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55話 嫉妬
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私が二年生になって三か月が経過した。
アリシアさんも、あれ以降は特に異変がない。
特に大きな事件もなく平穏に過ごしていた。
授業も楽しい。
充実した毎日を送っている。
「イザベラ様ぁ。今日もお美しいですぅ~」
「ありがとう、アリシアさん。あなたの可愛らしさには敵わないわよ」
「そんなことありませんっ! イザベラ様にこそ、わたしは憧れております」
「ふふ、ありがと」
アリシアさんとはすっかり仲良しになった。
少し距離感が近いけれど、まあいいかと思っている。
「イザベラ様に、一つお願いしたいことがありまして……」
「あら、何かしら? 私にできることなら協力するわよ」
「来月の実地訓練のことです。わたし、実は初めてで不安で……。もしよろしかったら、イザベラ様と一緒に行きたいなって思っていまして……」
「実地訓練って、確か薬草採集だったかしら?」
「はい! それで、あの、イザベラ様なら安心できるかなと思いまして!」
薬草は、実家の畑で散々栽培してきた。
野生の薬草を採取したこともある。
私にとっては何でもない実地訓練だ。
「うーん、そうねぇ。じゃあ、一緒に行く?」
「はいっ!! ありがとうございます! 楽しみです!!」
「私も楽しみにしているわ。でも、あまり無理はしないようにね」
「はい、分かりました!!」
嬉しそうな顔で笑うアリシアさん。
と、そこでまた別の生徒が現れた。
「ここにおられましたか、イザベラ殿」
「ごきげんよう、オスカー様。どうかなさいました?」
「いえ、ただの挨拶ですよ」
「そうですか」
「ところで、イザベラ殿。来月の実地訓練ですが、よかったら御一緒いただけませんでしょうか?」
挨拶のついでに切り出しているように見えるが、こっちが本題だろう。
彼はこういう駆け引きが得意なのだ。
おそらくカインなら、真っ向から正直に申し込んでくる。
エドワード殿下なら、班の申請用紙に私の名前を勝手に記入して提出することもあり得る。
フレッドは、上目遣いでお願いしてくるだろう。
まあ、この三人は私と学年が違うから、今回の実地訓練には無関係なのだけれど。
「もちろん、構いませんよ。よろしくお願いします」
「えっ……」
私の返答を聞いて、何故かアリシアさんが驚いている。
「アリシアさん?」
「わ、わたしの方が先にイザベラ様と約束していたんですけど……、その……」
アリシアさんが消え入りそうな声でそう言う。
「ああ、そうでしたか。ですが、班の人数は二人から五人まで認められていますので、問題ないでしょう」
オスカーは笑顔でそう言った。
しかし、アリシアさんの表情は浮かない。
どうしたというのか。
「アリシアさん? 大丈夫? 具合が悪いようなら保健室に行く? 付き添うわよ」
「だ、だいじょうぶですっ! わたし、失礼しますっ!」
アリシアさんは、逃げるように走り去って行った。
本当に何があったんだろう。
「イザベラ殿、そろそろ授業が始まりますよ」
「はい、それでは教室に戻りましょうか」
私はオスカーと並んで歩き出す。
ふと視線を横に向けると、物陰からアリシアさんがこちらの様子を窺っていることに気が付いた。
「(オスカー・シルフォード……。邪魔な奴めぇ……。許さないわよぉ……)」
彼女は何事かを小さく呟くと、どこかへ行ってしまった。
さっきの様子といい、やっぱり心配だなぁ……。
アリシアさんも、あれ以降は特に異変がない。
特に大きな事件もなく平穏に過ごしていた。
授業も楽しい。
充実した毎日を送っている。
「イザベラ様ぁ。今日もお美しいですぅ~」
「ありがとう、アリシアさん。あなたの可愛らしさには敵わないわよ」
「そんなことありませんっ! イザベラ様にこそ、わたしは憧れております」
「ふふ、ありがと」
アリシアさんとはすっかり仲良しになった。
少し距離感が近いけれど、まあいいかと思っている。
「イザベラ様に、一つお願いしたいことがありまして……」
「あら、何かしら? 私にできることなら協力するわよ」
「来月の実地訓練のことです。わたし、実は初めてで不安で……。もしよろしかったら、イザベラ様と一緒に行きたいなって思っていまして……」
「実地訓練って、確か薬草採集だったかしら?」
「はい! それで、あの、イザベラ様なら安心できるかなと思いまして!」
薬草は、実家の畑で散々栽培してきた。
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私にとっては何でもない実地訓練だ。
「うーん、そうねぇ。じゃあ、一緒に行く?」
「はいっ!! ありがとうございます! 楽しみです!!」
「私も楽しみにしているわ。でも、あまり無理はしないようにね」
「はい、分かりました!!」
嬉しそうな顔で笑うアリシアさん。
と、そこでまた別の生徒が現れた。
「ここにおられましたか、イザベラ殿」
「ごきげんよう、オスカー様。どうかなさいました?」
「いえ、ただの挨拶ですよ」
「そうですか」
「ところで、イザベラ殿。来月の実地訓練ですが、よかったら御一緒いただけませんでしょうか?」
挨拶のついでに切り出しているように見えるが、こっちが本題だろう。
彼はこういう駆け引きが得意なのだ。
おそらくカインなら、真っ向から正直に申し込んでくる。
エドワード殿下なら、班の申請用紙に私の名前を勝手に記入して提出することもあり得る。
フレッドは、上目遣いでお願いしてくるだろう。
まあ、この三人は私と学年が違うから、今回の実地訓練には無関係なのだけれど。
「もちろん、構いませんよ。よろしくお願いします」
「えっ……」
私の返答を聞いて、何故かアリシアさんが驚いている。
「アリシアさん?」
「わ、わたしの方が先にイザベラ様と約束していたんですけど……、その……」
アリシアさんが消え入りそうな声でそう言う。
「ああ、そうでしたか。ですが、班の人数は二人から五人まで認められていますので、問題ないでしょう」
オスカーは笑顔でそう言った。
しかし、アリシアさんの表情は浮かない。
どうしたというのか。
「アリシアさん? 大丈夫? 具合が悪いようなら保健室に行く? 付き添うわよ」
「だ、だいじょうぶですっ! わたし、失礼しますっ!」
アリシアさんは、逃げるように走り去って行った。
本当に何があったんだろう。
「イザベラ殿、そろそろ授業が始まりますよ」
「はい、それでは教室に戻りましょうか」
私はオスカーと並んで歩き出す。
ふと視線を横に向けると、物陰からアリシアさんがこちらの様子を窺っていることに気が付いた。
「(オスカー・シルフォード……。邪魔な奴めぇ……。許さないわよぉ……)」
彼女は何事かを小さく呟くと、どこかへ行ってしまった。
さっきの様子といい、やっぱり心配だなぁ……。
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