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†血の盟約†
不本意ながら
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「…父上、ご多忙の所、失礼致します」
サヴァイスがその美しい姿を留める空間に、息子であるカミュがそれによく似た姿を見せたのは、あれからすぐのことだった。
その時、サヴァイスは、玉座に近い形状の椅子に腰を落ちつけ、何事かを考えるように頬杖をついていたが、カミュがその場に現れると、ふとそれを崩した。
「何用だ、カミュ」
「……」
その、自分によく似た紫の瞳を向けられたカミュは、まるで自分自身にそれを問われているような錯覚に陥った。
…これから父親に向けて話すことは、もしかしたら自らの独白に…
それも、どこか懺悔に近しく、あるいはそれに等しいものなのかも知れない。
…カミュはそれを敏感に感じ取っていた。
だが、それは弱き者の、ただの感傷であると…
無理にその思いを切り捨て、カミュは父親の問いに答えた。
「…実は…、俺が捕らえているあの娘に…」
「子でも出来たか?」
「!…」
サヴァイスは、一片の惑いすらも見せずに、静かに息子に問うた。
それに驚き、その反面で忌々しげに唇を噛んだのは、報告した側のカミュの方だった。
一体この父親は…何をどこまで見通しているのだろう。
カミュの背筋が、自然、凍った。
そんなカミュの反応すら見透かしていたのか、サヴァイスは口元にただ、わずかに冷酷な笑みを浮かべた。
「それで、お前はその子をどうするつもりだ?」
「…例え俺の血を引いていても、今の俺には、子など…必要ありません」
「では、殺めると?」
「出来ればそうしたいのですが…」
カミュは、質問には動揺することもなく、淀みなく答えた。
…すると、サヴァイスは口元にあった笑みを消した。
代わりにその目に確認されたのは、残虐なまでに狡猾な光…!
「子を殺める必要などない」
「…父上?」
真意が分からず、思わず問い返すカミュに、サヴァイスはやおら立ち上がった。
「駒は多い方が良い。母となるあの娘も、ただの人間ではない。それとお前との混血というのであれば、それなりの魔力も見込めよう…」
「!ですが、父上…」
「案ずるな…、カミュ。意外に興味深い子が産まれるやも知れぬぞ…?」
「!」
サヴァイスの目に映った光は、いつの間にか途方もない狂気を含んだものに変化していた。
「…、それに、どうやら子はひとりではないようだ…」
サヴァイスの、どこか独占欲を含んだような低い呟きに、カミュはぎくりとした。
どうやら、唯香のいる空間の魔力の存在を探ったのだろうが、こうまで悉く見通されると、自分の父親でありながら恐怖する。
すると、サヴァイスはそんなカミュの顔色を読み取ったのか、一転してその狂気を消失させた。
「そうあからさまに臆するな、カミュ。お前の子であるなら、我の血も引いている…
その意味は、意義は分かるはずだ」
「…はい、父上…」
カミュはただ、肯定することしか出来なかった。
しかしその一方で、心の中には釈然としないものが残る。
…“殺せないのか”…
脳と心を、その考えばかりが支配している。
…殺められないのかと。
「…父上、お時間をとらせて申し訳ありません。失礼致しました」
感情のくすぶりを無理に押し込め、カミュはそれだけを告げると、その空間を後にした。
…その場に残ったサヴァイスは、再び玉座らしき椅子に自らを落ち着けた。
暗い外を、何気なく見たサヴァイスのその表情には、どこか満足めいたものが混じっていた。
サヴァイスがその美しい姿を留める空間に、息子であるカミュがそれによく似た姿を見せたのは、あれからすぐのことだった。
その時、サヴァイスは、玉座に近い形状の椅子に腰を落ちつけ、何事かを考えるように頬杖をついていたが、カミュがその場に現れると、ふとそれを崩した。
「何用だ、カミュ」
「……」
その、自分によく似た紫の瞳を向けられたカミュは、まるで自分自身にそれを問われているような錯覚に陥った。
…これから父親に向けて話すことは、もしかしたら自らの独白に…
それも、どこか懺悔に近しく、あるいはそれに等しいものなのかも知れない。
…カミュはそれを敏感に感じ取っていた。
だが、それは弱き者の、ただの感傷であると…
無理にその思いを切り捨て、カミュは父親の問いに答えた。
「…実は…、俺が捕らえているあの娘に…」
「子でも出来たか?」
「!…」
サヴァイスは、一片の惑いすらも見せずに、静かに息子に問うた。
それに驚き、その反面で忌々しげに唇を噛んだのは、報告した側のカミュの方だった。
一体この父親は…何をどこまで見通しているのだろう。
カミュの背筋が、自然、凍った。
そんなカミュの反応すら見透かしていたのか、サヴァイスは口元にただ、わずかに冷酷な笑みを浮かべた。
「それで、お前はその子をどうするつもりだ?」
「…例え俺の血を引いていても、今の俺には、子など…必要ありません」
「では、殺めると?」
「出来ればそうしたいのですが…」
カミュは、質問には動揺することもなく、淀みなく答えた。
…すると、サヴァイスは口元にあった笑みを消した。
代わりにその目に確認されたのは、残虐なまでに狡猾な光…!
「子を殺める必要などない」
「…父上?」
真意が分からず、思わず問い返すカミュに、サヴァイスはやおら立ち上がった。
「駒は多い方が良い。母となるあの娘も、ただの人間ではない。それとお前との混血というのであれば、それなりの魔力も見込めよう…」
「!ですが、父上…」
「案ずるな…、カミュ。意外に興味深い子が産まれるやも知れぬぞ…?」
「!」
サヴァイスの目に映った光は、いつの間にか途方もない狂気を含んだものに変化していた。
「…、それに、どうやら子はひとりではないようだ…」
サヴァイスの、どこか独占欲を含んだような低い呟きに、カミュはぎくりとした。
どうやら、唯香のいる空間の魔力の存在を探ったのだろうが、こうまで悉く見通されると、自分の父親でありながら恐怖する。
すると、サヴァイスはそんなカミュの顔色を読み取ったのか、一転してその狂気を消失させた。
「そうあからさまに臆するな、カミュ。お前の子であるなら、我の血も引いている…
その意味は、意義は分かるはずだ」
「…はい、父上…」
カミュはただ、肯定することしか出来なかった。
しかしその一方で、心の中には釈然としないものが残る。
…“殺せないのか”…
脳と心を、その考えばかりが支配している。
…殺められないのかと。
「…父上、お時間をとらせて申し訳ありません。失礼致しました」
感情のくすぶりを無理に押し込め、カミュはそれだけを告げると、その空間を後にした。
…その場に残ったサヴァイスは、再び玉座らしき椅子に自らを落ち着けた。
暗い外を、何気なく見たサヴァイスのその表情には、どこか満足めいたものが混じっていた。
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