悪役令嬢は救いたい〜破滅フラグ?そんなもの私がへし折るから問題ありません!〜

白夜黒兎

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大切な義弟

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ユーリ、何処に行ったのかな。また倒れてなければ良いけど。

「お嬢様、終わりましたよ。」

お腹空いてないかな。女の子の様に可愛いから変な人に狙われたりしてっ!

「・・・お嬢様?」
「っ、あぁ、何?リン。」

ハッとして気付いたときにはリンが眉間に皺を寄せて私の顔を覗き込んでいた。

いけない。ユーリの事ばかり考えてる場合じゃなかった。今日からまた、破滅フラグ回避しなくちゃ。

再度、気を引き締める私にリンは溜息を溢した。

「・・・そんなに大切ならわざわざ突き放さなくても宜しかったのでは?」
「んなっ!リ、リン・・・貴女、聞いてたの!?」

何時から聞かれてたの?も、もしかして最初から!?わなわなと震えてる私を他所にリンはケロッとして『主の事は何でも知っとかないとなので』と笑っていた。

「それで、どうしたのですか?いきなりユーリ様の事を気にするだなんて。」
「・・・ユーリが居るところは此処じゃないって思っただけよ。」

ある日、お父様が連れて来た天使の様な男の子。その姿は私、ディーリアよりも断然美しくて、自分より綺麗なものが大嫌いなディーリアはユーリを虐めた。『許して』、『止めて』と叫ぶユーリを無視して。ある日、ユーリが言うの。『どうしたら止めてくれるんですか?』って。私はすぐに答えたわ。

『死ぬまで一生私に服従なさい。』

その言葉に目を丸くしてるユーリにディーリアは笑って、今では全く使えなくなった魔法をユーリの手首目掛けて放つの。きっと、苦痛に顔を歪めるユーリの顔の方が笑ってるユーリよりもディーリアは好きだったんだと思う。

やがてユーリの手首にはあっという間に小さな薔薇の紋章が描かれた。メイデン家に代々伝わる呪いの呪文らしい。その紋章を付けられたら一生主に逆らえない。

「もう、あの子を傷付けたくないの。」

誰よりも可愛くて、誰よりも繊細で・・・。

誰よりも大切な私の義弟。

今までたくさん傷付いたんだもの。今度は幸せになって欲しい。


「はぁ、不器用と言うか、なんと言うか。ですが、お嬢様が誰かを悲しむくらい御成長なされて嬉しい限りです。」

そりゃあ、ね?前のディーリアじゃないもの。

「ユーリ様はきっと、誰かに必要とされたかったんですよ。公爵家に引き取られて、周りに誰も知り合いが居なくて・・・寂しかったんじゃありませんか?」

誰かに必要・・・寂しい・・・。

「それだわ!!」

こう言うのを考えるのは一丁前に早いと自分でも思う。これも悪役の特権なのか。でもまぁ、今は有り難く使わせて貰うとしよう。

「それじゃあ、リン!さっさと学園に向かいましょう!」
「・・・ですがその前に宜しいですか?」
「えっ?」
「足が痛いのですよ」
「・・・・・あっ。」

リンの足元にはさっきまで私が座っていた椅子が転げ落ちていた。

*****

「よーく来たわね、エミリ・ランジュ!」
「な、なにか用ですか?メイデン様。」

はぅっ♡遠くから見ても可愛かったけど、近くで見たらもっと可憐だわ!

艶のある黒髪に上品な佇まいは大和撫子そのものだし、その黒髪に映える林檎の様に真っ赤な瞳もなんてキュートなの!

いけない、いけない。興奮して涎が出て来そうだったわ。このままでは別の罪で捕まること間違いなしね。

き、気を取り直して・・・。

「貴女、私と家族になるつもりはない?」

ユーリと一緒になったらエミリが義妹になるって事よね?実質家族みたいなものよ!でも、エミリが義妹か~。そうなったら是非エミリには『ディーリア義姉様』って呼んで欲しいわね。悪役令嬢とヒロインのコンビって最強だと思うのよ!嗚呼でも、そうなったら他の男性陣は振られるって事よね!?別の破滅が訪れてしまうじゃない!

・・・今から別の作戦を考えとくべきかしら。

「あ、あの・・・。」
「嗚呼、ごめんなさい。」

エミリを放ったらかしにして一人の世界に入るだなんて駄目よね。

ごめんなさい、エミリ。

私が心の中で謝罪をしてるとは露知らず、エミリは私のドレスの裾を引っ張りながらこちらに上目遣いをかましてきた。

あざとい、あざとすぎるっ!

上目遣いが出来るのは可愛い子に限る。エミリやメルリ、アリシアしか出来ない技だ。無論、ディーリアがしたら上目遣いではなく、ただの睨みになるだろう。

エミリはポッーと頬を染まらせながらこちらを見つめていた。

・・・ん?頬を染まらせて?

