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吸血鬼の興味
しおりを挟む半年ほど前に1人の男性と生活をするようになりました。
まだ50と少しだという男、幹彦さんの血を初めて飲んだ時は驚きました。
私は細かく数えるのはやめましたが生を受けた200年ほど前から世界各地を旅してきました。
元々旅をしようと思ったのは私が生を受けた場所での人間の数が減ってしまったからなんです。食べるものがないので仕方なく出てきました。
そうして旅先で都度、現地の人々から血を頂いて来たのです。
人種、地域、国。食べるもので皆それぞれ違う味がしました。野生の生き物と家畜化された生き物とでは肉の旨みが違うのと同じように、人の血にも旨みがあったのです。
生きるために飲んでいた人の血に差があるのを知って私は旅をするのが楽しくなりました。
(そういえば1度友人に勧められて人肉を食してみたのですがあまり美味しくなくて、血は美味しいのに残念だと思ったことがありましたね。
家畜化された人間だったら人肉も美味しいのかもしれませんがそんな事する同胞には出会ったことがないですね?やはり美味しくないのでしょう。)
日本に来たのはまだ20年ほど前ですがこの国の人達は同じ地域に住んでいるというのに味が全く異なることがよくあるのです。
初めて日本に来た時に飲んだ血はとても甘く美味しく、なんて素晴らしい国なのかと興奮致しました。ですが次に飲んだものは酸っぱく感じられ私には少々合いませんでした。たまたまかと思えば5人に1人はそうした美味しくない血の人にあうのです。
人の密集した同じ地域に住んでいるのに何がこんなにも影響するのかと観察しているとストレス値なのではないかと気づいたのです。
他の国では同じ地域に住んでいればさほど差はなかったものですからストレスというものがこんなに影響することにとても驚きました。
そこで私は甘く美味しい血の人間と酸っぱい血の人間では何が違うのかを具に研究することにしました。
甘く美味しい血の人間はペットを飼っていていつもだいたい同じ時間に仕事を終わらせ帰っていく。
酸っぱい血の人間は大抵1人で住んでいて仕事が終わる時間は他のものより遅かった。
食事にももちろん違いがあって、人間は雑食で色々なものを食べるはずなのに酸っぱい血の人間は偏ったものしか食べていなかった。
実験的にその酸っぱい血の持ち主を飼ってみた。
ペットを与え仕事を変えさせ人間の健康的な食事というものを作って与え続けてみた。
3年ほどだろうか。その者は存外早く美味しい血になった。だが直ぐに味が落ちた。
健康的な体は代謝というものも良くした。
その者は昨年死んだ。病気だった。
少し残念に思った。せっかく美味しく作った家畜の肉が食べれなかった。
病気になる前に食べてみればよかった。
私は再び美味しい血に育てるための人間を探しました。
程よく健康で程よく不健康な人間を。
つまみ食いをしながら程よい人間を探し歩いていた時。
幹彦さんに出会ったのです。
彼は私が血を吸う現場をみて青ざめ、警察を呼びました。
私はすぐさまその場を離れました。うろたえる彼を見ていると可愛くて仕方ありませんでした。まるで主人を探す犬のようにきょろきょろとしていたのですよ。ふふ。
しばらく眺めているとぐったりしている人間と彼を見つけた警察は幹彦さんを捕え車に詰め込みました。
私は彼がどうなるのか気になりついて行ったのです。
少し可哀想になるほど警察に詰められる彼。
私は警察に証言をしに行きました。その時に幹彦さんの名前を入手しました。盗み見た、ですがね。
少しはしたなかったかもしれませんが吸血鬼に法的ルールはないので気にしていません。
幹彦さんはその場に居合わせただけの一般人だと私は証言して彼は解放されました。私も少し疑われはしましたがそれは仕方の無いことです。私が犯人ですから。
彼は警察を出るとまっすぐ自宅であるアパートへ向かいました。
疲れた……と外まで聞こえる声に思わず笑ってしまいました。
次の主食は彼にしよう、とその時に決めました。
名前はわかっているのでインターホンを押し宅配を装って扉を開けさせました。
私の顔を見るなり「は?」と言って驚いた顔は写真に撮りたかったですね。
彼は何とかして私を追い出そうとしましたが彼より私の方が力がありますから。力づくでは追い返せないと早々に諦め、言葉巧みに何とかしようとしていましたがそれも墓穴を掘るようなことばかり。大変可愛らしくて目が離せませんでした。
そのあと一度帰った振りをして幹彦さんの住むアパートの上でしばらく過ごしました。
深夜に扉を叩いて再び「幹彦さん」と声をかけると寝ぼけた声で「はぁい」と微かに聞こえて私は鍵のかかった扉を開けて彼の部屋に入りました。
彼はベッドで寝たまま返事をしたようでスースーと寝息を立てておりました。
初めて会った時は不健康そうだと思ったのですが存外そうでも無いのかもしれません。
そういった人間の血はどんな味がして、私の作る食事でどう変わるのか。
私はこれからが楽しみで仕方なくて、眠りについている幹彦さんの首筋に軽くかじりつきました。
傷口からはほんの少し舐める程度の血。
それを舐めとり衝撃を受けました。
見た目は健康という訳でもないのに血は甘く、芳醇な香りをさせていたのです。
ペットは飼っていない。食事も部屋を見る限りまともに摂取しているようには見えない。
仕事はどうなのでしょう。まだ観察はできていませんがあの時間にスーツ姿だったのですからあまり良い企業ではないのかもしれないですね。
私はその衝撃からしばらく抜け出せませんでした。
「……この人に私の作った食事を与えたらどうなるのでしょう……。」
寝息しか聞こえない静かな部屋に私の声はよく響きました。
幹彦さんに食事を与えるようになって1ヶ月ほど経った頃。
味見がしたいと強請ると押しに負けた幹彦さんは痛くないようにひと息に、といったので私は普段より少し分泌液を多めに出しました。多少調節はできるので。
分泌液の混ざった唾液を舌で撫で付けて齧り付きひと月ぶりの幹彦さんの血を…。
「ン!アあっ、くぅ、…な、なんだ!?」
数滴程しか舐めていないのに幹彦さんに突き飛ばされました。
ああ…ひと月前より断然美味しくなっている。
「おま、なにしたっ?」
血に悦っていると顔を紅潮させた幹彦さんが私を睨んでいました。
私は分泌液のことも含めて話し、気持ちよくて声が出ることはよくあることですよと宥めました。
すると彼はまた怒ってしまいました。
次からは控えろと。
吸血なんてさせないと言うのかと思えば、次があって分泌液も調整できるとわかったのに控えろですか。
全く出さないことも出来ると本心ではわかっているんでしょうが、快楽に悶えるのは分泌液のせいなのだと逃げ道を作っている。
なんて可愛らしいのでしょう。
そのうち顔を赤らめて「血を吸わないのか」なんて言いそうな気配にほくそ笑みました。
その時の私はきっとだらしのない顔をするでしょう。
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