朝に弱い幼馴染は俺に起こされるのをいつもベッドの中で待っている

ハヤサカツカサ

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15話

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 「龍はこんな時間に毎朝起きているなんてすごいね。昨日はよく眠れた?」

 「眠れたもなにも、俺昨日白百合先生に強制的に昏倒させられたんだけど。でもそのおかげって言っていいのか分からないけど、昨日意識が途絶えて朝目が覚めるまでぐっすりだったよ」

 本当に死んでなくてよかった。誰が運んでくれたのかは知らないが、自室のベッドで目が覚めて朝の日の出を見た時は思わず涙ぐんだほどだ。

 生きてるって素晴らしい!

 「昨日は災難だったね。って喋ってたらもう学校か」

 夏樹の言葉通り話しながら登校したおかげか、いつもより早く着いたように感じられる高校の門を俺たちはくぐる。このまま真っ直ぐ進めば昇降口なのだが、俺の足は斜め左に向かった。

 「龍、そっちは昇降口じゃないよ」
 
 「ああ、分かってる。先に行っててくれ」

 だが夏樹は俺がどこに行くつもりなのか気になるらしく付いてきた。付いてくるのは全然構わなかったが、特に面白いところに行くわけでもないのにいいのだろうか。考えているうちに足は事務室の前へ。

 「おはようございます。小島です」

 「おはよう、小島君。それじゃいつも通り頼むよ」

 事務員のおじさんに頷くと、俺は鍵の束を受け取る。夏樹はこれから何をするつもりなのか見当もつかないという顔をしていた。

 「本当に面白いことなんて起こらないぞ」

 「いいよ、いいよ。いつもあんまり教室にいない龍が朝何をやっているのか気になるし」

 事務室を出ると三号館にある昇降口に向かい、靴から上靴に履き替える。そのまま俺は一階から三階にかけて閉まっている教室の鍵を開けて行った。これが梓を起こすことに加えて俺の日課となっていた。

 「こんなのパシリ同然じゃないか」 

 夏樹は愕然とした表情でいうが、俺は首を横に振った。確かに面倒と思うこともある。だがメリットもあるのだ。

 「朝限定だけど、こうやって鍵の管理を任せてもらえるおかげで三号館にある図書室を自由に使えるんだよ」

 旭高校は自称進学校ということもあり、図書室を通って行くことができる部屋に自習用のブースが備え付けられているのだ。

 「そうか。龍はいつも朝ここで勉強しているから教室にいないんだね」

 「そういうこと。この時間は俺にとって唯一平和な時間なんだ」

 梓という怪獣に脅かされることのない貴重な時間だ。さっそく勉強を始めようとすると、夏樹も隣のブースに腰掛けようとする。

 「夏樹も勉強するのか?」

 「いや、僕はもう一匹ここで作るとするよ」

 「別に構わないけど、教室でやってもいいんじゃないか?」

 別に裁縫の音程度なら勉強の妨げにならないから全く問題ないのだが、教室だったら先生が来るギリギリの時間まで制作できるだろうに。

 「僕の趣味はあまり人に見せたくないんだ」

 それもそうか。俺は頷くと、カバンから数学の参考書を取り出し、ページを捲り始めた。
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