25 / 99
第1章
25話 フィーナとの別れ
しおりを挟む
フィーナの母親に薬を飲んでもらってから、1週間ほどが経過した。
彼女の体調は良好だ。
もう問題ないだろう。
堀と塀の作成も、村の若い男たちとともに完成させた。
そこらの魔物程度であれば、堀と塀は突破できない。
村の安全性は格段に増したと言えるだろう。
そろそろ、この村を離れてもいい頃合いだ。
この村に滞在して、もう1か月ほどが経過する。
その間に、この世界の最低限の常識を学ぶことができた。
これ以上長居しても、最強を目指す上で得るものはない。
強さなど忘れて、フィーナとともにゆっくり暮らしていくのも魅力的ではあるが……。
やはり、最強への憧れが捨てきれない。
「リキヤさん……。とうとう、旅立たれてしまうのですね……」
フィーナが悲しそうな顔をしてそう言う。
俺が考えていることは、彼女に筒抜けだったようだ。
「ああ。俺はまだ武者修行の旅の途中なんだ」
正確に言えば、これから武者修行の旅が始まるところだが。
地球や日本という単語を出してみたことがあったが、彼女たちには通じなかった。
武者修行の旅の途中という設定で通していくのが無難だろう。
「私から見れば、リキヤさんは十分にお強いです。でも、それだけじゃ満足されないのですよね」
「そうだな。すまん。俺は最強を目指しているんだ。まだまだ俺の知らない強敵がいるかもしれん」
地球では、俺のライバルはもはやいなかった。
しかしこの世界では、何やら魔法だとか気術だとかいう不可思議な技術があるようだ。
俺を倒せるような強者がいる可能性がある。
「本音を言えば、行ってほしくありません。でもリキヤさんなら、Sランク冒険者になったり、武功を挙げて叙爵されたりするかもしれません。こんな辺鄙な村で収まる人じゃないですよね……」
フィーナが悲しそうな顔でそう言う。
「そんな顔をするな。俺の旅が落ち着いたら、きっと迎えにくるさ。それまで待っていてくれ」
最強を目指す旅も、いつかは終わりがくる。
ついちょっと前までは、加齢による衰えで引退も考えていたくらいだ。
この世界にきて何故か体の調子がすこぶるいいので、引退は取り消したわけだが。
最強を目指す旅が終われば、後は余生を楽しむことになる。
フィーナといっしょに子どもを育てるのもいい。
たっぷり金を稼いでおいて、大きな家に済み、うまい酒と料理を堪能していこう。
「きっと迎えにきてくださいね。あんまり待たせちゃうようだと、他の人の子どもを生んでいるかもしれませんよ?」
「フィーナが望んだことならそれでも構わない。そうでなければ、子どもごと引き取ってやる。俺は全てを受け入れよう」
旅の途中で、俺が死んでしまう可能性ももちろんある。
俺より強いやつにやられるのであれば、俺にとっては本望だ。
しかし、そんな俺の帰りをいつまでも待ち続けることになるフィーナは不憫だ。
彼女は彼女で、幸せな人生を送っておいてほしい。
「ふふ。冗談ですよ。私はずっと待ってますから。それに……もうできているかもしれませんし」
「む? それもそうか。……いつかと言わず、一年以内には一度顔を見せるようにしよう。子どもの顔も知らんまま放ったらかしにするのも悪い」
「ええ。よろしくお願いしますね。きっと元気な赤ちゃんを生みますから」
フィーナがそう言う。
赤ちゃんができているかはもちろんまだわからないが、できている可能性も十分にある。
これからたくさん稼いで、一年以内には一度帰ってこないとな。
「さて。旅立つとは言っても、まだ少し日にちはある。あの行商人一家や捕縛した盗賊、それに村長たちといっしょに街まで行く予定だからな。彼らと予定を合わせる必要がある。出発の日まで、毎晩可愛がってやるぞ」
「えへへ。望むところです。最後に、一度くらいはリキヤさんに勝ってみせます!」
フィーナがそう意気込む。
俺は夜の戦いでは別に最強を目指しているわけではないが、それなりに場数は踏んできている。
そうやすやすと負けるわけにはいかない。
