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美咲
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私は、あの日のことを忘れたくない。
でも、思い出すのも怖い。
家族との最後の朝。
最後になってしまった朝。
祖父が淹れてくれた、いつものコーヒー。
祖母の「いってらっしゃい」という優しい声。
母の「忘れ物ない?」の言葉に、「ないよ!」とぶっきらぼうに答えた。いつもの朝。
いつもの朝のはずだった。
卒業で別れする友達とおしゃべりしてた時の大きな揺れ。父からの「走れ。振り返るな」という短いメッセージ。
私は、あの時間から、ずっと走り続けている。あの日を。
そして、この「潮音」という場所が、そんな私を守る唯一の場所になった。
その潮音に、突然、彼は現れた。
坂本健太。
そう名乗った。
神戸から来たらしい。
いつも笑顔で、私の凍りついた心を溶かそうとしているみたい。
「どうして毎日、ここに来るんですか?」
「どうして?どうして?どうしてって……んー、美咲さんのコーヒーが、好きやからかな」
彼の言葉は、私の心をチクリと刺す。
私はおじいちゃんから習った通り、コーヒーは完璧に淹れられている。
でも、かすかに苦い。
どこか寂しい味がする。
それは、きっと私自身が寂しいから。
健太さんは、私とは違う。
彼は、阪神・淡路大震災の話を、悲しい出来事としてではなく、助け合いの精神を教えてくれた出来事として話す。
彼の瞳は、いつも希望に満ちていた。
私は、彼の笑顔を見るのが少しだけ怖かった。
彼の笑顔に触れると、私は自分の心の闇が、より一層深く感じられるから。
だから、そっけなく対応してる。
ものすごく無愛想に対応もした。
なのに、健太さんは動じない。
めげない。
毎日通ってくる。
何なんだろう…。
「美咲さん、今度、俺が淹れたコーヒー、飲んで貰えませんか?」
健太さんはそう言って、カウンターに小さな手帳を置いた。
そこには、彼が書いた、今日までのボランティア活動の記録と、潮音に来た日付が、びっしりと書き込まれていた。
その手帳をそっと見る。
この人は、私のことをこんなに見てくれていたのか…。
その夜、私は、久しぶりに携帯電話の電源を入れた。
父から届いた最後のメッセージ「走れ。振り返るな」を、じっと見つめた。
その文字は、今も私に語りかけている。
「私、これでいいのかな…」
小さな声で自問する。
私の時間は、いつか、また動き出すのだろうか。
でも、思い出すのも怖い。
家族との最後の朝。
最後になってしまった朝。
祖父が淹れてくれた、いつものコーヒー。
祖母の「いってらっしゃい」という優しい声。
母の「忘れ物ない?」の言葉に、「ないよ!」とぶっきらぼうに答えた。いつもの朝。
いつもの朝のはずだった。
卒業で別れする友達とおしゃべりしてた時の大きな揺れ。父からの「走れ。振り返るな」という短いメッセージ。
私は、あの時間から、ずっと走り続けている。あの日を。
そして、この「潮音」という場所が、そんな私を守る唯一の場所になった。
その潮音に、突然、彼は現れた。
坂本健太。
そう名乗った。
神戸から来たらしい。
いつも笑顔で、私の凍りついた心を溶かそうとしているみたい。
「どうして毎日、ここに来るんですか?」
「どうして?どうして?どうしてって……んー、美咲さんのコーヒーが、好きやからかな」
彼の言葉は、私の心をチクリと刺す。
私はおじいちゃんから習った通り、コーヒーは完璧に淹れられている。
でも、かすかに苦い。
どこか寂しい味がする。
それは、きっと私自身が寂しいから。
健太さんは、私とは違う。
彼は、阪神・淡路大震災の話を、悲しい出来事としてではなく、助け合いの精神を教えてくれた出来事として話す。
彼の瞳は、いつも希望に満ちていた。
私は、彼の笑顔を見るのが少しだけ怖かった。
彼の笑顔に触れると、私は自分の心の闇が、より一層深く感じられるから。
だから、そっけなく対応してる。
ものすごく無愛想に対応もした。
なのに、健太さんは動じない。
めげない。
毎日通ってくる。
何なんだろう…。
「美咲さん、今度、俺が淹れたコーヒー、飲んで貰えませんか?」
健太さんはそう言って、カウンターに小さな手帳を置いた。
そこには、彼が書いた、今日までのボランティア活動の記録と、潮音に来た日付が、びっしりと書き込まれていた。
その手帳をそっと見る。
この人は、私のことをこんなに見てくれていたのか…。
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小さな声で自問する。
私の時間は、いつか、また動き出すのだろうか。
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