蒼穹のケラヴノス

にゃるしまろ

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プロローグ

四年後

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~4年後~

side シエロ

眩しい…
目を開けると、木々の間から溢れた光が僕に降り注いでいた。

『シエロやっと目を覚ましたのね。さっさと起きなさい!』

街の中心にある大木は昼寝にはもってこいで、俺はよくここで日向ぼっこして寝ている。
街のヴァンパイア士族の人たちは、日の光が苦手見たいだけど、俺はハーフヴァンパイアなので特に苦にはならない。
まぁ、力は全然でないけど…。

『ねぇ、聴いてるの?うんとかすんとかいいなさいよ!』

さっきから横でうるさいのは幼馴染で彼女の名はデイジーという。
彼女の父はティターニオス家の当主で、12氏族からなるこの街を統治する貴族の一つだ。

普通は王族等が治めるのだろうが、この街は別名流民の街とも呼ばれていて、沢山の種族がごちゃまぜで生活している。

『無視?無視なのね!せっかくこんなに可愛い幼馴染がアフタヌーンコールしてあげてるというのにっ!』

こいつは自分で言ってて恥ずかしくないのだろうか…。
実際、デイジーの外見は容姿端麗そのもので、透き通るような白い肌に、まっすぐなオレンジの長い髪からは、ハイエルフらしい長い耳の先が覗いている。
大きな 茶色の瞳を細くし、少し頬を染めて笑う姿を見ると、まぁ確かにこんな美人はそうそういないのだろうと思うが、なにぶんその言動はお嬢様からはかけ離れている気がする。

さて、幼馴染の顔も拝んだことだし、もう一眠りするか…。

『デイジー、おやすみ』

そう言って芝生にうつむせに倒れこもうしたのだが、なぜか芝生はどんどん遠ざかっていき、そこには青筋を額に浮かべた幼馴染が…

『あの…デイジーさん?怒ってます?』

『怒ってるわよぉぉぉ!精霊魔法風精霊の戯れシルフィダンス!』

『ちょっ、それ洒落なんないからぁぁぁ』

風と共に女の子たちの笑い声が聞こえる。
俺の悲鳴は風の精霊の笑い声にかき消されたようだ。
そして俺の体は悪戯な妖精達により大木に何度も打ち付けられて、そのあと僕は意識を手放した…



眩しい…
目を開けると、木々の間から溢れた光が僕に降り注いでいた。
とても長い間寝ていた気がする。

『シエロやっと目を覚ましたのね。さっさと起きなさい!』

こいつは誰のせいで寝てたと思ってるんだろうか?

『可愛い幼馴染が起こしてくれて幸せだよ』

皮肉たっぷりにそう告げるとデイジー憎き幼馴染は満足そうに微笑んだ。まぁ、機嫌が直ったのならいいか…

『今日は何の日でしょうか?』

『ん?デイジーの誕生日は明日だよね。今日は何もないんじゃないの?』

『ふふふ、甘いわねシエロ。6歳になる前にすることがあるでしょう?』

『ああ、祝福の儀式か…』


この大陸では祝福の儀式なるものがある。
祝福の儀式とは5歳になった子供に女神様からの祝福を授ける儀式だ。
突然だけどこの世界には種族の違い以外にも個人を特徴付ける個性が二つある。

一つは血族能力ブラットアビリティーというもので、主に種族に依存した能力を得る。
これは生まれつきの能力で、種族ごとに似通っているが差異は多少ある。
例えばさっきの精霊魔法はエルフ族の血族能力だけど、デイジーは風と水の精霊魔法しか使えない。(二種類使えるだけでも凄まじいことらしいが…)
デイジーのお父さんは火の精霊魔法が使えるらしいし、逆にお母さんは精霊魔法は使えないけれどとても優れた目と弓術を持っているらしい。
このように種族が同じでも同じ血族能力というわけではないのだ。
 
