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212. ロンド~踊る命~ -29- 青木家の終焉 ④
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みふゆは必死でハンドリムをこいだ。
なのに手に力が入らない。滑ってしまう。
気持ちだけが早く早くと焦る。
早く早く早く━━━━
早く行かなければ!
隣家の岸辺家から電話は、みふゆの家、青木家が燃えているという内容だった。
青木家から、燃えながら人が出てきたのを岸辺家の長男が見ており、まさかみふゆではないかと、安否を確認する電話だった。
みふゆは藤の間から着の身着のままで玄関に急いだ。誰かを呼ぶことができなかった。声が出なかった。
ぺしゃんこに潰れる寸前の心を抱えてハンドリムを必死で回した。
玄関に向かうみふゆを見つけたのは風呂上がりの海斗だった。
「みふゆさん!?」
海斗が玄関の車椅子用スロープの安全扉を開けようとしているみふゆをみつけた。海斗は急いでみふゆに駆けよった。
「どこに行くんだ!誰か来てくれ!京にぃ!京にぃ!!」
「離して!行かせて!」
「どこに行くんだよ!」
「うちに帰るの!帰らなきゃいけないの!!」
「なんでだよ!明日行くことになってるじゃないか!」
海斗の声で京司朗と一心が足早に玄関に来た。
みふゆの車椅子を海斗が押さえている。
「何をしてるんだ!」
京司朗がみふゆの前にしゃがみこみ問いただした。
「どうしたんだ!何があった」
みふゆの瞳に、心配そうにみふゆをのぞく京司朗が映った。
みふゆは俯いて、噛みしめているくちびるを解いて答えた。ぼろぼろと涙が落ちた。
「うちが・・うちが燃えてるって・・・!隣の岸辺さんから・・・うちが燃えてるって・・!!うちから燃えながら人が出てきて・・わたしじゃないかって!わたしはここにいるのに!!」
みふゆは両手で頭を抱え込んだ。
玄関先の騒ぎに、胡蝶と楓、幾人かの常駐組も集まり、京司朗は常駐組に調べるように指示をした。
「行かなきゃ・・!お母さんと紗重ちゃんの・・・大事な・・大事なものがたくさんあるのに!どいてよ!!邪魔しないで!!」
みふゆが京司朗を手で退かそうと叫んだ。
「三上!車をまわせ!それから館脇と佐藤先生、江戸川に連絡しろ」
「はい!」
京司朗は三上に、不動産管理の館脇と弁護士の佐藤と江戸川に連絡するように命じた。
「屋敷を頼みます」
京司朗が胡蝶と一心に告げると、二人は頷いた。胡蝶は着ていた茶羽織を脱ぎ、みふゆに羽織らせるようにと、渡した。
「京にぃ・・」
海斗が不安げに京司朗を呼んだ。
「惣領と黒岩の血をひく男が情けない声を出すな」
京司朗は海斗を叱咤し、「ここはいいから楓さんのそばに居てやれ」と言った。
そういえば母・楓の表情がひどく冴えない。
海斗は京司朗がなぜ『母のそばにいてやれ』と言ったのか聞き返せず、一心から、貴之らの乗った車が行方不明だと小声で打ち明けられた。
即ち、同行している海斗の父・黒岩正吾も行方不明ということだ。
玄関前に小型のベンツが用意された。
火事の現場なら消防車が出動している。住宅街の道路は混雑が予想される。野次馬も集まっているだろう。大型の福祉車両・アルファードでは近づきづらい。
みふゆは器用に一人で車椅子から後部席に移乗した。
京司朗はみふゆの真横に座った。いつもなら貴之が座る位置だ。
運転は三上に任せた。
走り出してからすぐ、みふゆが呟いた。
「ごめんなさい・・。わたし、一人じゃなんにもできないくせに・・」
はがゆい。何もかも。
みふゆはあらためて歩けないはがゆさを感じていた。誰かの力を借りなければ何もできない自分が悔しかった。
謝るみふゆに、京司朗は、
「・・君はもっと俺に甘えていいんだ。俺は君を守るためにいるんだから」
そう言って、震えるみふゆの肩を抱き寄せた。
みふゆは必死でハンドリムをこいだ。
なのに手に力が入らない。滑ってしまう。
気持ちだけが早く早くと焦る。
早く早く早く━━━━
早く行かなければ!
隣家の岸辺家から電話は、みふゆの家、青木家が燃えているという内容だった。
青木家から、燃えながら人が出てきたのを岸辺家の長男が見ており、まさかみふゆではないかと、安否を確認する電話だった。
みふゆは藤の間から着の身着のままで玄関に急いだ。誰かを呼ぶことができなかった。声が出なかった。
ぺしゃんこに潰れる寸前の心を抱えてハンドリムを必死で回した。
玄関に向かうみふゆを見つけたのは風呂上がりの海斗だった。
「みふゆさん!?」
海斗が玄関の車椅子用スロープの安全扉を開けようとしているみふゆをみつけた。海斗は急いでみふゆに駆けよった。
「どこに行くんだ!誰か来てくれ!京にぃ!京にぃ!!」
「離して!行かせて!」
「どこに行くんだよ!」
「うちに帰るの!帰らなきゃいけないの!!」
「なんでだよ!明日行くことになってるじゃないか!」
海斗の声で京司朗と一心が足早に玄関に来た。
みふゆの車椅子を海斗が押さえている。
「何をしてるんだ!」
京司朗がみふゆの前にしゃがみこみ問いただした。
「どうしたんだ!何があった」
みふゆの瞳に、心配そうにみふゆをのぞく京司朗が映った。
みふゆは俯いて、噛みしめているくちびるを解いて答えた。ぼろぼろと涙が落ちた。
「うちが・・うちが燃えてるって・・・!隣の岸辺さんから・・・うちが燃えてるって・・!!うちから燃えながら人が出てきて・・わたしじゃないかって!わたしはここにいるのに!!」
みふゆは両手で頭を抱え込んだ。
玄関先の騒ぎに、胡蝶と楓、幾人かの常駐組も集まり、京司朗は常駐組に調べるように指示をした。
「行かなきゃ・・!お母さんと紗重ちゃんの・・・大事な・・大事なものがたくさんあるのに!どいてよ!!邪魔しないで!!」
みふゆが京司朗を手で退かそうと叫んだ。
「三上!車をまわせ!それから館脇と佐藤先生、江戸川に連絡しろ」
「はい!」
京司朗は三上に、不動産管理の館脇と弁護士の佐藤と江戸川に連絡するように命じた。
「屋敷を頼みます」
京司朗が胡蝶と一心に告げると、二人は頷いた。胡蝶は着ていた茶羽織を脱ぎ、みふゆに羽織らせるようにと、渡した。
「京にぃ・・」
海斗が不安げに京司朗を呼んだ。
「惣領と黒岩の血をひく男が情けない声を出すな」
京司朗は海斗を叱咤し、「ここはいいから楓さんのそばに居てやれ」と言った。
そういえば母・楓の表情がひどく冴えない。
海斗は京司朗がなぜ『母のそばにいてやれ』と言ったのか聞き返せず、一心から、貴之らの乗った車が行方不明だと小声で打ち明けられた。
即ち、同行している海斗の父・黒岩正吾も行方不明ということだ。
玄関前に小型のベンツが用意された。
火事の現場なら消防車が出動している。住宅街の道路は混雑が予想される。野次馬も集まっているだろう。大型の福祉車両・アルファードでは近づきづらい。
みふゆは器用に一人で車椅子から後部席に移乗した。
京司朗はみふゆの真横に座った。いつもなら貴之が座る位置だ。
運転は三上に任せた。
走り出してからすぐ、みふゆが呟いた。
「ごめんなさい・・。わたし、一人じゃなんにもできないくせに・・」
はがゆい。何もかも。
みふゆはあらためて歩けないはがゆさを感じていた。誰かの力を借りなければ何もできない自分が悔しかった。
謝るみふゆに、京司朗は、
「・・君はもっと俺に甘えていいんだ。俺は君を守るためにいるんだから」
そう言って、震えるみふゆの肩を抱き寄せた。
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