「・・・そんな熱烈に誘われた事ないのでどうして良いか分からないです」

こ、これは脈あり!?

私がユーリと一緒に居てと頼んだらエミリはどうしたら良いか分からないと言った。だけどこの期待の眼差し、紅く染まる頬を見るにエミリは少なくともユーリに好印象を抱いてるとみた!

「ランジュ様・・・いいえ、エミリ!近いうちに返事を聞かせて頂戴っ!」
「は、はいっ!」

エミリと言う可愛い恋人が出来たらユーリが闇を抱える事はないはず。

ふっふっふっ、ひとつ破滅フラグをへし折ってやったわ!

「それでエミリ、ユーリを見なかった?」
「ユーリ様ですか?・・・ごめんなさい、見てないですね。」
「・・・そう。」

ユーリ、一体何処に行ったんだろう。あの子は真面目だから学園に来ないって事はない筈だけど・・・。

「ありがと、エミリ!」
「はい!ぜ、絶対にお返事お聞かせしますので!」

エミリ、出来たら本人に直接聞かせてあげてね。きっと、泣いて喜ぶと思うから。

この時私は、たまたまその場に居合わせた生徒に一部始終を見られてしまい、次はランジュ様を奴隷に・・・と囁かれている事をこの時はまだ知らない。



・・・・・おかしい。絶対にユーリは学園に来てる筈なのに今日一度も出会していない。探せれるところは全て捜した。

教室のロッカーにごみ箱、倉庫まで隅々探しているのにユーリは出て来なかった。男子トイレにまで探しに行こうとして足を向けると同じくトイレに行こうとした男子生徒と目が合ってしまい大変気まずくなってしまったが。

「はぁ、ユーリ元気にしてるかなぁ~」

たったちょっと会わなかっただけでこんなに懐かしい気持ちになるなんて。元々ユーリなんてメインキャラの一人であり、ヒロインの攻略対象者の一人に過ぎなかった。だけど今ではこんなにも心配するくらい親しんでるだなんて思ってもなかった。


きっとユーリの義姉、ディーリアになったからね。


「おや、ディーリア嬢?」
「えっ、エスティル様!?」

椅子に腰掛けて項垂れてると頭上から声が振ってきた。

なんか物凄く聞き覚えのある声だ。

しかも今会いたくない人・・・。

意を決してゆっくりと顔をあげると、案の定エスティルだった。

でもまさか向こうから話し掛けてくるとは思わなかったけど。

私が嫌いな癖に元気のない女性をほっとけないとか紳士か。・・・うん、紳士だったわね。

「どうしたのですか?こんなとこで。」
「エスティル様、ユーリを見ませんでしたか!?」

エスティルの質問に答えずに自分の用件を伝えた。普通なら失礼極まりないがそれだけ急いでたのだ。

そんな私に気を悪くする訳でもエスティルは目をぱちくりとさせて、物珍しいものを見るような目で私を見つめていた。

「・・・・・ユーリになにか用ですか?」

ユーリの名前を出した途端、声のトーンが少し下がった気がするのは気のせいではないだろう。細められた瞳も人を見透かそうとしている証拠だ。

きっとユーリから、ディーリアに今までされてきたことを全て聞かされてる筈。ユーリに会って酷い事をすると思われてるのだろう。エスティルは見掛けによらず友人思いだからこのままじゃ場所を教えてくれないだろう。

「ユーリに会ってどうしても話したい事があるんです。」
「・・・彼を捨てた癖に?」
「っ、ゆ、ユーリに聞いたのですか?」

だとしたらそれは大きな間違いだ。私はユーリを捨てた訳ではないのだから。

「公爵令嬢に怪我を負わせた事に負い目を感じて今まで大人しく黙って居ましたが、義理とはいえ自分の家族を大事に出来ない方と生涯を遂げようとは思えないです。ですので、ディーリア嬢・・・今日を持って貴女との婚約を破棄します。」
「え、」

今、彼は何て言ったの?婚約破棄?誰と、誰が?もしかして私とエスティルが?

確かにいつかはしなきゃ駄目だとは思っていたけど、なんで今?絶対に今じゃないでしょ。今、ユーリの事で忙しいのに他の事まで考えられる訳ないじゃない。

でも、そちらから言ってくれた事には感謝してるわ。

「・・・分かりました。それを受け入れますのでユーリの居場所を。」

素直に受け入れられると思わなかったのだろう。エスティルは今日何度目かの阿呆面をしていた。まぁ、ディーリアはエスティルにゾッコンだったからね。記憶を思い出してからは全くと言って良い程恋心がないんだけど。

「・・・その前に質問を。貴女にとってユーリは何ですか?」

ふふっ、そんなの愚問ね。

答えなんて一つしかないに決まってるでしょ!