そしてもう一つは固有能力ユニークアビリティーだ。
これは5歳以上の年齢になると一度だけ神殿で祝福が受けられるというものだ。
大抵は家事や生活に有利となる能力が祝福として与えられる。
有名なのは着火や湧水の能力で薪に火をつけたり、飲み水を用意したりといったものだ。
しかし、ごく稀に珍しい祝福を授かることがある。
たとえば、この国の王様は騎士王という固有能力により戦闘能力が格段と上昇し、さらに率いる兵士の能力も底上げされるという能力のおかげで帝国を退け、この地に王国を築いたと言われてる。
そういった強力な能力が授かれるかもしれないとあって、祝福の儀式とは当人にとっては一大イベントなのだ。


『その…何というか…ありがとうね。僕のために一年も待ってくれて…』


『べっ、別にシエロのためじゃないんだからっ!あんまり早い時期に竜騎士とかになっても困るかなーって思っただけなのよ。お礼なんて言わなくてもいいんだからねっ!』

『デイジーの気にいる祝福が貰えるといいね。』

さっき説明した祝福の儀式には一つ制約がある。それは15歳までに祝福の儀を受ける場合1000万タラントのお金が
かかることだ。
どうしてこんな大金がかかるのかというと、かつてネツヨシという小国の将軍が、敵国の大群が攻めてきた時に湧水の能力を使って敵軍を壊滅させたことに由来する。

ダグデ山の攻防戦と言われ今にまで語り継がれているその戦いにより、固有能力や血族能力にLevelなるものがあり、また個人個人にはステータスなる力や足の速さなどの力を示す指標があることが明らかになったのだった。

つまりネツヨシ将軍は飲み水を出すだけの能力のレベルを最大近くまであげることで、ダムの決壊かと思わせるほどの激流を生み敵軍を壊滅させたのだ。

それ以来祝福の儀式は15歳以上のみ受けるということとなり、それより前に受ける場合は高額の寄付をすることになっている。
また、各能力のLevelやステータスの確認は100万タラントとなっている。


エルフ氏族長の1人娘であるデイジーは5歳から受けることもできたが俺に気を使って一年間受けるのを遅らせたからだ。

デイジーは素直ではないけれど優しいところがある。
こういう妙に優しい所や本当に美味しそうにご飯を食べる所、はしゃぐ姿やそれとともに跳ねる髪、頬を染めて楽しそうに笑う顔。
俺はデイジーを天使のようだと思うけれど、なんだか悔しいからデイジーには言ってない。

俺は一緒に祝福の儀式を受けようと半年間必死にバイトしたが結局140万タラントしかたまらなかった。
くっ、待ってろよデイジー来年辺りには俺も受けてやるからな。

ちなみに5歳でバイトしてるのかって言われるかもしれないけれど、エルフやヴァンパイアは長命種と呼ばれ五歳にもなれば人間で言うところの15歳くらいの精神を有しているから一応認められている。

だけどやっぱり違和感はあるようで、普通はよっぽどのことがない限りバイトなんてしないだろう。
無論デイジーはしていない。
俺も母さんの知り合いがたまたま仕事を紹介してくれたから装飾を手がける工房の奥で働けているのだ。
しゃべり言葉の時は僕と言うのもそんな名残なのだ。


『ねぇ、ところでシエロ、今夜首都に向けて馬車を走らせるのだけど、神殿で着るドレスを買ってないのよねー。よかったら荷物持ちしてくれない?』

やばい、超絶行きたくない。
デイジーの買い物に付き合ったら最後、いつの間にか朝になる。

『持ってあげたいんだけど明日のデイジーの誕生日パーティの買い出しを母さんから頼まれてるんだ。ごめんね』

『えー、そんなの後でいいじゃない。終わったら買い出しも付き合ってあげるからぁ。生着替えもあるのよ?ポロリもあるかもしれないわよ?』

『それ覗いたら僕の首がポロリするんでしょ……。デイジーのドレスはとっても気になるけど明日の誕生日会までの楽しみにしておくよ。デイジーも料理楽しみにしててよ!その時に見せ合いっこしよう!』

『そうね、それもいいかもしれないわね。』

よし、だてに2歳から一緒にいるわけじゃないのだ!
最近はなんとなく機嫌の取り方がわかってきた気がする。

 
その後俺はデイジーに『明日の19時に』と別れを告げて市場へと走るのだった。

 
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