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123. 下心を持つ女 (1)
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内田茉矢は少しばかり後悔していた。
大塚医師ともめてしまった。
内田は本郷二条総合病院の看護師として雇用されたが、本当の希望雇用先は大塚クリニックだった。
大塚クリニックは求人が出ない職場だ。調べてみたら本郷二条総合病院を経由して大塚クリニックに採用されることがわかったのだ。
内田はため息をついたが、自身に『大丈夫』という言葉を投げかけた。
━━━━きちんと謝罪したし、大塚先生だってきっとわかってくれたはず。
内田は気持ちを切り替えて担当の病室を訪れた。
「もう!没収です!ホントに今度という今度は許しませんからね!わかってるんですか?!佐藤さん!」
内田茉矢の言葉は注意を促しているが、決して怒っているわけではないと誰もがわかる。
「わかったわかったわかったってば、かなわねぇなぁ、茉矢ちゃんにはさ」
患者の佐藤はたじろぎながら、隠していた残りの日本酒の小瓶を差し出した。
「しっかしいつ見ても背が小せえなあ。22歳には見えねえよ」
と、佐藤はうんうんとうなずいて負け惜しみを内田茉矢に言った。
「佐藤さん!一言多いですよ!」
内田が言うと、病室内は笑いに包まれた。
整形外科病棟に戻った内田茉矢は、担当の四人部屋の病室で患者から採血をしていた。たまたま佐藤という患者から酒のにおいがして問い詰めたところ、佐藤が白状したのだ。
内田は、どんなに機嫌の悪い患者、人見知りの患者でも、多彩な話題と話術でいつの間にか相手の機嫌をとってしまう特技を持っていた。
背が152センチと小柄なのもあって、患者達からは『小さいのに一生懸命頑張っている』と見られる、患者受けの良い看護師のひとりだった。
物怖じせず、患者を第一に考える姿勢は、雇用主や上司から煙たがられることもあるが、患者からは好かれるのだと自覚している。患者から好かれることを自分の長所としてとらえているし、できる自分を自尊している。
内田茉矢は3ヶ月ほど前から本郷二条総合病院に勤めている。試用期間もそろそろ終わり、正式な採用となるかどうかの瀬戸際の時期だった。
自分の勤めたい職場は大塚クリニックだが、まずは本郷二条総合病院に採用されなければならない。
「いたいた。茉矢ちゃーん」
患者の佐藤が看護師の詰所を訪れた。
「どうしたんですか?」
内田はパソコンから顔をあげ、保存を押して応対をした。
「帰る前でいいからさ、マッサージ頼めないかなぁ?」
「リハビリ受けてますよね?」
「そうなんだけど、夕方くらいからだるくなってくるからさぁ。ほら、あの人、小西さんだっけ?彼女に頼んでもらえないかな?マッサージがうまいからさ」
「やってもらったことあるんですか?」
「夕方からだるくなるって言ったら一昨日マッサージやってくれてさ。あのあとすごく楽になって夜、グッスリ眠れたんだよ。だからさ、・・お願い!頼んでくれ!」
「うーん、そうですね。やってもらったことがあるなら・・頼んでみますね!」
内田はニッコリ笑った。
「さんきゅ!やっぱ茉矢ちゃんは頼りになる!チビだけど!」
「佐藤さん!一言多い!」
佐藤は笑って機嫌よく病室に戻っていった。
夕方にマッサージか・・。悪いことではないが、仕事の範囲を超えてるのではないかと内田は思った。個人的な考えでそんなことを続けていたら、患者はどんどん甘えてくるし、欲求も高くなってくるだろう。それでは患者と看護師、双方のためにならない。
━━━━少し注意したほうがいいのかな?でも彼女のほうがずっと先輩だし・・・。
言うしかないか、と内田は思った。正しいことには、先輩も後輩もないだろう。
「マッサージ?」
廊下で小西理保が振り向いて言った。
小西理保は内田よりふたつ年上の24歳。髪をきっちりだんご状にまとめてるせいか、もっと年上に見える。
