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78話 三通の手紙

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 秋祭りを控えたある休日。

「ううーん……」

 私は悩んでいた。
 それはもう真剣に考えていた。

「どうしたんですか、姉上?」

 フレッドがそう尋ねてくる。
 ここは私の部屋だが、弟の彼は休日になるとよく入り浸りにくるのだ。

「うん……」

「悩み事ですか?」

「まあ、そんな感じ……」

「何でも相談に乗りますよ!」

「ありがとう。でも、これは自分で解決したいことなのよ」

「そうなんですか? 残念です……」

 私はフレッドと会話をしながら、頭を悩ませていた。

(どうして、こんなことに……)

 私は自室の机の上に置いた三通の手紙を見ながら、頭を抱えていた。
 そこには、秋祭りに一緒に行かないかという誘いの手紙が置かれていた。
 差出人は、それぞれエドワード殿下、カイン、オスカーだった。

(今年はアリシアさんと約束しているのよねぇ……。この三人、去年みたいに口頭で誘ってくれたら、やんわりと断ったのに!)

 手紙には、三人共、私と二人で行きたいと書いてあった。
 もちろん、全員断るつもりだ。
 私の体は一つしかないしね。
 だけど、どうやって断ればいいんだろう。
 手紙には、それぞれ王家、レッドバース子爵家、シルフォード伯爵家の家紋が入っていた。
 これを無碍に扱うことはできない。
 去年のお誘いよりも、今年のお誘いの方がずっと思い意味を持つ。

(思い切って無視する? ううん、そんなことできるはずがないわね)

 この手紙を無視すると、それはそれで問題になりそうだ。
 王族や貴族にとって、社交辞令というのはとても大事なものだ。
 手紙を無視されるということは、相手にする価値もないということになってしまう。
 下手すると、貴族家同士の争いに発展する可能性もある。

「ううーん……」

「姉上、大丈夫ですか?」

「うん、問題ないわ……」

「さっきから、険しい顔をしていますよ?」

「ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたのよ」

 私は慌てて笑顔を作った。

「姉上、やはり僕に話してみてください。何か力になれるかもしれません」

「そうねぇ……。でも、この内容はなぁ……」

 三人の男性からの秋祭りへのお誘い。
 これはつまり、将来の結婚を見据えてという話でもある。
 恋愛事の一種という見方もできる。
 弟には相談しづらい事柄だ。

「あの聡明な姉上がここまで悩まれるとは……。僕にできることは……」

 フレッドが顎に手を当てながらブツブツと言っている。
 その様子はとても可愛らしく見える。
 見た目はイケメンなのに仕草が可愛いとか反則すぎるでしょう。
 乙女ゲームの世界だから仕方ないか。
 私は思わず苦笑してしまうのだった。
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