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93. 岐路に立つ
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「い、いえ、あの・・、こちらこそ離れの庭を案内してくれると言ってくれてたのに、眠ってしまってすみませんでした」
「離れはまたの機会にしましょう」
若頭は小さく微笑んで言ってくれた。
「はい。ありがとうございます」
「何かあったらいつでも声をかけてください。インターホンは会長と俺に繋がるように設定してあります。直接部屋に来てもらってもかまいません。会長の部屋はわかると思いますが・・」
「はい。ここから見えてる確かあの辺の扉の部屋かと思います」
以前部屋を訪ねたときは案内されて行ったから意識してなかったけど、扉が全部同じでどこがどれだかよくわからない。でもたぶん正解のはず。
「そうです。あの辺の部屋の前で声をかければ本人が出て来ますから。俺の部屋はこの廊下の突き当たりです」
え?
若頭の部屋?
「突き当たりって・・」
「そこです。白木のドアの」
「・・・・・」
近い━━━━━━っっ
社長にばれたら超睨まれそう━━━っっっ
「お、ぉ、お気遣いありがとうございます・・・」
若頭はわたしの顔をみてまたクスッと笑った。
まずい。心を読まれたか。
「室内にある飲み物も食べ物も自由に手をつけてください。厨房にも24時間必ず人がいますから、インターホンの【厨房/Kitchen】でいつでも頼んでください」
もしや高級ホテルよりすごいのでは?
高級ホテル泊まったことないけど。
「な・・何から何までありがとうございます・・」
無心だ無心。南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経・・。
「それでは、おやすみなさい」
「お、おやすみなさい・・・」
そう言って、わたしはドアを閉めた。
・・・若頭、最後まで笑ってたな。
お経を唱えていたのも彼にはわかってしまったのか。
それにしても門番の人だけじゃなく厨房まで24時間体制とは・・。
組長先生が夜中にお腹空くとか。
意外と若頭かもしれない。夜中も仕事してそうだし。
部屋のインターホンはモニター付きで、いくつかのボタンがあった。
【扉/security】は部屋のドアの開閉。
【厨房/Kitchen】は厨房に繋がるんだな。
赤いボタンは【緊急/emergency】非常時。押してみたくなるが押してはいけない。このお屋敷ではシャレにならない行為だ。
強面の男達全員集合になる。
それ以外はどこを押しても組長先生か若頭に繋がってしまう設定をしたらしい。
停電時は自家発電に切り替わる。
独自のセキュリティシステムを持っている組長先生のお屋敷。
わたしはここで生きていくんだ
新しい家族と・・
不安は常に頭を掠めていく。
その度に、後戻りはできないと何度も自分に言い聞かす。
社長にはなんて言おう。
ありのままを言うしかない。
例え睨まれても嫌みを言われても。
翌朝、朝食時に、組長先生から仕事が終わったら屋敷に帰ってきてほしいと言われた。
手続きの件もあるが、住んでいる家をどうするか相談したいとのことだった。
お母さんが買ったわたし達の家。
いまはわたししかいない家・・。
わたしも相談はしたかったが、簡単に家を留守にするわけにはいかなかった。
わたしは、少なくとも今日明日は家に帰りたいこと、お屋敷で暮らすなら社長にも養子縁組の報告をしてからにしたいと伝えた。
回覧板がくるかもしれないから、お隣の岸辺さんに伝えておかないといけないし、いきなりいなくなってたら岸辺さんも心配するだろうし。
良好な近所づきあいをしてくれている岸辺さんに迷惑をかけたくない。
それに冷蔵庫の食品類。
できるだけ食べてしまいたい。
その上で残ってしまったものは処分しよう。
最近買うのをセーブしてたからそんなに処分品は出ないと思うけど。
組長先生は、社長にはこっちから話しを通すと言ってくれたが、わたしは明後日の本店勤務の日に自分で伝えたいと答えた。
甘えてばかりいられない。
若頭と組長先生が車で支店まで送ってくれるといった。
玄関から出ると、昨日から降り続いている雨は少しだけ小降りになったのがわかった。
用意された左ハンドルの黒い車。
車種はわからないが最近この車に乗ることが多い。
そういえばわたしの自転車はどこだろ?
わたしの愛車。お母さんと色違いの。
見当たらない。
どこか別の場所に置いてあるのかも。
車に乗ると、組長先生から「さっきはどうした?キョロキョロしてたな」と声をかけられた。
「自転車・・、どこかなって思って・・」
「自転車なら玄関の横の専用の置き場にあるぞ。安心しろ。三上がライトに破損があるから直したいっていってたんで直させたが」
「あ、風で何回か転んで・・。直そうと思ってました。お巡りさんに注意されて。ありがとうございます」
「いまは自転車も厳しくなりましたから。取締りの対象でしょう?」
「はい。暗くなったらライトは必ずつけてくださいと言われました」
他愛ない話をしているうちに、窓の外はいつの間にかよく知った住宅街を走っていた。
右に曲がるとわたしの家に続く道だ。
左に曲がると市の繁華街と駅に続く道だ。
車は左に曲がった。
反射的に、わたしは家のある右側の道を見た。
今日仕事が終われば、わたしは家に帰るのだが、わたしの自転車はもうあの家に帰ることはないのだろうと感じて、寂しく思った。
「い、いえ、あの・・、こちらこそ離れの庭を案内してくれると言ってくれてたのに、眠ってしまってすみませんでした」
「離れはまたの機会にしましょう」
若頭は小さく微笑んで言ってくれた。
「はい。ありがとうございます」
「何かあったらいつでも声をかけてください。インターホンは会長と俺に繋がるように設定してあります。直接部屋に来てもらってもかまいません。会長の部屋はわかると思いますが・・」
「はい。ここから見えてる確かあの辺の扉の部屋かと思います」
以前部屋を訪ねたときは案内されて行ったから意識してなかったけど、扉が全部同じでどこがどれだかよくわからない。でもたぶん正解のはず。
「そうです。あの辺の部屋の前で声をかければ本人が出て来ますから。俺の部屋はこの廊下の突き当たりです」
え?