看護大学を卒業後すぐに本郷二条総合病院に採用されている。
「佐藤さんが夕方頼みたいって。一昨日マッサージしてもらったのがすごくよかったって言ってて」
「ああ、一昨日のは・・」
小西が言いかけたのを内田が遮った。
「小西さん、夕方のマッサージって看護師の仕事の範囲を超えてるんじゃないですか?患者さんの言うとおりになんでもしてあげるのは優しさとは違いますよ?自分だけがやるならいいかもしれないけど、小西さんがいない時に他の看護師にマッサージしてくれって頼むようになると思います。気をつけたほうがいいと思います。じゃあ佐藤さんのことは伝えたのであとはよろしくお願いします」
一方的な言い方だと内田は思ったが、ハッキリ言わなくては伝わらない。嫌われるかもしれないし悪く思われるかもしれないが、看護師全体のことを考えると言わざるを得ないと内田は思っていた。
「あのさ、リハビリの先生には聞いた?」
「いえ。佐藤さんは小西さんに頼んでましたから」
「あたしが一昨日マッサージをしたのは、リハの先生に佐藤さん自身でできるように指導してくれって言われたからよ」
「佐藤さんそんなこと言ってなかったです。それならちゃんと佐藤さんに伝えればよかったじゃないですか?」
「伝えたわよ」
「え?」
「それより患者からマッサージ頼まれたら主治医かリハの先生に確認とるのが先じゃない?過剰にマッサージして悪化したらどうする気だったの?」
「こ、小西さんがやってあげてたんでしょ?」
「だからあたしはリハの先生に頼まれたって言ったでしょ?どの程度のマッサージをどうやったらいいか、先生と相談したあとに行ったのよ」
「あ・・、じゃあ、そういう風に改めて説明してあげてください」
「なんの確認もせずに引き受けたのはあなたでしょう?リハの先生に経緯を説明してあなたが佐藤さんに説明すれば?」
「私、帰りは用があって・・」
「帰りじゃなくてもいまリハの先生のとこに行きなさいよ。先生いるわよ?」
「私、今は患者さんの・・」
「昼休みでもいいじゃない。帰りまでには時間たっぷりあると思うけど?」
小西はプイッと内田から顔を反らし足早に詰所に戻っていった。
内田はそれ以上は何も言えずに自身も詰所に戻った。
「ねー、このパソコン、誰か使った?」
鳥谷部の声がした。内田が使っていたパソコンだった。
「はい。私が使ってました」
詰所に戻った内田が名乗ると周囲がしんとした。
「このパソコン、特別室専用って知ってた?」
鳥谷部がなかばあきらめ顔でため息をついた。
「は、はい。でも他のと同じように使えると」
「使えるわけないでしょ。専用の意味知らないの?」
小西が後ろで言った。
内田は顔がカッと熱くなるのを感じた。
「あの、もしかして私が使ったせいで何か・・」
「何かじゃないよ。俺が入力したぶん全部消えてるんだけど」
「え・・?あ、あの、私、よく知らなくて・・・」
「知らないってこわーい」
小西の嫌味めいた発言に、周囲がクスクス笑った。
小西はすぐさま特別室の専用パソコンの前に座り、カタカタと操作を始めた。
最後にタンッと軽くキーボードを押すと、鳥谷部が入力した分がほぼ全部出てきた。
「すっげ!さすがお局様候補!」
鳥谷部が小西をからかうと、「うっさい!」と鳥谷部にひじ鉄をくらわせた。周囲がどっと笑ったが、内田一人が輪のなかに入っていけなかった。
内田は「今後は気をつけます」と頭を下げ、詰所を出た。
内田は無性に恥ずかしさと悔しさを感じた。
何もあんな言い方しなくても、と小西を恨んだ。
理由も知らず突っかかっていったのは自分のほうだということを忘れて、内田の心は自分の正当性だけを照らしている。自分は悪くないはずだ。マッサージの件も、小西がすんなり引き受けてくれればよかっただけのことだったし、パソコンも専用であることの意味を少しばかり把握しきれていなかっただけだ。
失敗は誰にでもあるのに、何故自分だけが人前で恥をかかされなければならないのか。
無性に悔しい。
誰もかばってくれなかった。
味方が欲しい。
どんな時でもかばってくれる、自分だけの強い味方が。
