13 / 16
13話
しおりを挟む
その後もゲームは続き、夏樹も残念ながら途中で出せるカードが無くなってしまい負けが確定する。残るは俺と先生の戦いとなった。今回のゲームではパスは各々三回までと決めてある。お互いに手元のカードは残り一枚。空いているのはクローバーの一と二で、俺がクローバーの一を持っていた。
パスを使い切っちゃったけど、なんとか乗り切れたな。先生はあと一回残ってるんだっけ? 今更関係ない話か。
悔しいが今回の勝負は先生が一番のようだ。まぁ、途中でリタイアとならなかっただけいいとするか。
「先生の番ですよ」
「あ、そうだな。……パスだ」
「は!?」
「ん?」
あまりに予想外な行動に唖然とする俺の顔を見る先生。今聞き間違えでなければ、この人この局面でパスと言わなかったか。いや、先生が持っているそのカード、確実にクローバの二なんだから出せるはずじゃん!
そんな俺に電撃が走った。
こ、この人わざと全員破産させて途中でリタイアさせる気だ! 悪鬼のような戦法に俺の手は震えるが、こちらに残されている手はない。潔く負けを認めるしかなかった。
「俺の……負けです……」
「いやー、そうか、そうか。では私が一番だな」
この女王様め。なんだか先生が結婚できない理由の一端を垣間見た気がした。
「というか先生、こんなところで遊んでいていいんですか? それとも年齢に比例して休憩が増える校則でも——」
直後俺の鳩尾に目にも止まらぬ速さで、先生の拳が突き刺さる。そのまま膝から崩れ落ちた。
この暴力教師! でも昨今生徒への体罰が問題になる中で、このためらいのなさは逆にすごい。
そこへ手洗いから帰ってきた梓が合流する。
「決着ついたみたいですね? 誰が一番でした?」
「私だ。熊谷の仇は取っておいたぞ」
仇って、あんたハートの十持ってたじゃん。だが、何も知らない梓は喜びの声をあげる。
「ありがとうございます。だから龍がダウンしているんですね」
「いや、それとこれとは関係ない気が……」
夏樹のフォローは俺以外の二人の耳には欠片も入らない。
「それから小島。さっきの話だが遊んでいるわけじゃないぞ、私は。このように立ち振舞っているのには、きちんと理由があるのだよ。君たち三人は今の教師に関する問題を知っているかい?」
そんなのは簡単だ。俺は光の速さで頭に浮かんだ答えをそのまま口に出す。
「この高校に暴力教師がい——、ゴフッ!」
言葉の途中で再びノックアウトされる。もう殴られたくない。レフェリー、頼むから今すぐにテンカウントをとってくれ!
パスを使い切っちゃったけど、なんとか乗り切れたな。先生はあと一回残ってるんだっけ? 今更関係ない話か。
悔しいが今回の勝負は先生が一番のようだ。まぁ、途中でリタイアとならなかっただけいいとするか。
「先生の番ですよ」
「あ、そうだな。……パスだ」
「は!?」
「ん?」
あまりに予想外な行動に唖然とする俺の顔を見る先生。今聞き間違えでなければ、この人この局面でパスと言わなかったか。いや、先生が持っているそのカード、確実にクローバの二なんだから出せるはずじゃん!
そんな俺に電撃が走った。
こ、この人わざと全員破産させて途中でリタイアさせる気だ! 悪鬼のような戦法に俺の手は震えるが、こちらに残されている手はない。潔く負けを認めるしかなかった。
「俺の……負けです……」
「いやー、そうか、そうか。では私が一番だな」
この女王様め。なんだか先生が結婚できない理由の一端を垣間見た気がした。
「というか先生、こんなところで遊んでいていいんですか? それとも年齢に比例して休憩が増える校則でも——」
直後俺の鳩尾に目にも止まらぬ速さで、先生の拳が突き刺さる。そのまま膝から崩れ落ちた。
この暴力教師! でも昨今生徒への体罰が問題になる中で、このためらいのなさは逆にすごい。
そこへ手洗いから帰ってきた梓が合流する。
「決着ついたみたいですね? 誰が一番でした?」
「私だ。熊谷の仇は取っておいたぞ」
仇って、あんたハートの十持ってたじゃん。だが、何も知らない梓は喜びの声をあげる。
「ありがとうございます。だから龍がダウンしているんですね」
「いや、それとこれとは関係ない気が……」
夏樹のフォローは俺以外の二人の耳には欠片も入らない。
「それから小島。さっきの話だが遊んでいるわけじゃないぞ、私は。このように立ち振舞っているのには、きちんと理由があるのだよ。君たち三人は今の教師に関する問題を知っているかい?」
そんなのは簡単だ。俺は光の速さで頭に浮かんだ答えをそのまま口に出す。
「この高校に暴力教師がい——、ゴフッ!」
言葉の途中で再びノックアウトされる。もう殴られたくない。レフェリー、頼むから今すぐにテンカウントをとってくれ!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる