【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

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122. 判断ミス

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「え?でも・・」
内田茉矢は大塚の顔を見上げ、
「治療中は例え家族のかたでも入室はさせないことになっていて・・」と、困惑した。
「もう終わってる。貴之、入っていいぞ」
大塚が貴之に言った。

京司朗が車椅子から立ち上がろうとした。
内田茉矢が気づいて京司朗に走りより、
「ダメです!あなたは怪我人なんですよ!」と立ち上がりを制止した。

「座ったままでいい」
貴之は京司朗の前に立ち見下ろした。

静かな怒りの気配を感じる。


バシンッ!


平手打ちの音が響いて室内はシンとした。
京司朗の右頬に赤みが帯びる。

怪我をした左側は殴らなかったな━━と、
大塚だけが壁に寄りかかって涼しい顔で眺めていた。

男性看護師と女性看護師の内田はあっけにとられている。しかし内田は、
「な・・、何をするんですか!大怪我をしてるんですよ!いくら家族でも許せません!」
と、大声を出した。

急な内田の言動に、大塚が「チッ」と舌打ちをした。
貴之が内田に疎んじた視線を送ると、内田茉矢は続けて、
「あなたがどれだけ偉い人か知りませんが睨まれても私はあなたなんか怖くありません!!」
と貴之にくってかかり、身を挺して京司朗をかばった。

みかねた大塚が、
「バカやろう!!」と、内田を怒鳴った。

大塚は内田の腕を掴むと力づくで京司朗の前からどかそうとした。内田が抵抗する。
「離してください!家族といえどわたしは怪我をした患者さんにこんな暴力を振るうなんて許せません!許しちゃいけないんです!」
内田の抗議に大塚はつかんでいた腕を乱暴に放った。小柄な内田は勢いで壁にぶつかり「キャッ」と小さな悲鳴をあげた。

「何様のつもりだお前は!勘違いすんな内田。お前の安くさい正義感なんざ必要ねえ!文句があるならさっさと辞めろ!」
「そんな・・!」
内田は大塚をあらんかぎりの力で睨み唇を噛むと、「わ、私を雇っているのは本郷二条総合病院です。大塚先生じゃありません。大塚先生には私に退職を勧める権限もクビにする権限もないはずです。・・・でも、・・申し訳ありませんでした。出過ぎた真似をしました」
内田は深く頭を下げて謝罪し、うつむきながら「病棟勤務に戻ります」て言って場を去った。


内田と入れ替わりに救急外来の看護師が交通事故の患者が運ばれてきたことを知らせにきた。
大塚は治療室をあけるため、「揉め事は病室でゆっくりやってくれ」と貴之と京司朗を追い出した。


京司朗の病室は特別室と言われる九階にある部屋だ。一般人は立ち入り禁止で、医者と担当看護師しか入棟できない。往来も専用エレベーターがあり、警備員が立ち、乗り込みを管理している。

特別室は約60㎡の広さで、冷蔵庫・テレビ、ネット環境が整えられており、バス・トイレ・クローゼットルーム等がついている。ホテルのジュニアスイートのレベルの設備がついている。

ただしベッドは医療用の電動ベッドで、リモコンで高さが変えられ、頭部のリクライニングなどができる。

男性看護師の鳥谷部がベッドに移動する京司朗を支えようとしたが、京司朗は断った。
貴之は、「あんまり優しくするこたぁねえぞ。そいつの怪我は自業自得だ。せいぜい痛がらせておけ」と勝手な言い分を展開した。看護師は京司朗を見守ることだけに徹し、「食事は12時にお持ちします。何かあったらコールを押してください。それでは失礼します」と一礼し、出ていった。

「あのチビの看護師に話の腰を折られたが・・京司朗」
「はい。油断しました。判断を誤りました」
「・・・京、それだけじゃ無え。てめぇは自分の行動がどれたけみふゆの恐怖を煽ったかわかって無えんだよ」
京司朗は貴之の言わんとすることがわからなかった。何故みふゆの名が出てくるのか。
「みふゆの具合がよくない」
「・・・何故・・」
「お前が熊に襲われるのを視ていたからだ」

京司朗は目を見張った。

貴之が車内での出来事を話しはじめた。









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