彼女の体調は良好だ。
もう問題ないだろう。
堀と塀の作成も、村の若い男たちとともに完成させた。
そこらの魔物程度であれば、堀と塀は突破できない。
村の安全性は格段に増したと言えるだろう。
そろそろ、この村を離れてもいい頃合いだ。
この村に滞在して、もう1か月ほどが経過する。
その間に、この世界の最低限の常識を学ぶことができた。
これ以上長居しても、最強を目指す上で得るものはない。
強さなど忘れて、フィーナとともにゆっくり暮らしていくのも魅力的ではあるが……。
やはり、最強への憧れが捨てきれない。
「リキヤさん……。とうとう、旅立たれてしまうのですね……」
フィーナが悲しそうな顔をしてそう言う。
俺が考えていることは、彼女に筒抜けだったようだ。
「ああ。俺はまだ武者修行の旅の途中なんだ」
正確に言えば、これから武者修行の旅が始まるところだが。
地球や日本という単語を出してみたことがあったが、彼女たちには通じなかった。
武者修行の旅の途中という設定で通していくのが無難だろう。
「私から見れば、リキヤさんは十分にお強いです。でも、それだけじゃ満足されないのですよね」
「そうだな。すまん。俺は最強を目指しているんだ。まだまだ俺の知らない強敵がいるかもしれん」
地球では、俺のライバルはもはやいなかった。
しかしこの世界では、何やら魔法だとか気術だとかいう不可思議な技術があるようだ。
俺を倒せるような強者がいる可能性がある。
「本音を言えば、行ってほしくありません。でもリキヤさんなら、Sランク冒険者になったり、武功を挙げて叙爵されたりするかもしれません。こんな辺鄙な村で収まる人じゃないですよね……」
フィーナが悲しそうな顔でそう言う。
「そんな顔をするな。俺の旅が落ち着いたら、きっと迎えにくるさ。それまで待っていてくれ」
最強を目指す旅も、いつかは終わりがくる。
ついちょっと前までは、加齢による衰えで引退も考えていたくらいだ。
この世界にきて何故か体の調子がすこぶるいいので、引退は取り消したわけだが。
最強を目指す旅が終われば、後は余生を楽しむことになる。
フィーナといっしょに子どもを育てるのもいい。
たっぷり金を稼いでおいて、大きな家に済み、うまい酒と料理を堪能していこう。
「きっと迎えにきてくださいね。あんまり待たせちゃうようだと、他の人の子どもを生んでいるかもしれませんよ?」
「フィーナが望んだことならそれでも構わない。そうでなければ、子どもごと引き取ってやる。俺は全てを受け入れよう」
旅の途中で、俺が死んでしまう可能性ももちろんある。
俺より強いやつにやられるのであれば、俺にとっては本望だ。
しかし、そんな俺の帰りをいつまでも待ち続けることになるフィーナは不憫だ。
彼女は彼女で、幸せな人生を送っておいてほしい。
「ふふ。冗談ですよ。私はずっと待ってますから。それに……もうできているかもしれませんし」
「む? それもそうか。……いつかと言わず、一年以内には一度顔を見せるようにしよう。子どもの顔も知らんまま放ったらかしにするのも悪い」
「ええ。よろしくお願いしますね。きっと元気な赤ちゃんを生みますから」
フィーナがそう言う。
赤ちゃんができているかはもちろんまだわからないが、できている可能性も十分にある。
これからたくさん稼いで、一年以内には一度帰ってこないとな。
「さて。旅立つとは言っても、まだ少し日にちはある。あの行商人一家や捕縛した盗賊、それに村長たちといっしょに街まで行く予定だからな。彼らと予定を合わせる必要がある。出発の日まで、毎晩可愛がってやるぞ」
「えへへ。望むところです。最後に、一度くらいはリキヤさんに勝ってみせます!」
フィーナがそう意気込む。
俺は夜の戦いでは別に最強を目指しているわけではないが、それなりに場数は踏んできている。
そうやすやすと負けるわけにはいかない。
2
あなたにおすすめの小説
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる