43 / 43
結婚式
しおりを挟む扉の向こうから、華やかな音楽が流れてくる。
高鳴る胸の鼓動を落ち着かせようと、そっと息を整えた。
今日は私と一真さんの結婚式の日。
すべてのいざこざが終わり、たくさんの困難を乗り越えて迎えられたこの日はまた特別なものになる。
あの日、御堂家を出てからたくさんのことが変わった。
御堂家からは、その後、正式に接触を断つと通知が届いた。
どうやら、会社はたたむための事業整理に追われているらしい。
今後お父様とお母様は私の前に姿を現すことはない。
寂しいけれど少しスッキリした気持ちになった。
「澪様」
控室の扉がノックされ、スタッフが静かに声をかけた。
「新郎様がお待ちです」
頷きながら、私は自分の手を見つめる。
純白のグローブに包まれた指先が、かすかに震えていた。
ドレスの裾をそっと持ち上げ、扉の向こうへと一歩を踏み出す。
すると、黒のタキシードに身を包み、凛とした姿勢で立つ彼の姿があった。
──ドキン。
なんてカッコイイんだろう……。
この人が私の旦那様になる人だなんて……。
そんな日が来るだなんて、今でも信じることができない。
一真さんの瞳は、ただまっすぐに私を見ていた。
「キレイだ……澪」
その眼差しがすべてを語っている。
愛おしいと言いたげな表情で私の手をそっと握る。
「キミと出会えたこと、幸せに思うよ」
「私もです……一真さん」
心の底から思った言葉を彼に告げた。
一真さんはあのあと正式に私にプロポーズをしてくれた。
私に似合いそうだと言って買ってくれたダイヤモンドの指輪にジェット機を飛ばして見せてくれた夜景。
そのどれもがキレイに輝いていて幸せな気持ちになった。
『キミを見つけた時、キラキラと輝いて見えた』
そう告げながら渡してくれた指輪は今、この会場にある。
一真さんを愛してる。
「私と出会ってくれてありがとうございます」
「こちらこそ」
私は胸の奥がじんと熱くなりながら、笑顔を向けた。
「それじゃあ行こうか」
バージンロードの先、そこには眩いほどの光景が広がっていた。
ふたりで一歩、一歩と歩いていく。
天井の高い壮麗な式場。
シャンデリアが煌めき、白と金を基調とした装飾が上品な輝きを放っている。
長いバージンロードの両側には、数百人もの招待客が並び、みなが私たちを見つめていた。
こんなにも……たくさんの人が祝福してくれている。
豪華な装花が両脇を飾り、場内には優雅な生演奏が響く。
本当に、私がこんな場所に立っていいのかな……。
いつものクセでまた一瞬、不安がよぎる。
けれど、その思いはすぐに消えた。
隣にいる一真さんの方を見つめると、笑顔が返ってくる。
大丈夫。
彼と一緒なら不安に思うことは何もない。
歩みに合わせて、音楽が優しく流れていく。
神聖な誓いの言葉を交わし、指輪をはめる瞬間。
一真さんがそっと私の手を取り、薬指に純白のリングを滑らせた。
きらりと光る指輪は美しくて涙が出そうになる。
「これから先、どんな時もキミの隣にいると誓うよ」
私は、涙をこらえながら微笑んだ。
「……私も、一真さんとともに生きていきます」
永遠を誓う、この日。
私の未来は、もう迷いなくこの人と共にある。
そして――。
「誓いのキスを」
司祭の言葉に、一真さんがそっと私のベールを上げた。
甘く、優しいキスが降りてくる。
私は静かに目を閉じ、その温もりを受け入れた。
拍手と祝福の歓声が響く中、一真さんはそっと私の耳元で囁いた。
「愛してるよ、澪」
「私もです、一真さん」
私はこの瞬間を一生忘れないと誓った。
暗い世界の中から唯一私を見つけ出してくれた人。
幸せにはなれない人生から手を引っ張り上げてくれた人。
そんな一真さんと共に、私はこれからも幸せな時間をひとつずつ重ねていく──。
END
75
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる