朝に弱い幼馴染は俺に起こされるのをいつもベッドの中で待っている

ハヤサカツカサ

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12話

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「これは厳しいな。私はパスだ」

 先生がカードを出さないことが分かった途端、梓が悲しそうな顔になる。

 「せ、先生。私パスもう使い切っちゃって、出せるカードも……」

 「そう言われてもな。すまない。出せるところがないんだ」

 「うう、私は負け確定か」

 まぁ、自分のカードに続くカードが出された時は顔を輝かせて、逆の時は捨てたれた子犬のようにショボンとしている姿を見れば、おのずと梓が持っているカードは分かるからな。正直梓は最初から敵として眼中にはなかった。

 真の敵は—— 

 「ゲームなのだからそんなに落ち込まなくても。また次頑張りたまえ」

 「そうだよ。今回はたまたまカードに恵まれなかっただけかもしれないし」

  梓を手のひらで転がしながらも表面上は優しい言葉をかけている可能性がある二人だ。負けが確定した梓がカードを並べ終える。かわいそうに。ハートの十かスペードの五を誰かが出してやれば、梓はその先を持っていたようだからもう少し一緒にゲームが楽しめただろう。

 「梓が抜けたってことは次は俺の番か」

 どのカードを出そうかな。ひとまず梓が持っていたカードが場に出されたことで残りの二人が持っているカードをだいぶ絞り込めたし、ひとまずこれでいいか。特に難しく考えず、俺は一枚のカードを場に出す。スペードの五を。

 「あれ?」

 目が点になる梓。

 「どうした?」

 「な、なんでそのカードを今出すの?」

 「何でって止めてたからだよ。スペードの五より先を梓が持ってたってことが分かったからもう止める必要はないから出した」

 他のカードを出してもらうために自分が出せるカードでもあえて出さない。七並べの基本だ。

 「うう、龍の意地悪。はー、私お手洗い行ってきますね」

 席を立つと、教室を出ていく。

 「よし正直者のあぶり出しは終わったな。さぁ、続きを始めよう」

 「あとは嘘つきどもの祭典ですね」

 いや、別にそういうつもりでスペードの五を止めていたわけじゃないんだけどな。俺に続いて夏樹が出し、先生の番になる。すると先生は梓が出ていった、教室の出口を首だけ巡らして確認し始めた。

 なんだろう?  他の先生が見回りに来ないか気になってるのかな?

 誰もいないことが分かると、先生は一枚のカードを出す。ハートの十を。

 あれ?  この人さっき梓に出せるカードがないとか言って申し訳なさそうな顔してなかったっけ!? なんだこの人! 俺も人のこと言えないけどさ。そんな俺の心情を読み取ったのか、先生はこちらを向き、

 「七並べなんだから、敵を欺くのは当たり前だ」

 言い切ってみせる。怖い、怖いよ、この人。
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