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寂しいコーヒー
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健太が毎日、潮音に通うようになって一週間。
今日も夕方に健太は現れた。
反射的にミルクを出そうとした美咲に、健太は
「あ、今日はただのブラックコーヒーにするわ」
と注文。
美咲は、出しかけたミルクをしまい、ゆっくりと丁寧にコーヒーを入れる。
健太はカウンターでその姿をじっと見ていた。
「どうぞ」
美咲がカップを置くと、健太は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸する。そして、一口、口に含んだ。
「やっぱり、うまいわ。うん。うん。うまいわ…」
静かにつぶやく健太に、美咲はほんの少しだけ会釈をする。
半分ほど飲んだとき、また静かに健太がつぶやく。
「けど、やっぱ、なんか寂しい味がするな」
美咲は、その言葉に思わず作業の手を止める。
誰もが「おいしい」と言うコーヒーを、「寂しい」と言った健太は、初めて美咲の心を揺り動かした。
「どういう意味ですか」
心なしかムッとした美咲が尋ねると、健太は少しだけ寂しそうに笑った。
「俺、神戸に居る時は、おじいちゃんが淹れてくれるコーヒーが大好きなんや。
じいちゃんは、豆の量とかお湯の温度とか、全然気にせん人で、毎回味が違うねん。めちゃめちゃ薄い時もあったし、めっちゃ濃い時もあった。
けど、そのコーヒーは、いつも温かくて、楽しかった。
美咲さんのコーヒーは完璧や。完璧なんやけど、なんか美咲さんの気持ちが入ってないみたいで…なんか、寂しいねん。ごめんな、えらそうに」
美咲は、返す言葉がなかった。
健太の言葉は、美咲がずっと胸の奥にしまいこんでいた、本当の気持ちを言い当てていたから。
美咲の淹れるコーヒーは、技術的には完璧だけれど、感情がこもっていなかった。いや、込められなかった。
感情を入れると、きっと悲しみや辛さが入ってしまうから。
彼女は、悲しみや辛さをコーヒーに持ち込まないように、心を閉ざしていた。
今日も夕方に健太は現れた。
反射的にミルクを出そうとした美咲に、健太は
「あ、今日はただのブラックコーヒーにするわ」
と注文。
美咲は、出しかけたミルクをしまい、ゆっくりと丁寧にコーヒーを入れる。
健太はカウンターでその姿をじっと見ていた。
「どうぞ」
美咲がカップを置くと、健太は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸する。そして、一口、口に含んだ。
「やっぱり、うまいわ。うん。うん。うまいわ…」
静かにつぶやく健太に、美咲はほんの少しだけ会釈をする。
半分ほど飲んだとき、また静かに健太がつぶやく。
「けど、やっぱ、なんか寂しい味がするな」
美咲は、その言葉に思わず作業の手を止める。
誰もが「おいしい」と言うコーヒーを、「寂しい」と言った健太は、初めて美咲の心を揺り動かした。
「どういう意味ですか」
心なしかムッとした美咲が尋ねると、健太は少しだけ寂しそうに笑った。
「俺、神戸に居る時は、おじいちゃんが淹れてくれるコーヒーが大好きなんや。
じいちゃんは、豆の量とかお湯の温度とか、全然気にせん人で、毎回味が違うねん。めちゃめちゃ薄い時もあったし、めっちゃ濃い時もあった。
けど、そのコーヒーは、いつも温かくて、楽しかった。
美咲さんのコーヒーは完璧や。完璧なんやけど、なんか美咲さんの気持ちが入ってないみたいで…なんか、寂しいねん。ごめんな、えらそうに」
美咲は、返す言葉がなかった。
健太の言葉は、美咲がずっと胸の奥にしまいこんでいた、本当の気持ちを言い当てていたから。
美咲の淹れるコーヒーは、技術的には完璧だけれど、感情がこもっていなかった。いや、込められなかった。
感情を入れると、きっと悲しみや辛さが入ってしまうから。
彼女は、悲しみや辛さをコーヒーに持ち込まないように、心を閉ざしていた。
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