悪役令息(冤罪)が婿に来た

１．王命でいきなり婚約？

「こ、これは一体どういう…？」
今私の家はまさしく困惑一色だった。

それもそのはず家に突然王家からの手紙が届きその内容が辺境伯の1人娘である私とヒューゴ・ガンダー公爵令息の婚約だったのである。


「驚いたね。本当に婚約を破棄したのか」「あら…ガンダー公爵家と言えばこの国にとって最高戦力の家、そんな家との婚約をあっさりと？」

そう婚約破棄が正式に行われた事自体おかしい。

ガンダー公爵家はこの国の矛と言っても差し支えない武力を誇る家。


現当主であるアイザック・ガンダー公爵はまさしく武人と呼ぶに相応しい人でどんな相手であろうと臆せず戦いを挑みいつも勝利を収めている。

つまり文字通り"無敗の男"
その血を継いだ長男のヒューゴ様と次男のオーウェン様もまた才能のある人達だ。


そんな家が王族と婚約を結ぶのはごく当たり前の事だと思う。
婚約破棄に理由があったとしてもたった一晩であっさりと破棄されたなんて異常事態だ。

「百歩譲って、あの理由で婚約破棄が正式になされたとして、どうして私と婚約しろなんて王家から命令がくるの？」

そこも全く分からない。
公爵と辺境伯の婚約がありえない訳ではない問題は【守銭奴令嬢】と呼ばれている私が相手だと言う事。


「恐らくだが彼と同年代で婚約者がいない令嬢がイヴァだけだったんだろうな」
「あー…そう言えばあの方私と同い年だったぁ」ヒューゴ様も20歳、なるほどそれで私だったのか。

「ねぇあなた？彼はイヴァに相応しい人かしら？」「ちょっ！？お母様！どちらかというと私があの方に相応しいかどうかでは！？」
ヒューゴ様は決して嫌がらせする人ではないそれは知っている。


ただ小説の内容が思い出せない。
友達に勧められて読んだはずなのに。
ただ覚えているのは彼がやってもいない嫌がらせの罪で断罪され悪役令息と呼ばれてしまった事。

確かそれは話の序盤だったはず、その後彼がどうなったのか分からない。

「あの方は嫌がらせをする人じゃないと思います…愛し愛される仲になれるかは分かりませんが彼を受け入れたいです」

しっかり前を見てそう伝えると両親は頷き笑ってくれた。

「そうだな。私もそう思うよ」
「ふふっ言い切っちゃったわねイヴァ…貴女が決意したなら私達は何も言わないわ。



早速準備に取り掛かりましょ！」

母の言う準備とはヒューゴ様をこの家に受け入れる準備の事。


「国王陛下とどんなやり取りがあったか分かりませんが、せめて心を休めて頂ける場所にしたいです」
「あら良いじゃない！お花でいっぱいにしちゃいましょうか！」
「いや、花が好きとは限らないと思うよ」


家族3人で彼を迎える為の準備を進めていき2週間後。

ヒューゴ・ガンダー公爵令息が家に来た。

顔色が悪く明らかに訳あり感を醸し出しながら。