不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

文字の大きさ
26 / 59
第一章 龍殺しの騎士

第26話 大所帯の仲間

しおりを挟む
「・・・は?」

 山賊からまさか雇ってくれと言われるとは思わなかったので間抜けな声を出してしまった。一時的に思考停止したがすぐに冷静な思考を取り戻す。

「俺がお前たちを信用できると思うか?」
「そういわれても仕方ないだろう。しかし俺たちはもうあんた達に敵対する気はないんだ。なにせ…」

 山賊の頭は俺の後方に広がっている山岳地帯の一角を見つめる。

「あんな山一つ消し飛ばせるほどの力を持った男と敵対して無事でいられるとは思えない。」

 男は本当に悔しそうな表情をしながらそう言った。おそらく、この男は自分が勝てないと思ってしまうような不甲斐なさと自分の仲間を振り回している情けなさを悔いているのだろう。

 だが、俺は一つとても気になったことがあった。そもそもこれほどまでに仲間のことを考えて、自分の意地を押さえつけてまで仲間のために動けるような男がなぜ盗賊の頭領などをしているのか。いくら俺が考えてもわからないので素直に聞いてみることにした。

「一つ聞かせてくれ。なぜあんたは盗賊なんかしてるんだ?」

 男はそんなことを聞かれるとは微塵も思っていなかったのか、一瞬答えに詰まった。

「…もともと俺たちは盗賊なんかじゃなかった。カルテラ王国という今はもうない小国の親衛隊や雇われ護衛、冒険者だったんだ。だが、国が滅んじまってどうしようもなく食っていくために盗賊をしなければいけなかった。」
「は!?カルテラ王国が滅んだ?!」

 俺は思いもよらないことを聞かされ驚きを隠せなかった。何せ、カルテラ王国というのは俺たちが今いるスイレン王国の海を挟んで向かいにある国で、俺はいつか行ってみたいと思っていた国だった。

 国としての規模はそこまで大きくはないが、魔道具に関する技術が他国と比べて圧倒的に高く、中には遺物《アーティファクト》を再現してしまうほどの素晴らしい職人も多数いたという。そんな職人に一度は師事してみたいと思っていた。しかし、俺が知らないところでその国は滅んでいたという。

「何で滅んだんだ?」
「異端者の襲撃だ。」
「異端者か?」

 異端者とは負の魔力を身に宿してしまい、異常なまでの魔力を身に宿す代わりに人間としての理性を失い、ただ生物を殺すためだけに行動する全生物の敵だ。異端者は人間、精霊、魔族、亜人関係なく殺戮する。なぜ異端者が生まれるかはわかっていない。とても人間とは思えないほどの身体能力と耐久力を持ち合わせており、心臓部に生成された魔石を破壊することで生命活動を停止させることができる。

「信じられない数の異端者に襲撃され、たったの三日でカルテラは滅亡した。国民はほとんど殺され、俺たち戦闘職の人間も大半が殺された。そのうえ、各国の情報当局に混乱を防ぐためにカルテラが滅んだことは口止めされて、逃げた先の国では仕事にありつくことすらできない。それで仕方なく俺たちみたいに戦えない女子供たちを食わせるために盗賊をするしかなかった。」
「なるほど…ね。」

 俺は正直自分で聞いたのになぜ盗賊になったのかよりもカルテラが滅んでしまったことのほうに神経が集中してしまった。しかし、ちゃんと盗賊の男の境遇も理解し、根っからの悪人ではないことは分かった。

「事情はよく分かった。それで、お前たちはこれからどうしたいんだ?」
「俺たちは俺たちの大事な人を殺した異端者たちを駆逐してやりたい。」

 男はその両目に憤怨の炎を宿らせてそういった。後ろの男たちも同じ気持ちのようだった。

「よくわかった。仲間たちはどういうかはわからないが、俺個人としてではあるものの、お前たちに協力してやる。もちろん敵対しないならだけどな。」
「すまない。恩に着る。」

 俺は事情を理解し、この盗賊たちがただ悪い連中ではないということを理解したうえで仲間になってもらうことにした。この男が言うことが本当ならば、中には魔法が使えたり元商人だった人がいたりと、俺にも徳がある話なので、危険がない限りは利用しない手はない。

「あ、そうだ。まだあんたの名前を聞いてなかった。」
「私はリューズ・ウォール、元カルテラ近衛騎士団副団長だ。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...