人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん

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選ばれた分野

学院では、年に一度、魔法研究発表が行われる。

上級生だけでなく、希望者は下級生でも参加できる制度だ。評価には直接影響しないが、教師や王都の研究者の目に留まる機会でもある。

だからこそ、参加者は慎重に分野を選ぶ。

攻撃魔法。
戦術構築。
古代魔法解析。

どれも人気が高い。
俺は、迷っていた。

「れおん、なに、だす?」

アルトが聞いてくる。

「……まだ」

正直、強みは分かっている。

制御。
補助。
構築の安定。

でも、それは地味だ。
評価され始めた今だからこそ、無難に“分かりやすい成果”を出すべきなのかもしれない。

その夜、公爵に相談した。

「派手なものは、いらない」

即答だった。

「お前が積み上げてきたものを、示せ」

「真似できない部分をな」

その言葉で、腹が決まった。

発表当日。

実技場の一角に、簡易研究区画が設けられる。俺の発表題目は――

《複合補助魔法における魔力最適化構築》

文字だけ見れば、誰も足を止めない。

実際、最初は人が少なかった。

「……なんだ、これ」

通りがかった上級生が、首を傾げる。

俺は、淡々と説明した。

魔力量が少なくても、複数の補助効果を同時に安定維持する方法。
無駄な消費を削り、持続時間を伸ばす構築。

実演で、三つの補助魔法を同時展開する。

光は弱い。
でも、一切揺れない。

「……崩れない?」

「信じられないな」

ざわめきが起きる。

教師が一人、足を止めた。

次に、もう一人。

気づけば、区画の前に人が集まっていた。

「これ、前線向きじゃない」

誰かが言う。

「後方支援でも、研究でも使える」

「魔力効率が、異常だ」

評価の言葉が、少しずつ形を持つ。

俺は、そこで初めて言った。

「人族は、魔力が少ない」

静かに。

「だから、無駄を許されない」

空気が、ぴんと張る。

「でも、その分」

「“形”に、敏感になれる」

誰も、笑わなかった。

発表後、教師から声をかけられる。

「研究班に入る気はあるか」

「王都の魔法庁が、興味を示している」

一気に、現実味が増す。

その様子を、少し離れた場所から見ていた人物がいた。

王子だ。

「なるほど」

満足そうに、呟く。

「君は、派手に勝たない」

「だが、確実に“必要とされる位置”を取る」

それは、称賛だった。

放課後。

アルトが、少し不機嫌そうだった。

「……れおん」

「なに?」

「みんな、よってくる」

耳が、ぴくりと動く。

「……やだ?」

聞き返すと、アルトは少し考えてから、言った。

「やだ」

即答だった。

「でも……れおん、すごい」

複雑そうな顔。

その様子が、少し可笑しくて、少し愛しかった。

「となり、いる?」

俺がそう言うと、アルトは強く頷いた。

「いる」

それは、まだ恋じゃない。

でも、選び合っている感覚が、確かにあった。

この日を境に、俺の周りの立場ははっきり変わった。

人族だから、ではなく。
公爵家だから、でもなく。

――レオンだから。

その事実が、ゆっくりと学院に浸透していく。
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