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57話 薬草採取
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「この辺りかしらね」
私達は、森の奥へとやってきた。
森の中は静まり返っていて、鳥のさえずりや虫の声が響いている。
木々の間から差し込む木漏れ日が美しい。
「では、手分けをして探していきましょう」
「……はい」
オスカーの提案に、アリシアさんは小さく返事をした。
「それじゃあ、行きましょうか。アリシアさん、オスカー様」
私は二人の背中を押すようにして、草むらの中へ入っていく。
「ふえぇ~。これが薬草なんですね」
アリシアさんは、足元に生えている白い花を興味深げに見つめている。
「そうね。これは解熱剤の材料になるの」
「すごいですねぇ」
アリシアさんの目がキラキラと輝いていた。
可愛いなぁ。
思わず笑みがこぼれてしまう。
「イザベラ殿、これを見てください。珍しい植物を見つけましたよ。イザベラ殿はこういうのに詳しかったですよね」
オスカーは、地面に生えた紫色の花を手に取った。
「これは、毒消し草よ。これも材料になるの」
「おおっ! 流石です。詳しいのですね」
「ま、まあね」
私は七歳の頃から、畑仕事に邁進してきた。
重視していたのは魔力を回復させる系統の薬草だが、それ以外についてもある程度知識がある。
特に、毒消し関係の薬草には詳しい。
なぜなら、フレッドから毒を盛られたり毒剣で刺されたりすることを警戒しているからだ。
まあ、彼の母親を魔乏病から救ってからというもの、そんな気配は一切ないのだけれど。
「私も負けていられません。もっと、たくさん見つけて見せます」
アリシアさんは、気合を入れた様子で薬草探しを始めた。
「は、早い……」
そのあまりの手際の良さに、私は感嘆のため息を漏らした。
彼女は、次々と目ぼしい素材を集めていく。
しかも、採ったそばから枯れないように魔法を掛けているようだ。
光魔法の応用だね。
凄いなぁ。
これなら、すぐに必要な分を確保できそうだ。
「おっと。さすがはアリシア殿ですね。素晴らしい手際です」
「……はい」
オスカーの褒め言葉にも、アリシアさんは浮かない顔をしている。
どうしたんだろう?
やっぱり何かあるのかしら?
私は首を傾げる。
「アリシアさんは本当に凄いわね。入学試験の成績は芳しくなかったようだけれど……。ここ最近のテストでは、好成績を修めたと聞いているわよ?」
「は、はいっ! そうなんです。わたし、イザベラ様に教えていただいたおかげです。ありがとうございます!」
アリシアさんは、満面の笑顔を浮かべた。
……うん、やっぱり可愛いなぁ。
「うーん、私の教え方なんて大したことないと思うけど」
私は謙遜してみせる。
「いえ、イザベラ様のおかげで、たくさんのことを学べています。本当です。イザベラ様は、わたしの目標です」
アリシアさんは、真剣な表情で言った。
「その通りですね。イザベラ殿の教え方は本当に素晴らしい。私が氷魔法の腕前を伸ばすことができたのも、イザベラ殿のご教授があってこそです」
オスカーまでもがそんなことを言い出す。
「そ、そう? そこまで言われると照れちゃうわね」
私は頭を掻く。
「……オスカーさんも、イザベラ様にお世話になったのですか?」
「ええ、その通りです。それが何か?」
「……いえ、何でもありません……」
アリシアさんの様子がおかしい。
なんだか落ち込んでいるみたいだ。
「アリシアさん、どうかしたの? 体調でも悪いのかしら?」
「いいえ、大丈夫です。少し考え事をしていました」
「そう。それなら良いんだけど」
何だろう。
何かがおかしい気がする。
私は違和感を抱きつつも、薬草の採取を続けていったのだった。
私達は、森の奥へとやってきた。
森の中は静まり返っていて、鳥のさえずりや虫の声が響いている。
木々の間から差し込む木漏れ日が美しい。
「では、手分けをして探していきましょう」
「……はい」
オスカーの提案に、アリシアさんは小さく返事をした。
「それじゃあ、行きましょうか。アリシアさん、オスカー様」
私は二人の背中を押すようにして、草むらの中へ入っていく。
「ふえぇ~。これが薬草なんですね」
アリシアさんは、足元に生えている白い花を興味深げに見つめている。
「そうね。これは解熱剤の材料になるの」
「すごいですねぇ」
アリシアさんの目がキラキラと輝いていた。
可愛いなぁ。
思わず笑みがこぼれてしまう。
「イザベラ殿、これを見てください。珍しい植物を見つけましたよ。イザベラ殿はこういうのに詳しかったですよね」
オスカーは、地面に生えた紫色の花を手に取った。
「これは、毒消し草よ。これも材料になるの」
「おおっ! 流石です。詳しいのですね」
「ま、まあね」
私は七歳の頃から、畑仕事に邁進してきた。
重視していたのは魔力を回復させる系統の薬草だが、それ以外についてもある程度知識がある。
特に、毒消し関係の薬草には詳しい。
なぜなら、フレッドから毒を盛られたり毒剣で刺されたりすることを警戒しているからだ。
まあ、彼の母親を魔乏病から救ってからというもの、そんな気配は一切ないのだけれど。
「私も負けていられません。もっと、たくさん見つけて見せます」
アリシアさんは、気合を入れた様子で薬草探しを始めた。
「は、早い……」
そのあまりの手際の良さに、私は感嘆のため息を漏らした。
彼女は、次々と目ぼしい素材を集めていく。
しかも、採ったそばから枯れないように魔法を掛けているようだ。
光魔法の応用だね。
凄いなぁ。
これなら、すぐに必要な分を確保できそうだ。
「おっと。さすがはアリシア殿ですね。素晴らしい手際です」
「……はい」
オスカーの褒め言葉にも、アリシアさんは浮かない顔をしている。
どうしたんだろう?
やっぱり何かあるのかしら?
私は首を傾げる。
「アリシアさんは本当に凄いわね。入学試験の成績は芳しくなかったようだけれど……。ここ最近のテストでは、好成績を修めたと聞いているわよ?」
「は、はいっ! そうなんです。わたし、イザベラ様に教えていただいたおかげです。ありがとうございます!」
アリシアさんは、満面の笑顔を浮かべた。
……うん、やっぱり可愛いなぁ。
「うーん、私の教え方なんて大したことないと思うけど」
私は謙遜してみせる。
「いえ、イザベラ様のおかげで、たくさんのことを学べています。本当です。イザベラ様は、わたしの目標です」
アリシアさんは、真剣な表情で言った。
「その通りですね。イザベラ殿の教え方は本当に素晴らしい。私が氷魔法の腕前を伸ばすことができたのも、イザベラ殿のご教授があってこそです」
オスカーまでもがそんなことを言い出す。
「そ、そう? そこまで言われると照れちゃうわね」
私は頭を掻く。
「……オスカーさんも、イザベラ様にお世話になったのですか?」
「ええ、その通りです。それが何か?」
「……いえ、何でもありません……」
アリシアさんの様子がおかしい。
なんだか落ち込んでいるみたいだ。
「アリシアさん、どうかしたの? 体調でも悪いのかしら?」
「いいえ、大丈夫です。少し考え事をしていました」
「そう。それなら良いんだけど」
何だろう。
何かがおかしい気がする。
私は違和感を抱きつつも、薬草の採取を続けていったのだった。
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