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第1章
9~10話
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9話:鏡の部屋の呪縛
ロビーに戻ると、九条雅人はすでに参加者全員が揃っていることを確認し、満足そうに頷いた。
他の参加者たちの顔にも、選んだ部屋に対する戸惑いや好奇心、そして少しの緊張が入り混じっている。
特に、田中剛と鈴木亮太は、互いに顔を見合わせて、どこか青ざめた表情をしていた。彼らが選んだ部屋も、何か「いわくつき」なのだろうか。
九条はゆっくりと参加者たちを見回し、その視線が俺、藤原ハルキで止まった。
「さて、皆、それぞれの部屋を選んだようだな。特に、藤原君」
俺は思わず背筋を伸ばした。
「君が選んだ部屋は……なかなか良い選択だ」
九条はそう言って、薄気味悪く笑った。その笑みに、俺の胸に嫌な予感が広がる。
「あの部屋はね、このホテルの中でも特に曰く付きでしてね……いわゆる心霊スポットとして、一部では有名なんですよ」
心霊スポット──その言葉に、俺は全身の血の気が引くのを感じた。高橋健太が、隣でゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「特に、あの鏡張りの部屋は一番ヤバイと言われている。なんでも、午前2時になると、出るらしい」
九条は、まるで世間話でもするかのようにつらりとそう言った。
しかし、その言葉の恐ろしさに、俺は足元がぐらつくような感覚に襲われた。出る、とは一体何を指しているのか。幽霊か? それとも、もっと恐ろしい何かか?
「ま、あくまで噂ですけどね。ただ、役者たるもの、どんな状況に置かれても動じてはならない。特に、本物の恐怖に直面した時、いかに普通を装えるか。それこそが、君たちの演技力が試される瞬間だ」
九条の言葉は、俺たちに選択の余地を与えない。恐怖を乗り越えろ。演技力を見せろ。そう言われているような気がした。
彼の目には、俺たちの動揺を試すような、冷たい光が宿っていた。
「いいかね、諸君。これから、君たちは様々な試練に直面するだろう。だが、何があっても、普通に装え。怯えを見せるな。それが、俳優としての、そして人間としての、君たちの真価を問うことになる。分かったかね?」
九条は、有無を言わせぬ強い口調でそう言い放った。俺はただ、何も言えずに頷くしかなかった。心臓は激しく鼓動し、手のひらには嫌な汗が滲んでいる。
午前2時。あの鏡だらけの部屋で、一体何が起こるというのか。恐怖と不安が入り混じり、俺はただ、無事に夜が明けることを願うばかりだった。
ハルキは、鏡の部屋で午前2時を乗り越えることができるのでしょうか?
10話:午前2時の訪問者
ロビーでの自己紹介と九条の不気味な忠告の後、俺たちはそれぞれの部屋へと戻るよう指示された。
俺の足は、まるで鉛のように重かった。あの鏡張りの部屋で、午前2時を待つ。考えるだけで背筋が凍る。
部屋に戻ると、俺はすぐに電気をつけた。部屋全体を覆う鏡が、煌々と光を反射し、視界の全てを自分の姿で埋め尽くす。普段ならナルシストの部屋と揶揄しそうなものだが、今はただただ不気味だった。
リュックからスマホを取り出し、時間を確認する。まだ午前0時を過ぎたばかりだ。午前2時まで、あと2時間もある。どうやってこの恐怖と向き合えばいいんだ?
ベッドに座り、なるべく鏡を見ないように壁際を向いた。しかし、壁も天井も鏡なので、どこを向いても自分の顔や部屋の様子が映り込む。落ち着こうと深呼吸を繰り返すが、心臓の音だけがうるさく響いた。
「大丈夫、大丈夫だ。ただの噂だろ? 九条さんが俺たちを試してるだけだ」
何度も自分に言い聞かせる。俳優になるためだ。どんな状況でも平常心を保つ。それが演技力だと、九条は言った。
しかし、時間は容赦なく過ぎていく。そして午前1時……。部屋の明かりが、妙に暗く感じられる。
外からは、風が吹き荒れるような音や、時折、何かが軋むような音が聞こえてくる。この廃ラブホテル自体が生きているように感じられた。
午前1時50分。スマホの画面を見つめ、カウントダウンするように時間を確認する。あと10分で、午前2時だ。緊張で全身が硬直し、冷や汗が止まらない。頼むから、何も起こらないでくれ……。
そして、午前2時。
その瞬間、部屋の明かりが、チカチカと点滅し始めた。
心臓が飛び出しそうになる。息が詰まる。ガタガタと震えそうになる体を必死に抑え込む。九条の言葉を思い出す。「何があっても普通に装え。それが演技力だ」。
俺は呼吸を整えようと努力し、目の前の鏡に映る自分の顔を見つめた。必死に平静を保とうとするが、鏡の中の俺の顔は、青ざめて、恐怖に歪んでいる。
その時だ。
俺の背後、つまりは鏡の中の、俺の真後ろに――何かが映り込んだ。
それは、ぼんやりとした人影のように見えた。だが、その輪郭は曖昧で、はっきりと捉えることができない。鏡の中のそれは、ゆっくりと、しかし確実に、俺の方へ近づいてくるように見えた。
俺は恐怖で振り返ることができない。足がすくみ、声も出ない。ただ、鏡の中の「それ」が、じわじわと俺のすぐ後ろまで迫っているのを、視覚で、肌で感じていた。
息を殺し、ただただ鏡の中の「何か」を見つめる。それが、一体何なのか。幽霊なのか。それとも、九条が仕掛けた「試練」なのか。
次の瞬間、鏡の中の「それ」が、俺の肩に手を置いた──。
ロビーに戻ると、九条雅人はすでに参加者全員が揃っていることを確認し、満足そうに頷いた。
他の参加者たちの顔にも、選んだ部屋に対する戸惑いや好奇心、そして少しの緊張が入り混じっている。
特に、田中剛と鈴木亮太は、互いに顔を見合わせて、どこか青ざめた表情をしていた。彼らが選んだ部屋も、何か「いわくつき」なのだろうか。
九条はゆっくりと参加者たちを見回し、その視線が俺、藤原ハルキで止まった。
「さて、皆、それぞれの部屋を選んだようだな。特に、藤原君」
俺は思わず背筋を伸ばした。
「君が選んだ部屋は……なかなか良い選択だ」
九条はそう言って、薄気味悪く笑った。その笑みに、俺の胸に嫌な予感が広がる。
「あの部屋はね、このホテルの中でも特に曰く付きでしてね……いわゆる心霊スポットとして、一部では有名なんですよ」
心霊スポット──その言葉に、俺は全身の血の気が引くのを感じた。高橋健太が、隣でゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「特に、あの鏡張りの部屋は一番ヤバイと言われている。なんでも、午前2時になると、出るらしい」
九条は、まるで世間話でもするかのようにつらりとそう言った。
しかし、その言葉の恐ろしさに、俺は足元がぐらつくような感覚に襲われた。出る、とは一体何を指しているのか。幽霊か? それとも、もっと恐ろしい何かか?
