押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery

文字の大きさ
21 / 43

キレイな夜空

しおりを挟む


それから夜。
食事を終えてしばらく経った頃、一真さんは私に言った。

「気晴らしに外の空気を吸いに行かないか」

きっと私のことを考えて提案してくれたんだろう。

「はい……」

私は返事をして、一真さんと外に出ることにした。

一真さんは私を連れ出すと車に乗せた。

今日は運転手さんはいなくて一真さんとふたりきりの時間。
どこに行くんだろう?

そんなことを考えながらも、目的地につくまでの時間はとても楽しかった。

しばらく走らせると、車は緑が広がる郊外に止まった。

「すごい、都会にもこんな場所があるんですね……」

「ああ、偶然見つけた穴場なんだ。この間見つけた時、澪と見たいと思って」

私のこと、思い出してくれたんだ……。

嬉しいな。

「降りようか」

そう言って、一真さんが先に車を降りると、助手席のドアを開け、私に手を差し出してくれた。

私はそっと彼の手を握り、車から降り立つ。

外は周りに人がおらず、静かでとても空気が良かった。

「いい空気ですね……」

ふたりきりの空間に私はほっとした。

今日は色々あった。
不安になってしまうこともあったけど、ぼーっと周りの景色を見ていると、今日あったことを忘れられる気がする。

遠くのビルを眺めてほっと心を落ちつかせていると。

「上を見てごらん」
「えっ」

一真さんに言われるがまま空を眺める。
すると星空が、まるで宝石を散りばめたように輝いていた。

「すごい……」

息を呑む。

こんなにキレイな景色が広がっているなんて――。

一真さんが、私の隣に立つ。

「ここは星がよく見えるんだ」
「ステキ……」

自然と頬が緩む。
こんなに綺麗な星空、初めて見た。

今までずっと外に出ることを禁じられていたから、ステキな場所があることも知らない。

見るものが全部新しくて釘付けになってしまった。

「一真さんはどんな時にここに来るんですか?」

「仕事で行き詰まった時が多いな。悩んでここにやってくると、帰る頃にはちっぽけな悩みだったと思うことができるんだ」

「そんなステキな場所に私も連れてきて下さったんですね……」

「キミと一緒に見たら、悩んでいたことを忘れて帰りそうだ」

一真さんの冗談にくすりと笑う。
するとふと、強い風が私たちの間を吹き抜けた。

 「寒くないか?」

気遣うような声に、私は小さく首を振る。

本当は少し寒いけれど、もう少しここにいたかった。

「でも、風邪を引かれたら困るな……」

 そう言った瞬間、ふわりと温かなものが肩にかかった。

 「……!」

 それは一真さんのジャケットだった。

 「い、いけません。それじゃあ一真さんが風邪をひいてしまいます」

「俺は大丈夫だ。寒さには強い方だからな」

低く、優しい声が耳に届く。

 「ありがとう……ございます」

お礼を告げたら、彼の手がそっと私の肩にまわった。

温もりが、じんわりと伝わる。

一真さんに触れられている……。

それが恥ずかしくて、私は表情を見られないように小さくうつむいた。

「嫌だったら、遠慮なく言ってくれ。キミは気持ちを我慢しようとする節があるからな。無理はさせたくないんだ」

「いえ、嫌とかじゃなくて……その、不安なんです」

肩にかかったジャケットをぎゅっと握った。

「私はその、経験も……無いですし……本当に一真さんにふさわしい女性になれるでしょうか?」

不安を口にすると一真さんは優しい口調で告げる。

「俺にふさわしい相手になろうとする必要はないよ」

そういいながらさらりと私の髪を撫でる。

「それに……知らないことは俺と知っていけばいい。他の男と知る必要はないだろう?」

 ──ドキン。

いつも包み込むような言葉をかけてくれる優しい一真さん。

そんな一真さんに私も触れたいと思ってしまった。

そっと身を寄せて彼に抱きつく。

抱きつく方法とか順序とか、そんなのは分からない。

勢いで抱きつくと、彼は声をあげた。

「おっと……」

「す、すみません……!もっと一真さんの近くにいきたくて私……勢いで!」

「参ったな……まさかキミから近づいてくれるとは思わなかった」

一真さんは今、どんな顔をしているんだろう。
そっと顔を見ようとすると、ぎゅっと隠すように抱きとめられる。

「あっ」
「ダメだぞ」

「顔、見たかった……」

「この心臓の鼓動で我慢してくれ」

一真さんの胸にぐっと耳元を押し付けると、ドクン、ドクンと早い鼓動が聞こえてきた。

一真さんでも緊張したりするんだ……。

キレイな夜空に静かな空間。
一真さんに包まれている時が一番幸せを感じる。

不安な気持ちがすうっと引いていくようだった。 

「また来ような」

 「はい……」


これから私は一真さんと家族になる。
楽しい時間、幸せなひと時をたくさん積み上げていくんだ──。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。 ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。 そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。 彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。 「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...