病院の裏側、人の来ない場所で内田は涙をこぼして深呼吸を繰り返していた。
声がした。
内田はそっと耳をそばだてた。
大塚と、惣領貴之が話をしていた。
内田茉矢は少しばかり後悔していた。
大塚医師ともめてしまった。
内田は本郷二条総合病院の看護師として雇用されたが、本当の希望雇用先は大塚クリニックだった。
大塚クリニックは求人が出ない職場だ。調べてみたら本郷二条総合病院を経由して大塚クリニックに採用されることがわかったのだ。
内田はため息をついたが、自身に『大丈夫』という言葉を投げかけた。
━━━━きちんと謝罪したし、大塚先生だってきっとわかってくれたはず。
内田は気持ちを切り替えて担当の病室を訪れた。
「もう!没収です!ホントに今度という今度は許しませんからね!わかってるんですか?!佐藤さん!」
内田茉矢の言葉は注意を促しているが、決して怒っているわけではないと誰もがわかる。
「わかったわかったわかったってば、かなわねぇなぁ、茉矢ちゃんにはさ」
患者の佐藤はたじろぎながら、隠していた残りの日本酒の小瓶を差し出した。
「しっかしいつ見ても背が小せえなあ。22歳には見えねえよ」
と、佐藤はうんうんとうなずいて負け惜しみを内田茉矢に言った。
「佐藤さん!一言多いですよ!」
内田が言うと、病室内は笑いに包まれた。
整形外科病棟に戻った内田茉矢は、担当の四人部屋の病室で患者から採血をしていた。たまたま佐藤という患者から酒のにおいがして問い詰めたところ、佐藤が白状したのだ。
内田は、どんなに機嫌の悪い患者、人見知りの患者でも、多彩な話題と話術でいつの間にか相手の機嫌をとってしまう特技を持っていた。
背が152センチと小柄なのもあって、患者達からは『小さいのに一生懸命頑張っている』と見られる、患者受けの良い看護師のひとりだった。
物怖じせず、患者を第一に考える姿勢は、雇用主や上司から煙たがられることもあるが、患者からは好かれるのだと自覚している。患者から好かれることを自分の長所としてとらえているし、できる自分を自尊している。
内田茉矢は3ヶ月ほど前から本郷二条総合病院に勤めている。試用期間もそろそろ終わり、正式な採用となるかどうかの瀬戸際の時期だった。
自分の勤めたい職場は大塚クリニックだが、まずは本郷二条総合病院に採用されなければならない。
「いたいた。茉矢ちゃーん」
患者の佐藤が看護師の詰所を訪れた。
「どうしたんですか?」
内田はパソコンから顔をあげ、保存を押して応対をした。
「帰る前でいいからさ、マッサージ頼めないかなぁ?」
「リハビリ受けてますよね?」
「そうなんだけど、夕方くらいからだるくなってくるからさぁ。ほら、あの人、小西さんだっけ?彼女に頼んでもらえないかな?マッサージがうまいからさ」
「やってもらったことあるんですか?」
「夕方からだるくなるって言ったら一昨日マッサージやってくれてさ。あのあとすごく楽になって夜、グッスリ眠れたんだよ。だからさ、・・お願い!頼んでくれ!」
「うーん、そうですね。やってもらったことがあるなら・・頼んでみますね!」
内田はニッコリ笑った。
「さんきゅ!やっぱ茉矢ちゃんは頼りになる!チビだけど!」
「佐藤さん!一言多い!」
佐藤は笑って機嫌よく病室に戻っていった。
夕方にマッサージか・・。悪いことではないが、仕事の範囲を超えてるのではないかと内田は思った。個人的な考えでそんなことを続けていたら、患者はどんどん甘えてくるし、欲求も高くなってくるだろう。それでは患者と看護師、双方のためにならない。
━━━━少し注意したほうがいいのかな?でも彼女のほうがずっと先輩だし・・・。
言うしかないか、と内田は思った。正しいことには、先輩も後輩もないだろう。
「マッサージ?」
廊下で小西理保が振り向いて言った。
小西理保は内田よりふたつ年上の24歳。髪をきっちりだんご状にまとめてるせいか、もっと年上に見える。
看護大学を卒業後すぐに本郷二条総合病院に採用されている。
「佐藤さんが夕方頼みたいって。一昨日マッサージしてもらったのがすごくよかったって言ってて」
「ああ、一昨日のは・・」
小西が言いかけたのを内田が遮った。
「小西さん、夕方のマッサージって看護師の仕事の範囲を超えてるんじゃないですか?患者さんの言うとおりになんでもしてあげるのは優しさとは違いますよ?自分だけがやるならいいかもしれないけど、小西さんがいない時に他の看護師にマッサージしてくれって頼むようになると思います。気をつけたほうがいいと思います。じゃあ佐藤さんのことは伝えたのであとはよろしくお願いします」
一方的な言い方だと内田は思ったが、ハッキリ言わなくては伝わらない。嫌われるかもしれないし悪く思われるかもしれないが、看護師全体のことを考えると言わざるを得ないと内田は思っていた。
「あのさ、リハビリの先生には聞いた?」
「いえ。佐藤さんは小西さんに頼んでましたから」
「あたしが一昨日マッサージをしたのは、リハの先生に佐藤さん自身でできるように指導してくれって言われたからよ」
「佐藤さんそんなこと言ってなかったです。それならちゃんと佐藤さんに伝えればよかったじゃないですか?」
「伝えたわよ」
「え?」
「それより患者からマッサージ頼まれたら主治医かリハの先生に確認とるのが先じゃない?過剰にマッサージして悪化したらどうする気だったの?」
「こ、小西さんがやってあげてたんでしょ?」
「だからあたしはリハの先生に頼まれたって言ったでしょ?どの程度のマッサージをどうやったらいいか、先生と相談したあとに行ったのよ」
「あ・・、じゃあ、そういう風に改めて説明してあげてください」
「なんの確認もせずに引き受けたのはあなたでしょう?リハの先生に経緯を説明してあなたが佐藤さんに説明すれば?」
「私、帰りは用があって・・」
「帰りじゃなくてもいまリハの先生のとこに行きなさいよ。先生いるわよ?」
「私、今は患者さんの・・」
「昼休みでもいいじゃない。帰りまでには時間たっぷりあると思うけど?」
小西はプイッと内田から顔を反らし足早に詰所に戻っていった。
内田はそれ以上は何も言えずに自身も詰所に戻った。
「ねー、このパソコン、誰か使った?」
鳥谷部の声がした。内田が使っていたパソコンだった。
「はい。私が使ってました」
詰所に戻った内田が名乗ると周囲がしんとした。
「このパソコン、特別室専用って知ってた?」
鳥谷部がなかばあきらめ顔でため息をついた。
「は、はい。でも他のと同じように使えると」
「使えるわけないでしょ。専用の意味知らないの?」
小西が後ろで言った。
内田は顔がカッと熱くなるのを感じた。
「あの、もしかして私が使ったせいで何か・・」
「何かじゃないよ。俺が入力したぶん全部消えてるんだけど」
「え・・?あ、あの、私、よく知らなくて・・・」
「知らないってこわーい」
小西の嫌味めいた発言に、周囲がクスクス笑った。
小西はすぐさま特別室の専用パソコンの前に座り、カタカタと操作を始めた。
最後にタンッと軽くキーボードを押すと、鳥谷部が入力した分がほぼ全部出てきた。
「すっげ!さすがお局様候補!」
鳥谷部が小西をからかうと、「うっさい!」と鳥谷部にひじ鉄をくらわせた。周囲がどっと笑ったが、内田一人が輪のなかに入っていけなかった。
内田は「今後は気をつけます」と頭を下げ、詰所を出た。
内田は無性に恥ずかしさと悔しさを感じた。
何もあんな言い方しなくても、と小西を恨んだ。
理由も知らず突っかかっていったのは自分のほうだということを忘れて、内田の心は自分の正当性だけを照らしている。自分は悪くないはずだ。マッサージの件も、小西がすんなり引き受けてくれればよかっただけのことだったし、パソコンも専用であることの意味を少しばかり把握しきれていなかっただけだ。
失敗は誰にでもあるのに、何故自分だけが人前で恥をかかされなければならないのか。
無性に悔しい。
誰もかばってくれなかった。
味方が欲しい。
どんな時でもかばってくれる、自分だけの強い味方が。
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