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第一章 悪役令嬢と女神様
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※誤字訂正させていただきました
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こんな話を信じてくれとは言いません。ですが、どうか最後まで聞いてください。
…シャルロットはそんな前置きから話し出した。
私には前世…つまりシャルロットとして生まれ変わる前の記憶があります。前世で私は中学生…えっと、13歳の学生でした。当時の私はゲームにハマっていてそれは七プリー『七色プリンス◇魔法学校でドキドキ恋愛』というのだったんです。恋愛シミュレーションでしたが、私は別の楽しみ方をしていました。実をいうと、そのゲームの悪役令嬢であるシルヴィラ様が私の好みにドンピシャで。私は彼女と他のキャラとの絡みを想像して楽しんでいたのです。そんな私はいつの間にかシャルロットになっていて…私は大好きだったそのゲームに転生していたのだと気づきました。私はすぐにシルヴィラ様を探しました。しかし私は所詮低級貴族。お目にかかることさえままならなかったのです。
しかし私は本日のパーティーで運命的な出会いを果たしました。慣れないパーティーでドレスにケチャップをこぼしていた私にシルヴィラ様は声をかけて下さって。誰も教えてはくださらないことを正直に教えてくださいました。あの裸の王様に出てくる正直な少年のように。私は貴女こそ私の愛する人だと確信したんです。あの氷よりも冷たい眼差し…!人を人だと思わないような言葉…!私は嬉しくて嬉しくて…涙を堪えて走り去ることしか出来ませんでした。
それからシルヴィラ様のことが目を閉じても目を開けても私の心を満たしていて…。いてもたってもいられなくなって私はここに来たのです。そうしたらもっと近くで罵倒されたいなって欲望が爆発しちゃって。壁ドンなら超至近距離で罵倒されることが出来ると思ったんです。
その話を聞いて私は絶句した。アブナイ子だと思っていたけれど既に手遅れだった。正真正銘のドMだよ、この子。しかも私と同じ転生者?あぁ、だから性格がまるっきり違うのか。…バグじゃなくて良かった。
昼間のパーティーでの出来事は普通、トラウマになって私と出来るだけ近づかないようにするところだ。私だったら取り敢えず国外へ引っ越す。それをまた会いたいだなんて…。ある意味すごいことだと思う。
「ええと、シャルロットは罵倒されたくて来た、ということ?」
「はい、恥ずかしながら」
うーん、恥ずかしながらは満面の笑みで言う台詞じゃあないと思うんだけどなぁ…。それに、この話は満面の笑みで肯定する内容じゃあないと思うんだけどなぁ…。
「そうね…残念だけれど、私には難しいから遠慮させていただくわ」
私は丁重にお断りすることにした。男子にされたこともない壁ドンを今日初めて話した人にするには勇気が結構足りなかったのだ。シャルロットは私の言葉に対して今まで見せたことのない難しい顔で考え込んだ。空気椅子で考える人のポーズをとっている。それでは何も考えられないと思うのだが、プルプル震えながら頑張っているのでツッコミは入れられない。
「それは、壁ドンするのが嫌だからですか…?」
「え?ええ…まあ…?」
それからシャルロットは納得したように頷いて考える人のポーズをやめた。それから私との距離をジリジリと詰めていく。え、今度はなに…!?いつの間にか後ろにはベッド、前にはシャルロットと私は追い詰められていた。そしてシャルロットはそのままー…
「ちょ、シャルロッ……ひっ」
私を押し倒した。
私ね、結構、想像力は豊かな方だと自負しているんだ。だけどね、女の子に自分がベッドドンされるのは全く想像してなかったわ。壁ドンはするのも嫌だけどされるのも嫌だよ。すうっと血の気がひくのが分かった。
「きゃあっ!その神も凍える眼差し…その眼差しで私を射抜いてくださぁい」
語尾にハートが付きそうな媚を売る話し方に私はまた眼差しの温度を下げた。なんだ『さぁい』って。気持ち悪いわ。射抜いてあげるからベッドドンは本気でやめて。
視野がシャルロットと天井で埋まっていた私は眼差しの温度を下げることに全力を注いでいて、全く気づかなかった。
月が一番高く昇る刻はとうの昔に過ぎていたということを。
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こんな話を信じてくれとは言いません。ですが、どうか最後まで聞いてください。
…シャルロットはそんな前置きから話し出した。
私には前世…つまりシャルロットとして生まれ変わる前の記憶があります。前世で私は中学生…えっと、13歳の学生でした。当時の私はゲームにハマっていてそれは七プリー『七色プリンス◇魔法学校でドキドキ恋愛』というのだったんです。恋愛シミュレーションでしたが、私は別の楽しみ方をしていました。実をいうと、そのゲームの悪役令嬢であるシルヴィラ様が私の好みにドンピシャで。私は彼女と他のキャラとの絡みを想像して楽しんでいたのです。そんな私はいつの間にかシャルロットになっていて…私は大好きだったそのゲームに転生していたのだと気づきました。私はすぐにシルヴィラ様を探しました。しかし私は所詮低級貴族。お目にかかることさえままならなかったのです。
しかし私は本日のパーティーで運命的な出会いを果たしました。慣れないパーティーでドレスにケチャップをこぼしていた私にシルヴィラ様は声をかけて下さって。誰も教えてはくださらないことを正直に教えてくださいました。あの裸の王様に出てくる正直な少年のように。私は貴女こそ私の愛する人だと確信したんです。あの氷よりも冷たい眼差し…!人を人だと思わないような言葉…!私は嬉しくて嬉しくて…涙を堪えて走り去ることしか出来ませんでした。
それからシルヴィラ様のことが目を閉じても目を開けても私の心を満たしていて…。いてもたってもいられなくなって私はここに来たのです。そうしたらもっと近くで罵倒されたいなって欲望が爆発しちゃって。壁ドンなら超至近距離で罵倒されることが出来ると思ったんです。
その話を聞いて私は絶句した。アブナイ子だと思っていたけれど既に手遅れだった。正真正銘のドMだよ、この子。しかも私と同じ転生者?あぁ、だから性格がまるっきり違うのか。…バグじゃなくて良かった。
昼間のパーティーでの出来事は普通、トラウマになって私と出来るだけ近づかないようにするところだ。私だったら取り敢えず国外へ引っ越す。それをまた会いたいだなんて…。ある意味すごいことだと思う。
「ええと、シャルロットは罵倒されたくて来た、ということ?」
「はい、恥ずかしながら」
うーん、恥ずかしながらは満面の笑みで言う台詞じゃあないと思うんだけどなぁ…。それに、この話は満面の笑みで肯定する内容じゃあないと思うんだけどなぁ…。
「そうね…残念だけれど、私には難しいから遠慮させていただくわ」
私は丁重にお断りすることにした。男子にされたこともない壁ドンを今日初めて話した人にするには勇気が結構足りなかったのだ。シャルロットは私の言葉に対して今まで見せたことのない難しい顔で考え込んだ。空気椅子で考える人のポーズをとっている。それでは何も考えられないと思うのだが、プルプル震えながら頑張っているのでツッコミは入れられない。
「それは、壁ドンするのが嫌だからですか…?」
「え?ええ…まあ…?」
それからシャルロットは納得したように頷いて考える人のポーズをやめた。それから私との距離をジリジリと詰めていく。え、今度はなに…!?いつの間にか後ろにはベッド、前にはシャルロットと私は追い詰められていた。そしてシャルロットはそのままー…
「ちょ、シャルロッ……ひっ」
私を押し倒した。
私ね、結構、想像力は豊かな方だと自負しているんだ。だけどね、女の子に自分がベッドドンされるのは全く想像してなかったわ。壁ドンはするのも嫌だけどされるのも嫌だよ。すうっと血の気がひくのが分かった。
「きゃあっ!その神も凍える眼差し…その眼差しで私を射抜いてくださぁい」
語尾にハートが付きそうな媚を売る話し方に私はまた眼差しの温度を下げた。なんだ『さぁい』って。気持ち悪いわ。射抜いてあげるからベッドドンは本気でやめて。
視野がシャルロットと天井で埋まっていた私は眼差しの温度を下げることに全力を注いでいて、全く気づかなかった。
月が一番高く昇る刻はとうの昔に過ぎていたということを。
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