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フランタール脱出編

困った時の委員長

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あの本《看破》すればいいんだと、気づいた今現在。

「馬鹿か私は…。召喚されたときにも他人のステータス覗くのに使ったじゃん…」

看破のスキルは鑑定スキルの上位スキルらしく、物人問わず調べられるらしい。そうこのスキル辞典にも書いてある。

おはようございます。
現在図書室です。他のクラスメイト達は特訓開始らしいよ。私がぼっちな理由はお分かりですね?放逐が決定してるからだよチクショー!!
まぁそれはどうでもいい。それよりも…図書室、凄いよ?360°どこを見ても、壁一面が本!本!本!私はとりあえず魔法関連の書物とスキルに関する本を読みあさっている。今日で読み終えたい。私の数少ない特技、“速読”が火を噴くぜぃ!…噴いちゃだめか。
にしても、魔法ってイマイチ分からん。『魔力は体内を巡る』って、いやいや体内のどこをどっち向きにどの位巡ってんのよ。個人差の一言で全部片づけんなよ!実践するしかねぇみたいです。
…んー…血液みたいな感じのイメージで良いのかなあ?

んー…
んー…
んんー…?
んお…?
おー…
おー…?
………。

ムリ。分からん。
大したことは載ってないけど、もう一回本を読み返すことにする。




……試行錯誤に数時間。既に日は頂点を越えた。要するに昼過ぎ。

お腹すいたぁ…朝ご飯、実は食べてないんだよね。王女様の嫌がらせで。朝ご飯食べようと食堂に向かったところで王女に捕獲され、嫌味をつらつらベラベラ…まぁ、要約すると、獣人に食わせる飯ねぇから!ってことらしい。本で読んだがこのフランタール王国、やはり人間至上主義国家らしい。予想的中、大当たり~ってね。まったくもって笑えない。何でもかんでも人間が最高で最強なんだと。…馬鹿らしい。それで、どこの国とも仲が悪くなっているようじゃ国の格が知れるってもんよね。
例えば、森が大好きエルフさんに対し、「はぁ?自然なんて人間が支配するものだし?」的な態度だったり、ドラゴンの血をひく激強な竜人族さんに対し、「はぁ?所詮は山奥の里に引きこもってる臆病者だろ?」的な態度だったり。言わせてくれ、…この国の奴らホント馬鹿じゃね?しかもそれを堂々と誇らしげに本にするとは…この一冊で国際問題に発展できちゃうでしょ…。

そんな私は、ここを出たら隣国に行こうと思っている。隣国、ファフニール皇国は色んな種族の集まる多種族国家らしく、実力があればそれに応じた職なんかも貰えるとか。私の場合職業が召喚士だけど、この世界は日本よりも文化が遅れているから簡単な算術なら役にたてるだろう。あるいはアイテムボックスを生かして商人のお手伝いでも楽しそうだ。

そんな空想をしながら読書を続けていれば、時刻はあっという間に夕方に。

魔力…どこー!



部屋に戻ると、またしても相部屋の子は居らず。時間的に夕食かなぁ…。私夕食もないのか。水魔法があれば水は確保出来たのに…はぁ。
溜息を吐きながら、ぐうぐう鳴るお腹を押さえる。
とりあえず、今がチャンス。アイテムボックスから例の本を取り出す。最後の最後で見つけた白紙の魔導書の使い方についての本は暗記してきた。…今は出来ないけど。

よし、《看破》!

──────────────────────
【白の魔導書(白紙)】
〖ランク SSS〗
神が作り出したとされる純白の魔導書。
召喚の魔導書になる可能性を持つ。
まだ魔導書としての効力を持たない。

──────────────────────

ら、ランクがおかしくないですか?マジで?
『運も実力のうち』
そんな女神の言葉が蘇る。まさか…ね。とにかく、この本のことはなんとしても隠さないと。ばれたら絶対に奪われる!!さっさと自分専用にするなり、この国を出るなりしないと…。
…いやもうホントに魔力どこー!?隣国に行く上で何かないと困るのよー…。暗殺術、伸ばすか?いや、でも私闇魔法あるからどっちみち魔力は使えないと…。

「……よし、困った時の委員長。委員長のとこ行こう。」

ウチの委員長は博学で成績優秀、加えて容姿も端麗な素敵レディだ。少々上から目線な口調が鼻につくという人もいるが、クラスメイト達はそれが彼女の癖ないしは照れ隠しであることを知っているので、嫌っている人は少ない。彼女であれば今日の授業で学んだことを教えてくれるだろうと期待する。



コンコンコン
委員長の部屋のドアをノックする。

「はい?」
「あ、樟葉さん?皇だけど、夜分にごめんね。今ちょっとだけいいかな?」
「……どうぞ」

…なんか声のトーン低くなった。何かしたっけ、私。

「失礼しまーす。」
「…皇さん、何の用事?朝昼夕ともご飯にも来ないで別行動なんて…王女様に失礼じゃない。」

…はい?…あー、なるほど。

「樟葉さん、反論いい?」
「…?えぇどうぞ?」
「朝、お前に食わせる飯はねぇ!って言ってきたの王女様なんだけど。」
「……は?」
「とりあえず聞いてくれる?樟葉さんは客観的に物を考えれる人だから信用してるの。私が今日調べてきたこと、私がなんで別行動なのか、今から説明するから。」
「…分かったわ。聞きましょう。」

流石委員長。頼りになります。真面目過ぎるのが玉に瑕だけどね。

「ありがとう。えっと、まず私が別行動してる理由なんだけど…私、2日後にここを追い出されるの。そのときのために図書室で調べ物をしてるっていうことなんだけど…」
「ストップ。なんだか聞き捨てならない単語が既にちらほらしてるわ…この時点で色々聞きたいのだけど。…追い出されるってどういうことなの?」
「この国ね、人間至上主義国家っぽいんだ。私の種族が獣人になってるからって言うのが一つ、あと、私の職業が召喚士で役立たずだからっていうのがもう一つ。それで昨日の解散後、王女様に呼び出されて出てけって言われたんだよねぇ。」
「……あの王女様がね。私達の前だとすごくいい人なんだけど、それは本当かしら。それに、貴方以外の獣人の子たちはこっちにいるし…そんなこと言われたっていうのは貴方だけよ?主義的におかしくはないかしら?」
「そうだね、私を疑うのも分かるよ。私も委員長の立場だったら、何言ってんだこいつってなるし…。でも、王女様が私達に説明した内容は色々おかしな所があるんだ。…この国は皆を利用するつもりかもしれない。」
「……話して。」

私は委員長に今日知ったことの全てを説明する。
魔王は存在はするが、おそらく魔族という種族の王以上の意味はない。少なくとも魔物は魔力の濃く歪んだ魔素溜まりなるものから生まれるため、魔王との関連性は一切ないこと。人間第一主義を掲げるこの国は孤立し、他国と仲が悪いこと。

「あと、これはオフレコで頼みたいんだけど…」
「…何?」
「私のスキルに《》っていうのがあって…王女様をみたんだけどね、《隷属化》っていうスキルを持っていたの。しかも使い込まれた高レベルの。」
「…隷属化?なんか良くない響きね。」
「うん。今日調べたら見つけた。《隷属化》はね、奴隷契約の魔法なの。」
「!!?」
「でも《奴隷契約》よりもたちが悪い。《隷属化》は《奴隷契約》の上位互換的なスキルでね、意識を奪って操ることも出来るし、勿論奴隷みたく扱うこともできる。」
「何よ、それ…。それじゃあ、私達は魔王を倒すためじゃなくて他国侵略のために喚ばれた可能性がある上に、私たちを操って駒にしようとしてるってこと?」
「うん。特に獣人の子たちが危ないと思ってる。そのために王女様は近々《隷属化》を皆にかけるためにアプローチしてくる可能性が高い。」
「…なんてこと。とりあえず、夜に勇者4人で話し合ってみるわ。」
「お願いします、勇者様。」
「了解よ…召喚士さん。それで?あなたの聞きたいことって?」
「あ、えーっとね…樟葉さんって魔法士系の勇者だったよね。その、魔力の使い方について口頭でいいから教えて欲しいなぁって。本だけだと分からなくて。」
「あぁ、魔力?簡単よ。血液みたいなものだもの。心臓の鼓動を意識して全身に魔力用の血管を張り巡らせるイメージよ。」
「おー!やってみる!ありがとう、樟葉さん!じゃ、おやすみー。」
「はい、おやすみなさい。」
「あ、あと一つだけ。この国の人、いくら私を放逐予定だからって疑心を持たせるような大事な書物をあっさり見せてくるくらいだから、きっと何かあると思うんだ。…気をつけてね。」
「…何かって?」
「さぁ?でも、ちょっとお馬鹿だからこそ、考えるより行動派だったり、下手に実力が伴っていたりしたら厄介だよね。」
「なるほどね…気を付けるわ。ご忠告ありがとう。」
「いいえー」

委員長の部屋を出る。さて、お次は我が親友りょーたんの元へでも忠告しに行きますかね…。





「…きな臭くなってきたわね。とりあえず…勇者4人で至急話し合って方針を決めなきゃ。手遅れになる前に!」
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