若頭の部屋?
「突き当たりって・・」
「そこです。白木のドアの」
「・・・・・」
近い━━━━━━っっ
社長にばれたら超睨まれそう━━━っっっ
「お、ぉ、お気遣いありがとうございます・・・」
若頭はわたしの顔をみてまたクスッと笑った。
まずい。心を読まれたか。
「室内にある飲み物も食べ物も自由に手をつけてください。厨房にも24時間必ず人がいますから、インターホンの【厨房/Kitchen】でいつでも頼んでください」
もしや高級ホテルよりすごいのでは?
高級ホテル泊まったことないけど。
「な・・何から何までありがとうございます・・」
無心だ無心。南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経・・。
「それでは、おやすみなさい」
「お、おやすみなさい・・・」
そう言って、わたしはドアを閉めた。
・・・若頭、最後まで笑ってたな。
お経を唱えていたのも彼にはわかってしまったのか。
それにしても門番の人だけじゃなく厨房まで24時間体制とは・・。
組長先生が夜中にお腹空くとか。
意外と若頭かもしれない。夜中も仕事してそうだし。
部屋のインターホンはモニター付きで、いくつかのボタンがあった。
【扉/security】は部屋のドアの開閉。
【厨房/Kitchen】は厨房に繋がるんだな。
赤いボタンは【緊急/emergency】非常時。押してみたくなるが押してはいけない。このお屋敷ではシャレにならない行為だ。
強面の男達全員集合になる。
それ以外はどこを押しても組長先生か若頭に繋がってしまう設定をしたらしい。
停電時は自家発電に切り替わる。
独自のセキュリティシステムを持っている組長先生のお屋敷。
わたしはここで生きていくんだ
新しい家族と・・
不安は常に頭を掠めていく。
その度に、後戻りはできないと何度も自分に言い聞かす。
社長にはなんて言おう。
ありのままを言うしかない。
例え睨まれても嫌みを言われても。
翌朝、朝食時に、組長先生から仕事が終わったら屋敷に帰ってきてほしいと言われた。
手続きの件もあるが、住んでいる家をどうするか相談したいとのことだった。
お母さんが買ったわたし達の家。
いまはわたししかいない家・・。
わたしも相談はしたかったが、簡単に家を留守にするわけにはいかなかった。
わたしは、少なくとも今日明日は家に帰りたいこと、お屋敷で暮らすなら社長にも養子縁組の報告をしてからにしたいと伝えた。
回覧板がくるかもしれないから、お隣の岸辺さんに伝えておかないといけないし、いきなりいなくなってたら岸辺さんも心配するだろうし。
良好な近所づきあいをしてくれている岸辺さんに迷惑をかけたくない。
それに冷蔵庫の食品類。
できるだけ食べてしまいたい。
その上で残ってしまったものは処分しよう。
最近買うのをセーブしてたからそんなに処分品は出ないと思うけど。
組長先生は、社長にはこっちから話しを通すと言ってくれたが、わたしは明後日の本店勤務の日に自分で伝えたいと答えた。
甘えてばかりいられない。
若頭と組長先生が車で支店まで送ってくれるといった。
玄関から出ると、昨日から降り続いている雨は少しだけ小降りになったのがわかった。
用意された左ハンドルの黒い車。
車種はわからないが最近この車に乗ることが多い。
そういえばわたしの自転車はどこだろ?
わたしの愛車。お母さんと色違いの。
見当たらない。
どこか別の場所に置いてあるのかも。
車に乗ると、組長先生から「さっきはどうした?キョロキョロしてたな」と声をかけられた。
「自転車・・、どこかなって思って・・」
「自転車なら玄関の横の専用の置き場にあるぞ。安心しろ。三上がライトに破損があるから直したいっていってたんで直させたが」
「あ、風で何回か転んで・・。直そうと思ってました。お巡りさんに注意されて。ありがとうございます」
「いまは自転車も厳しくなりましたから。取締りの対象でしょう?」
「はい。暗くなったらライトは必ずつけてくださいと言われました」
他愛ない話をしているうちに、窓の外はいつの間にかよく知った住宅街を走っていた。
右に曲がるとわたしの家に続く道だ。
左に曲がると市の繁華街と駅に続く道だ。
車は左に曲がった。
反射的に、わたしは家のある右側の道を見た。
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