押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery

文字の大きさ
40 / 43

愛おしい朝

しおりを挟む


「んっ……」

静かに瞬きを繰り返しながら、ゆっくりと意識が浮上していく。
淡い朝の光がカーテン越しに差し込み、ぼんやりとした視界の中に温もりを感じた。

「あ……」

隣には、一真さんがいた。
穏やかな寝息を立てながら、すぐそばで眠っている。

昨夜の記憶が鮮明に蘇り、頬がじんわりと熱くなった。

改めて、同じベッドの中にいることが不思議で……でも、心の底から嬉しい。

ゆるく乱れた前髪が額にかかっていて、無防備な寝顔がいつもより少し幼く見えた。

「……一真さん」

そっと名前を呼んでみる。
すると。

「……ん……澪……」

寝ぼけたような声が聞こえてゆっくりと瞼を開いた一真さんは、まだ眠たげな目でこちらを見つめた。

「おはようございます」
「……おはよう」

彼は微笑みながら、腕を伸ばして私の髪を指先で梳く。

「よく眠れたか?」
「はい……とても」

「それなら良かった」

一真さんが小さく笑い、私の頬にそっと手を添えた。

そのまま、ふわりと唇が重なる。

「……んっ……」

軽い口づけのはずなのに、心臓が跳ねる。昨夜のことが思い出されて、思わず彼の胸に額を押し当てた。

「起きようか」
「はい!」

それから私たちはベッドから起き上がった。

近くに有名なパン屋さんがあるとのことで、一緒に歩いてパン屋さんまで向かうとパンを買って朝ご飯に食べることにした。

「たくさん買っちゃいましたね!」

「朝は普段食べないんだが、澪がいるとどうしても食が進んでしまうな」

「一真さん……」

たくさん買ったパンを半分したり、美味しいコーヒーを入れてふたりで食べる。

その時間もすごく幸せな時間だった。

「今日は家具を見に行こうか」
「はい!」

この日は一真さんも一日休みだったため一緒に外出をして家具や必要なものを揃えることにした。

そして一真さんの運転でたどり着いたのは、都心にある高級百貨店だった。

車を止めて降りると、すぐにグローブを着けたドアマンが扉を開けてくれ、館内へとエスコートされる。私たちが向かったのは、最上階の特別サロンフロア。そこは一般の売場とは一線を画した、予約制のラグジュアリー空間だった。

エレベーターを降りると、控えめながら格式ある調度品と季節の生花が並ぶロビーに、スーツ姿のスタッフが待ち構えていた。

「凰条様、お待ちしておりました。本日はお二人の新居の家具選びとのこと、心を込めてご案内させていただきます」

「よろしくお願いします」

 一真さんに合わせて私もお辞儀をする。

案内された特別サロンは、静謐な空気に包まれていた。

展示されている家具やインテリア用品は、すべて厳選された逸品ばかり。日本や海外の名工による手仕事が光る品々に囲まれて、どれを手に取ってもため息が出るような美しさだった。

フロア全体が貸し切りで、担当のスタッフが付きっ切りで案内してくれる。

こんな場所、来たことがない……。

やっぱり一真さんって、私たち御堂家とは格が違うんだなぁ……。

「気に入ったのがあったら教えてほしい。なんでも選んでいいから」

 一真さんが私の背中にそっと手を添えて囁く。

 私たちは、ゆっくりと店内を回りながら様々な商品を見ていった。

揃えたのは足りなかった食器と、インテリア用品だった。

「ソファーももし、買い替えたかったら変えてもいいんだぞ」

「いえ……一真さんが選んでくださったもの、とても気に入っていますから」

 最初に生活に困るだろうと一真さんが選んでくれた家具は、どれも大切に使っている。新品だし、デザインも好みでわざわざ変える必要なんてない。

「キミは欲がないな……」
 「そうですかね?」

 十分買わせていただいたけどな……。

一真さんとお揃いの食器や、同じ色のクッション。

一緒に暮らしてるって感じがして、買い物さえ楽しい。

「まぁ……楽しそうにしてくれてるなら良かった」
「楽しいです、すごく!」

私の反応を見て、一真さんはふっと笑った。

今まで、自分が何かを選んで買い物をするなんて経験がなかった。

だから毎回、本当に私のセンスで選んでしまっていいのか心配になってしまうんだ。

 でも一真さんは、私が商品を選んでいる姿を愛おしそうに目を細めて見つめてくれる。

「これはどうですか?」って尋ねると、「すごくいいな」「キミに似合う」「あの家に馴染みそうだって」全部肯定する意見をくれる。

それがすごく嬉しくて、自分という存在がその人にあることを知って、幸せに思うんだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。 ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。 そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。 彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。 「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...