11 / 16
11話
しおりを挟む
「失礼ですが、校長先生。それでしたら五組にいる小島君はどういうことでしょうか。勉学において秀でた成績を修めている彼が一組にいないのは、私としては不思議でしょうがないのですが」
一度も言葉を交わしたことがないにもかかわらず、会長が俺のことを知っていたのは意外だった。だが、会長が俺の名前を出したことでみんなが一斉にこちらを向いているのはなんとも居心地が悪かった。
「さすが生徒会長だ。いいところに注目するね。確かに今回のクラス分けは優秀な者から一組に振り分けているが、それじゃ勝負事になった時に初めから結果が見えていてつまらないとは思わないかい? 一組はトランプの七並べで例えたら六と八ばかり持っているような者だ。当たり前に強い。だが七並べではワイルドカードであるジョーカーがあるはずだ。それに該当するのが小島龍君ということだよ。知識は重荷にならない武器となる。研究者の方から一人生徒を選んでくれと言われた時はお陰ですぐに決まったよ」
俺は校長の説明にあんぐりと口を開ける。きっと周りから見れば、さぞアホな顔になっていたことだろう。
ってことはなんだ。本当なら存在したはずの優秀な仲間たちと切磋琢磨できる機会がなくなったうえ、梓を起こす役割を交代できていたかもしれない可能性も奪われたってこと!?
覚えとけよ、研究者どもめ。あとは俺の名前を出しやがった校長も。
はあ、俺がジョーカーとか本当に勘弁してくれ。心の嘆きは体育館の天井へと吸い込まれていった。
★
校長先生の話が終わり教室に戻ったあと。ホームルームを終えた俺は今梓、夏樹、白百合先生と七並べをしていた。白百合先生が校長の七並べの話を聞いていたらやりたくなったと言ってトランプを持ってきたのが始まりなのだが、教師としていいのか、これ。
「校長先生の話、研究と言っていましたが僕たちは去年と変わらずに過ごせばいいってことですよね?」
夏樹は自分の手元からカードを出しながらみんなに聞いていた。七並べはすでに中盤に入っているため、全員会話を交わしながらも視線は手元のカードと机上に出されたカードの間を行ったり来たりしている。
「おそらくね。生徒の学校生活に影響が出るようなことを国も校長も認めることはないはずだ。安心したまえ。でも私もさっきの話初めて聞いたんだよな」
「え? 先生にも事前に伝えられてなかったんですか?」
「いや、初耳だと思って隣のクラスの担任の先生に聞いたら職員会議で言っていたらしい。私あれ基本寝てるから」
大丈夫だろうか、うちの担任……。五組は情報弱者になるんじゃないかと心配する俺の前で先生は悩ましげに眉根を寄せていた。
一度も言葉を交わしたことがないにもかかわらず、会長が俺のことを知っていたのは意外だった。だが、会長が俺の名前を出したことでみんなが一斉にこちらを向いているのはなんとも居心地が悪かった。
「さすが生徒会長だ。いいところに注目するね。確かに今回のクラス分けは優秀な者から一組に振り分けているが、それじゃ勝負事になった時に初めから結果が見えていてつまらないとは思わないかい? 一組はトランプの七並べで例えたら六と八ばかり持っているような者だ。当たり前に強い。だが七並べではワイルドカードであるジョーカーがあるはずだ。それに該当するのが小島龍君ということだよ。知識は重荷にならない武器となる。研究者の方から一人生徒を選んでくれと言われた時はお陰ですぐに決まったよ」
俺は校長の説明にあんぐりと口を開ける。きっと周りから見れば、さぞアホな顔になっていたことだろう。
ってことはなんだ。本当なら存在したはずの優秀な仲間たちと切磋琢磨できる機会がなくなったうえ、梓を起こす役割を交代できていたかもしれない可能性も奪われたってこと!?
覚えとけよ、研究者どもめ。あとは俺の名前を出しやがった校長も。
はあ、俺がジョーカーとか本当に勘弁してくれ。心の嘆きは体育館の天井へと吸い込まれていった。
★
校長先生の話が終わり教室に戻ったあと。ホームルームを終えた俺は今梓、夏樹、白百合先生と七並べをしていた。白百合先生が校長の七並べの話を聞いていたらやりたくなったと言ってトランプを持ってきたのが始まりなのだが、教師としていいのか、これ。
「校長先生の話、研究と言っていましたが僕たちは去年と変わらずに過ごせばいいってことですよね?」
夏樹は自分の手元からカードを出しながらみんなに聞いていた。七並べはすでに中盤に入っているため、全員会話を交わしながらも視線は手元のカードと机上に出されたカードの間を行ったり来たりしている。
「おそらくね。生徒の学校生活に影響が出るようなことを国も校長も認めることはないはずだ。安心したまえ。でも私もさっきの話初めて聞いたんだよな」
「え? 先生にも事前に伝えられてなかったんですか?」
「いや、初耳だと思って隣のクラスの担任の先生に聞いたら職員会議で言っていたらしい。私あれ基本寝てるから」
大丈夫だろうか、うちの担任……。五組は情報弱者になるんじゃないかと心配する俺の前で先生は悩ましげに眉根を寄せていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる