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168話 婚約破棄

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「悪いけど、私は忙しいのよ。貴女達と違って、将来の王妃候補なのよ? 未来の夫を支えるために、様々なことをする必要があるわ」

 イザベラが、カインとオスカーの言葉を一刀両断する。
 彼女は、アリシアを排除し、エドワード王子との関係を盤石にすることしか頭になかった。
 そして同時に、油断もしていた。
 今の彼女にも『ドララ』の知識はある。
 バッドエンドが開始するのは、自分達が第六学年になったときの卒業パーティ。
 逆に言えば、それまではいくら好感度が下がろうとも、バッドエンドには直結しないということだ。
 だから、エドワード王子以外の攻略対象は冷たくあしらって遠ざけてきたし、アリシアを排除するために手段を選ばず虐めてきた。
 しかし、ここは『ドララ』と完全に同じ世界というわけではない。
 フレッド、カイン、オスカー、エドワード王子、アリシア……。
 『ドララ』においてそれぞれの幼少期に起きた悲しい出来事を、この世界のイザベラは回避させてきた。
 だからこそ、『ドララ』にはなかったはずのイレギュラーが発生している。
 イザベラはそのことを忘れていた。
 もし仮に、イザベラが闇の瘴気を回避できていれば……あるいは違った未来もあっただろう。
 だが、もう遅い。
 狂った運命の歯車は、動き始めてしまっているのだ。

「イザベラ、そのことだがな……」

 エドワード王子が口を開く。
 さすがに言い過ぎだと、小言を言われるのだろうか。
 あるいは、度重なるアリシアへの虐め行為に対して、牽制されるのか。
 せいぜいその程度だろうと、イザベラは油断しきっていた。

「あら、エドワード殿下? 何でしょうか?」

 イザベラは、可愛らしく首を傾げて見せる。
 そんな仕草を見て、エドワードは一瞬頬を緩ませる。
 だがすぐに表情を引き締めると、彼はこう告げた。

「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」

 イザベラは一瞬何を言われたのか理解できず、呆然と立ち尽くしたのだった。
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