【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

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118. 女神 (2) 繋がり

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「ドローンは積んでこなかったのか?」
「積んできませんでした。すみません」
「山の仕事にはドローンを積むようにしてくれ」
「分かりました。今持ってこさせます」
三上が電話で待機の部下に呼び出しをかけた。

「待機場所には通じますね」
《村井です》

通じた。さっき矢口の携帯には通じなかったのに。

「三上だ、いますぐ・・」
三上が通話を始めてすぐだった。

京司朗の耳にこだまが届いた。
人の叫び声だ。
通話中の三上にも届いたようだ。

京司朗と三上が顔を見合わせた。

━━━━矢口か高城か

京司朗はすぐに車に積んであるライフルと弾倉を手にし、
「ドローンが着いたら飛ばしてくれ!」
そう言い残して矢口と高城が消えた方向へ駆け出した。
「仙道さん!!俺も・・・!」
三上の言葉を無視して京司朗は濃い霧のなかに姿を消した。
「・・・クソッ!」
仙道京司朗あのひとはいつもそうだ。
命の危険など省みず自らが先頭に立つ。突っ込んで行く。

手にしたままの電話から三上を呼ぶ村井の声が続いていた。
《三上さん!?三上さん!!》
「トラブルだ!!ドローンを持って何人か来てくれ。ライフルも忘れるな!!」
《既に川田と山本が行きました!俺と最上ですぐにドローンを持っていきます!》
三上は電話を胸ポケットに入れるとライフルを手にした。

━━━━俺は部下を裏切らない仙道京司朗あんたの下で働くのを誇りに思っている。だからこそあんたに命をかけるんだ。けれどあんたはこうして自分の命をさっさと捨てる行為に走ってしまう。

どうして・・
どうしていつも独りで無茶をするんだ・・!






みふゆと貴之を乗せた迎えの車は京司朗のマンションを出て、国道を走っていた。
国道に繋がる脇道がまだ冠水のままの道路もあるために、国道は混みあっていた。二つ目の信号でとまったまま、十分がたっている。
スムーズに走れるならプラザまで約30分だが、車の混み具合からすると1時間ちょっとはかかりそうだ。

運転している桐島がバックミラーを覗き、
「大丈夫ですか?」
と、貴之に聞いた。
後部席でみふゆが眠っている。
みふゆは車に乗って間もなく眠ってしまった。
「ん・・そうだなぁ・・」
貴之が心配そうに眠っているみふゆの髪をいた。
「顔色があまり良くないように見えますけど」
「お前もそう思うか?」
「はい。まあ、女性だからいろいろあるとは思いますが・・、うちの女房も妊娠前は毎月辛そうでしたから。本人は慣れてるから大丈夫だって言うんですけどね」
「今日は手伝い止めさせるか・・」
「マンションに戻りますか?屋敷のほうにも戻れるっちゃあ戻れますけど・・」
「道はもう通れるのか?」 
「まだ多少ガタつきますが通れます。流れてきた木材の運びだしは終わってますから」
「なら屋敷に戻ってくれ。屋敷にゃ楓もいるしな。京司朗のマンションじゃあ落ち着かねえだろう」
貴之が言うと、みふゆを乗せた車は駅前プラザには向かわず、国道から山手への道に入っていった。





ガツッ!!と、矢口の頭にこぶしが下ろされた。
「い・・・・!!!」
頭を抱えてしゃがみこむ矢口は涙目だ。
「ひ、ひでえッスよ、高城さん」
「何がひでえだこのチンカスが!!」
「チ・・、傷ついたッス、俺・・もう泣いちゃいますよ・・・」
「傷ついたついでに傷口えぐってやろうかこの」
「・・・」
矢口が高城を見上げ、話すのを止めるよう促した。人差し指を唇にあてている。
高城が周囲の異変に気がついた。

唸り声がした。霧の中にうっすらと姿が見える。

「・・シェパード・・・?」

矢口は背中のライフルを手に持ちかえ、高城の前に出た。

「矢口」
「大丈夫ッス。二頭くらい」
「バカ野郎。周りをよく見ろ」
濃い霧の中、他に大型犬が三頭いる。
「━━━━」
「朝メシにしたいみたいだぜ、俺達を」

矢口と高城は五頭の野犬に囲まれてしまった。みな、大型だ。外見がドーベルマンやシェパードなどに似ている。

「なんでこんなにいるんスかね」
「捨てられたのが生き残って繁殖したんだろうな。こっちにいる三頭はあきらかに雑種だ。・・俺もライフル持ってくりゃよかったぜ」
高城は矢口と隙を見せないように立ち位置を背中合わせに変えた。
「そうッスよ!何やってんスか、ホントに・・」
「お前に言われたかねえよ!お前だけにはな!!」
高城がわずかに目線を矢口を向けた瞬間、一頭の野犬が高城に飛びかかった。それを合図に、他の犬もいっせいに二人に飛びかかった。



バーンバーンバーンと、三発の銃声が響いた。ライフルは矢口が持っている。矢口がこの近くにいる。
「矢口!!」
京司朗が矢口の名を叫ぶと、
「仙道さん!?来ないでくれ!!大型犬だ!!野生化した集団に囲まれている!!」
高城の声がした。

━━━━犬?

京司朗は足をピタリと止めた。

後ろに気配がする。

━━━━犬か?

歩く音だ。

━━━━犬じゃない、こいつは・・・!


巨大な黒い影が京司朗に向かって腕を振り下ろそうとしていた。




屋敷に向かっていたみふゆと貴之を乗せた車は国道の混雑を逃れ、緩やかな上り坂を走っていた。

「う・・ん・・・うぅ・・・」

みふゆが苦しげに声をあげた。

「みふゆ?みふゆ、大丈夫か?!」

「うう・・・ん・・・・うぅ・・」
みふゆが頭をしきりに左右に振り、額から汗が流れ落ちる。
「みふゆ?おい、しっかりしろ!みふゆ!」

桐島はみふゆの様子から、
「会長、病院に向かいます。惣領家うちの総合病院が近いです」と貴之に告げた。
桐島はゆっくりとブレーキをかけ、車を一度路肩に停めた。と同時に、

「ダメ!!危ない!!若頭危ない!!」

みふゆは悲鳴をあげ、京司朗の危険を感知し飛び起きた。








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