「大切な義弟です!」

そう答えて、目を丸くしてるエスティルに背を向けて走り出す。

なんであの時のディーリアはそんな事に気付けなかったんだろう。あの優しくて可愛い存在に。気付けてたら何か変わってたかもしれないのに。

今はそんな事考えてもどうしようもない。せっかく『キミチカ』の世界にやって来たのだ。あんな未来にならない様に頑張るしかない。



エスティルを捜して早二時間が経ってしまった。結局エスティルにユーリの居場所を聞き忘れてしまった私は再度椅子にもたれかかって項垂れてしまう。

格好つけて「大切な義弟です!」だなんて言わなければ良かった。

実はあの言葉はゲームのイベントでエミリがエスティルに言う台詞なのだ。まぁ、台詞や状況はちょっと違うんだけどエミリが私みたいに問い詰められた時に言うの。しかも台詞だけではなく立ち去るとこまで真似てしまった。だって、好きすぎるんだもんっ!仕方ないでしょ!?

それは兎も角、もう一度ユーリの行きそうな場所を考える様にしよう。

ユーリは真面目だ。だから学園を抜け出さないし学園内の立入禁止場所には行かない筈だ。だから屋上は論外。

そして努力家。今もきっと、魔力をあげる特訓を人知れずやっているに違いない。魔法を使える場所は学園内で限られている。競技場か、グラウンド。でもそこなら誰か見てる筈だ。だけどユーリを見たと言う情報は降りて来ていない。

あぁ~もう!ちゃんと頭を振り絞って考えないと!どんだけこのゲームをプレイして来たのよ!ユーリのイベントストーリーを一つでも良いから思い出しなさいよ!
 
・・・・・あっ。

ひとつ、ひとつだけユーリが行きそうなところがある。ううん、絶対にユーリならそこに行っている筈だ。

確信を胸に私はあるところに向かった。


*****

「・・・やっぱり此処に居たのね。」
「っ、な、なんでっ!」

ユーリは図書室の椅子に座って外の景色を眺めていた。

どんどん成長を願うユーリなら此処に居ると思った。ユーリにとって此処は家よりも落ち着くとこらしいから。

ユーリ以外に人は居なかった。皆、帰ったのだろう。

「・・・ユーリ、家に帰らないの?お母様が心配してるんじゃない?」
「家に帰ってないから。」

なんですって?じゃあ、昨夜は何処に居たと言うのか。

「当たり前だろ?ずっーと会ってないんだ。今更帰ったって歓迎されないさ。」
「そんな事ない!ユーリを歓迎しない訳ないじゃない!」
「ハッ、どーだか。アンタのとこはメイドも含め、誰一人として歓迎してないみたいだけど?」

ぐぅの音も出ないと言うのはこう言う事を言うのだろう。ユーリの言う通りだ。お父様はユーリを公爵家に引き取るだけ引き取って後は知ったこっちゃないと言った様に他国に言ってしまった。お母様は自身と違う髪色が気に入らないと言う理由だけで汚らわしいと罵った。メイド達だってそうだ。皆お母様の言いなり。食事なんてちゃんと与えて貰ってないだろうし、怪我の治療なんて放ったらかしだ。唯一リンだけが気に掛けていたけど。

私は・・・今までユーリの苦しみを知らないでのうのうと笑っていたんだ。だからこそ、ユーリをこのままにしとけない!


「分かったわ。家に帰りたくないのなら帰らなくて良い。」
「・・・そ。」
「その代わり、私も一緒に居るわ!」
「はぁ!?」

今まで私は自分の事しか考えてなかった。破滅フラグに関わりたくないからって全部のキャラクターとの関係性を断とうとしていた。それが私にとっても周りにとっても一番良いと思っていたから。でも、ユーリがそれを望んでいないのなら私が出来るのはたったひとつ。

一緒に居てあげる事だから!

「ユーリが帰りたくないのなら私もずっと貴方の側に居るわ。何処か遠くへ行きたいのなら何処までだって付き合う。だからユーリ、笑って?」

私は優しくユーリを抱き締めた。嫌がられたらどうしようかと思ったけど大人しくされるがままになってくれてたから安心した。

「なんでっ!アンタは急に優しくするんだよっ!前までどうでも良かった癖に!」

ユーリが泣き止むまで私はずっと背中を優しく叩きながら抱き締めていた。 

ユーリだって、泣き顔を見られたくないだろうし。暫くそうしていると、みるみる内に私とユーリの身体が離れた。目の前には何か吹っ切れた顔をしているユーリ。

だから私はユーリに手を差し伸べて言うのだ。

「ユーリ、家に帰ろ!」
「うんっ!」

ユーリは笑って私の手を握り締めた。


初めて見たユーリの笑顔・・・。それはとても綺麗なものだった。







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