朝に弱い幼馴染は俺に起こされるのをいつもベッドの中で待っている

ハヤサカツカサ

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14話

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 「教師の長時間労働のことでしょうか?」

 「小栗。さすがだな。その通りだ」

 満足げに頷く先生の前で俺は生まれたての子鹿のような震える足で立ち上がり、

 「いやいや。先生前からそんなに仕事してないじゃないで——ガフッ!」

 再び床に倒れ伏す。もうレフェリーとかどうでもいい!  誰か救急車を呼んでくれ!

 「まったくさっきから小島は失礼だな」

 先生はこめかみに指を当て、不満げにつぶやく。確かに俺も失礼だったかもしれないけど、代償が大きすぎないですか。うめく俺の背中をさすりながら夏樹が先生に先ほどの続きを問う。

 「それで先生が僕たちと遊ぶ理由はなんなんですか?」

 「ああ、そうだったな。これから先、教師の労働時間は減らす方向に見直されるだろう。そんな時に私を見てみろ。ほどよく仕事をして、空き時間を見つけてはきちんと休んでいる私は未来の教師のビジネスモデルそのものなのだよ」

 手を大げさに広げ、立ち上がって叫ぶ。どうやら先生は俺と一緒に救急車で病院へ今すぐに行って、脳のMRIやCTを含めた精密検査を受けた方がいいらしい。そんなことを考えていると先生の鋭い眼光が俺を射抜く。

 え?  今頭の中で考えただけで口に出してないよね。

 思いとは裏腹に俺の意識はそこで途絶えた。







 翌朝。いつも通り五時に起床し、五時半に家を出た俺は珍しく夏樹と一緒に登校していた。普段なら一人で歩く味気ない道も友人と歩くだけで景色が変わったように思えるから不思議だ。

 「それでなんでこんな朝早くに起きたんだ?  夏樹の登校時間って、いつも八時くらいだろ」

 「あはは。それが昨日変な時間に寝ちゃったせいで、早くに目が覚めちゃった」

 「なんて普通な理由なはずないよな」

 「うっ!」

 俺の指摘に夏樹は言葉に詰まる。長い付き合いだ。夏樹がこんな時間に起きている理由はなんとなく分かっていたが、確認のために聞いてみる。

 「龍だったらいいか。実はこれを作ってて、昨日徹夜しちゃったんだ」

 通学用のリュックサックから白と黒の丸い物体を取り出す。そいつをはにかみながらモフモフとすると俺に見せてきた。丸い耳に愛らしい瞳。夏樹の手の中には丸々と太ったパンダのぬいぐるみが握られていた。

「…………」

 こいつ黙ってればイケメンなのにな。

 「名前はシャン君だよ」

 うん、黙っててくれないかな。

 「人の趣味をどうこう言うつもりはないけど、夏樹はこのプレス機で上から潰されたパンダを作るために徹夜したのか?」

 「二頭身の可愛いパンダじゃないか!」

 そう言うと夏樹はシャン君に頬ずりを始める。先ほどはああ言ったが、ぬいぐるみの出来は店頭で並んでいても遜色がないぐらい見事なものだった。これが夏樹の本当の姿だ。ぬいぐるみのように柔らかくモフモフしたものや、可愛い小さな子供には目がない。きっとこの卓越した容姿を持っていなければ、警察の方々とお話しする機会はたくさんあっただろう。
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