛している。
最後まで、生き別れても、フィーナリンを愛している。

夜ごとに交わり採取をする。
フィーナの細い体は日ごとに弱っていく。
互いに時間を惜しみながら、なにかに縋るように触手も使った体全てで、愛し合う。
フィーナの拍動を感じながら目覚めるリンリンの温もりに包まれて目覚めるフィーナは、安堵して身を寄せ合う。
涙の一滴までキスで吸い合って、昨日という1日の終わりと今日という始まりを祝う。

「「おはよう」」

重なる声に思わず瞬いて、惜しみながら離れて身を起こす。
必ず互いの気配が感じられる距離感で過ごす時間でしか安心できない。
そうまでしても安心しきれないのは、離れても必ず同じ場所に揃うのが当たり前と思えないから。
誰かが呑気に心配症と言ったとしても、俺たち私たちはこれでいい。

ある日。
フィーナが実家に呼び出された。
宣告されたとおりの5日後に帰ってきたが、元気になっているフィーナから思い出したくない香りをまとう。
消えたフィーナと再会した苦い記憶を思い出す。

フィーナが戻らないまま1ヶ月になった頃。
同じ頃に出会ったラフィーナと共に外出して街に出たが、別行動の後の待ち合わせに来ない。
すれ違ってはいけないと待っていると、近くで悲鳴が聞こえたので走る。
途中、ぶつかったフィーナを抱き寄せると、フィーナに混じる知らない香りに苛々する。
が、自分も同じだと気づき言葉を飲んだ。
同時に悲鳴の主がラフィーナだと気づいたが、声が遠くなった先を見てもすでに何処かへ消えていた。

「フィーナ、このまま帰りますか?買い物があれば言ってください」

「帰っていいの?」

「俺たちの家ですよね」

「そうね。私たちの家よ」

俺は悲鳴を聞かなかった事にしてフィーナと家に帰った。偶然に出会った人だから、偶然に別れるのも良いと思った。

あれから1年過ぎ、フィーナは3ヶ月に一度は実家へ行くようになった。
1か月すれば元気になって必ず帰ってくる。
俺はフィーナと俺の家で待っている。
一人の時間も考え方を変えて寂しさも凪いだ気持ちで受け入れられるようになった。
フィーナが帰った時も快適に過ごせるように手入れをして過ごす。
「必ず帰る」と言うフィーナを待てるのは、俺だけだから。と言い残して出かけられるのは、リンが待っているから。
「ただいま」と「おかえり」をあと何度繰り返せるだろう。
これが最後かもしれないと思いながら、次もあってほしいと願う瞬間に愛しい人を想う。
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