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132話 イザベラの豹変
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一ヶ月後――。
王立学園の女子寮にて。
「イザベラお嬢様、朝でございます」
イザベラは、お付きのメイドの声で目を覚ました。
「…………」
イザベラは仏頂面でゆっくりと起き上がる。
アディントン侯爵領にいた幼少期から、彼女は日常的に早起きしてポーションの材料を栽培するための畑仕事に精を出していた。
王立学園の女子寮で生活するようになってからも、大きくは変わらない。
交渉の末、学園の敷地の一角の管理権を手に入れ、薬草園を作ったのだ。
朝早くに起きることは苦ではない。
むしろ好きなくらいで、朝になると自ら起きて着替えを済ませるほどだ。
だが、この一ヶ月で彼女の生活リズムは大きく変わっていた。
「おはようございます、イザベラ様」
「……おはよう」
イザベラは挨拶を返してから、ベッドを降りる。
「お召し物の準備は整っております」
「…………」
イザベラは無言で鏡台の前に座る。
すると、背後に回ったメイドが櫛を手に取り、寝癖のついた髪を丁寧に直していく。
「本日のご予定ですが、一限目は第一講義室で、二限目は大講義室での授業となっております」
「そう」
イザベラは興味なさげに呟く。
今までの彼女は、自ら主体的に行動し、積極的に学を深めてきた。
しかし、今の彼女からはそういった積極性が全く感じられない。
「イザベラお嬢様、朝食の用意ができております」
「……」
イザベラは再び無言で席に座ると、黙々と用意された食事を口に運ぶ。
些細な味の変化にも気づき、隠し味の一つ一つに感動していたイザベラはもういない。
今はただ機械的に食べているだけだ。
「もういいわ。下げてちょうだい」
「よろしいのですか? まだ残されているようですが……」
「二度言わせないで。下げなさい」
「は、はい。かしこまりました」
イザベラの高圧的な言い方に、メイドは慌てて皿を下げる。
そして、入れ替わるように別のメイドがやってきた。
「紅茶をお持ちしました」
「…………」
イザベラは無言でティーカップを受け取る。
彼女はひと口飲むと、小さく息を吐いて言った。
「……安い茶葉ね」
「も、申し訳ありません。すぐに替えを――」
「結構よ」
イザベラはティーカップを傾ける。
そして、冷めた目つきのまま、紅茶の残りを床にぶちまけた。
「……」
ポタッポタッと雫が滴り落ちる音だけが部屋に響く。
「掃除しなさい」
「は、はい……」
まるで傲慢な貴族のようなイザベラの振る舞いに、メイドは怯える。
イザベラは侯爵家令嬢なので、この態度は必ずしも不自然とまでは言えない。
だが、長年仕えてきた主人の豹変ぶりに戸惑いを隠せなかったのだった。
王立学園の女子寮にて。
「イザベラお嬢様、朝でございます」
イザベラは、お付きのメイドの声で目を覚ました。
「…………」
イザベラは仏頂面でゆっくりと起き上がる。
アディントン侯爵領にいた幼少期から、彼女は日常的に早起きしてポーションの材料を栽培するための畑仕事に精を出していた。
王立学園の女子寮で生活するようになってからも、大きくは変わらない。
交渉の末、学園の敷地の一角の管理権を手に入れ、薬草園を作ったのだ。
朝早くに起きることは苦ではない。
むしろ好きなくらいで、朝になると自ら起きて着替えを済ませるほどだ。
だが、この一ヶ月で彼女の生活リズムは大きく変わっていた。
「おはようございます、イザベラ様」
「……おはよう」
イザベラは挨拶を返してから、ベッドを降りる。
「お召し物の準備は整っております」
「…………」
イザベラは無言で鏡台の前に座る。
すると、背後に回ったメイドが櫛を手に取り、寝癖のついた髪を丁寧に直していく。
「本日のご予定ですが、一限目は第一講義室で、二限目は大講義室での授業となっております」
「そう」
イザベラは興味なさげに呟く。
今までの彼女は、自ら主体的に行動し、積極的に学を深めてきた。
しかし、今の彼女からはそういった積極性が全く感じられない。
「イザベラお嬢様、朝食の用意ができております」
「……」
イザベラは再び無言で席に座ると、黙々と用意された食事を口に運ぶ。
些細な味の変化にも気づき、隠し味の一つ一つに感動していたイザベラはもういない。
今はただ機械的に食べているだけだ。
「もういいわ。下げてちょうだい」
「よろしいのですか? まだ残されているようですが……」
「二度言わせないで。下げなさい」
「は、はい。かしこまりました」
イザベラの高圧的な言い方に、メイドは慌てて皿を下げる。
そして、入れ替わるように別のメイドがやってきた。
「紅茶をお持ちしました」
「…………」
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彼女はひと口飲むと、小さく息を吐いて言った。
「……安い茶葉ね」
「も、申し訳ありません。すぐに替えを――」
「結構よ」
イザベラはティーカップを傾ける。
そして、冷めた目つきのまま、紅茶の残りを床にぶちまけた。
「……」
ポタッポタッと雫が滴り落ちる音だけが部屋に響く。
「掃除しなさい」
「は、はい……」
まるで傲慢な貴族のようなイザベラの振る舞いに、メイドは怯える。
イザベラは侯爵家令嬢なので、この態度は必ずしも不自然とまでは言えない。
だが、長年仕えてきた主人の豹変ぶりに戸惑いを隠せなかったのだった。
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