いつかこの日々が懐かしく思えるのだろうか〜永遠のヒロイン〜

ハチ

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いつかこの日々が懐かしく思えるのだろうか

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全部知っていた。
私は彼らから好かれる方法を、全部知って、覚えていた。
大好きなゲームで、何度もプレイしたから、バッドエンドルートをも把握していた。

あまりに好き過ぎて、ゲームの世界に入ってウハウハしてみたいと想像したこともあった。
だけど、本気で願っていたわけがなかった。

ゲームの世界に飛ばされたと気付いた時は、正直戸惑った。
夢を見ているのだと思ったけれど、夢にしては長過ぎて、元いた世界のことが気になり過ぎた。
家族とか、学校とか、誰にも見せられないスマホのデータとか。
私は全然準備ができていなかった。

数日引きこもった末、色々悩んでも仕方がないと思った私はせっかくだからゲームの世界を存分に楽しんでやることにした。クリアすれば元の世界に戻れるかもと期待もしていた。



ゲームのキャラたちは想像していたよりも綺麗で、恰好良くて、同じ人間とは思えなかった。
元の世界のことなどどうでもよくなってしまうほどの破壊力だった。


私は最も推していたキャラのルートを軸に、主要キャラ全員から好かれるように振る舞った。

勉強とか、魔力とか、そういうのはヒロイン補正でどうにかなった。

一番興奮したのは悪役令嬢断罪シーンだ。
ゲームをしている時も色々思うことがあったものの、実際に嫌がらせをされると結構精神的にきた。
ストーリー上必要なことだとわかっていたけど、正直本気でムカついていた。
だからこそ、悪役令嬢が堕ちるのを見て、いい気味だと思った。
その後あの子がどうなったかは興味がない。考えても仕方がないことだった。

あの子が退場してもストーリーは進んでいった。
イベントは目白押しだった。
そして推しキャラと結ばれた。

推しキャラと結婚して、それでも他のキャラは私を諦めきれずにいる。
事あるごとに会いに来て、贈り物をくれて、キャラ同士喧嘩をして、それからみんなで一緒に美味しいものを食べて、そんな感じの毎日を永遠に繰り返している。

憧れていた世界で、憧れていた人たちに囲まれて、私はたぶん幸せ者なのだろう。






それにして、このゲームはいったいいつ終わるのか。
もう飽きたから、帰りたい。
クリアしても戻れなかった。
死ねば現実に戻れるかもしれない。
だけど戻れなかったらどうなる。
帰りたいという気持ちよりも、死にたくないという気持ちのほうが強くて、色々考えると何もできなくなった。


バッドエンドは把握していたつもりで、間違いなくハッピーエンドを選択したつもりだった。

世界のすべてを手に入れて、世界の薄さに気づいた私は、もはや何がハッピーで、何がバッドなのかわからない。そしてエンドが見えていない。


こんなことならば、もっと早くに退場していたほうが良かったのかもしれない。

私を殺してくれる可能性があった悪役令嬢は、もう世界のどこにもいなかった。
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