「ま、あくまで噂ですけどね。ただ、役者たるもの、どんな状況に置かれても動じてはならない。特に、本物の恐怖に直面した時、いかに普通を装えるか。それこそが、君たちの演技力が試される瞬間だ」
九条の言葉は、俺たちに選択の余地を与えない。恐怖を乗り越えろ。演技力を見せろ。そう言われているような気がした。
彼の目には、俺たちの動揺を試すような、冷たい光が宿っていた。
「いいかね、諸君。これから、君たちは様々な試練に直面するだろう。だが、何があっても、普通に装え。怯えを見せるな。それが、俳優としての、そして人間としての、君たちの真価を問うことになる。分かったかね?」
九条は、有無を言わせぬ強い口調でそう言い放った。俺はただ、何も言えずに頷くしかなかった。心臓は激しく鼓動し、手のひらには嫌な汗が滲んでいる。
午前2時。あの鏡だらけの部屋で、一体何が起こるというのか。恐怖と不安が入り混じり、俺はただ、無事に夜が明けることを願うばかりだった。
ハルキは、鏡の部屋で午前2時を乗り越えることができるのでしょうか?
10話:午前2時の訪問者
ロビーでの自己紹介と九条の不気味な忠告の後、俺たちはそれぞれの部屋へと戻るよう指示された。
俺の足は、まるで鉛のように重かった。あの鏡張りの部屋で、午前2時を待つ。考えるだけで背筋が凍る。
部屋に戻ると、俺はすぐに電気をつけた。部屋全体を覆う鏡が、煌々と光を反射し、視界の全てを自分の姿で埋め尽くす。普段ならナルシストの部屋と揶揄しそうなものだが、今はただただ不気味だった。
リュックからスマホを取り出し、時間を確認する。まだ午前0時を過ぎたばかりだ。午前2時まで、あと2時間もある。どうやってこの恐怖と向き合えばいいんだ?
ベッドに座り、なるべく鏡を見ないように壁際を向いた。しかし、壁も天井も鏡なので、どこを向いても自分の顔や部屋の様子が映り込む。落ち着こうと深呼吸を繰り返すが、心臓の音だけがうるさく響いた。
「大丈夫、大丈夫だ。ただの噂だろ? 九条さんが俺たちを試してるだけだ」
何度も自分に言い聞かせる。俳優になるためだ。どんな状況でも平常心を保つ。それが演技力だと、九条は言った。
しかし、時間は容赦なく過ぎていく。そして午前1時……。部屋の明かりが、妙に暗く感じられる。
外からは、風が吹き荒れるような音や、時折、何かが軋むような音が聞こえてくる。この廃ラブホテル自体が生きているように感じられた。
午前1時50分。スマホの画面を見つめ、カウントダウンするように時間を確認する。あと10分で、午前2時だ。緊張で全身が硬直し、冷や汗が止まらない。頼むから、何も起こらないでくれ……。
そして、午前2時。
その瞬間、部屋の明かりが、チカチカと点滅し始めた。
心臓が飛び出しそうになる。息が詰まる。ガタガタと震えそうになる体を必死に抑え込む。九条の言葉を思い出す。「何があっても普通に装え。それが演技力だ」。
俺は呼吸を整えようと努力し、目の前の鏡に映る自分の顔を見つめた。必死に平静を保とうとするが、鏡の中の俺の顔は、青ざめて、恐怖に歪んでいる。
その時だ。
俺の背後、つまりは鏡の中の、俺の真後ろに――何かが映り込んだ。
それは、ぼんやりとした人影のように見えた。だが、その輪郭は曖昧で、はっきりと捉えることができない。鏡の中のそれは、ゆっくりと、しかし確実に、俺の方へ近づいてくるように見えた。
俺は恐怖で振り返ることができない。足がすくみ、声も出ない。ただ、鏡の中の「それ」が、じわじわと俺のすぐ後ろまで迫っているのを、視覚で、肌で感じていた。
息を殺し、ただただ鏡の中の「何か」を見つめる。それが、一体何なのか。幽霊なのか。それとも、九条が仕掛けた「試練」なのか。
次の瞬間、鏡の中の「それ」が、俺の肩に手を置いた──。
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